7月7日、明大リバテイタワーで行われたシンポジウム「いま日本の政治をどう変えるか――さようなら安倍政権」に参加してきた。300名の会場は満員で、立ち見の方もおられるほどでした。
コーディネーターの広瀬清吾氏(東大名誉教授、学者の会会長)の「この安保法案に反対する学者の会は3年前2015年6月15日、学士会館で記者会見をして呼びかけ人61名、当時賛同者が2700名で発足しました。今日は、口の悪い6人の論客をそろえ、彼らが思う存分話をしますので、日頃のフラストレーションを解消し、安倍政権とさよならするエネルギーを貯めていきましょう」というユーモアあふれる挨拶で始まった。
〈憲法〉水島朝穂(早大教授)、〈外交〉遠藤誠治(成蹊大教授)、〈経済〉浜矩子(同志社大学教授)、〈社会政策〉大沢真理(東大教授)、〈教育〉佐藤学(学習院大教授)、〈人権・メディア〉西谷修(立教大学特任教授)と順番に話があった。どの話も興味深く深刻なことをユーモアもたっぷり、15分ではもったいなく、関心ある方はhttps://www.youtube.com/watch?v=fNgi9Si9NQEのユーチューブでぜひご覧下さい。
ここでは、私が衝撃を受けた教育の話を紹介したいと思う。何に衝撃を受けたかというと、日本の教育の質が落ちていて、ODE(経済協力開発機構、35か国加盟)最低という。次は、日本の教育の劣化を憂う佐藤学氏の話。
「…略…安倍政権は教育改革を自民党の中に教育再生本部というものを作り、安倍首相の下に教育再生実行会議というお仲間たちを集めた私的審議諮問機関を作った。それを通したものを文科省に下ろし、文科省が中央教育審議会に下ろすという、官邸直属の構造を作った。従来は、文科省が中教審に委託して、その答申を受けて政策を作っていった。
どんな危機にあってもそのルートに乗らなければ改革の種にならない。実際には、文部官僚が官邸に忖度しながら持ち込んで、取り込んでもらうという形でやっている。小学校の英語教育や道徳の教科化など不必要な改革はやっているが、本当に必要な改革はやっていない。それが大きな問題。安倍政権下で、「もの言わぬ子どもたち」「もの言えぬ教師たち」、現場の危機は深まっています。
たとえば、2015年の大学法人化の前、総長に頼まれ、アメリカの5大学を廻って運用基金の調査をしたのですが、当時東京大学の5倍だったのが、20倍そしていまや100倍です。大学も弱化しています。日本の中学生の学校外学習時間は世界最低。探究的学びは65か国中65位。19世紀型の教育が以前として行われ、それが放置されている。
公教育費は戦後30年間GDP8%でこのときは世界1だった。それが日本の戦後でした。それがいまや最低です。私的負担で持っている。保育・幼児教育の公的支出は26か国中世界最下位(GDP比0・2%)。高等教育は23位。5歳児以下に使われている教育費医療費なども含めた公費と65歳以上に使われている公費を比べたことがあるのですが、何と25倍。未来に対する投資が行われていないのが安倍政権。
日本の教育の自由度という点でみると、学校の自由度、国都道府県の自由度というグラフを見ると分かるように、学校の自由度がかなり低い。教師が教科書を選べない国は、日本だけです。中国でさえ選べるようになっているということです。
この10年間で教師の賃金を下げたのは、フランスとスイスの3か国だけ。フランスとスイスは2%下げたそうですが、日本は10%以上も下げている。日本の教師の修士取得率は世界最低レベル。たとえば5年経ったら、大学院に通うことができる、そういうことを財政的に保障していく。複雑な状況で高いレベルの教育を求められているのに対応できなくなっている。
教師や学生や若者たちが、現在の政権に対してあきらめ、教師には何も期待しない、教師も生徒たちをあきらめ希望しない、親も学校をあきらめてしまっている。無力感とあきらめるような感情ばかりで、学校は残るだろうが内はメルトダウンで溶けている。この進行を阻まなくてはならない。いまの改革を批判するだけでなく、必要な改革は放置されてきたから闘い続けなくてはならない。明日にでも安倍政権には退陣してもらいたい。」
最後に会場設営の「オール明治の会」の黒田氏からの要請があった。
法政大学田中裕子総長は去る5月16日大学ホームページ上で「自由で闊達な言論・表現空間を創造します」と声明を発表された。その声明を支持し、明大も学長学部長声明「自由な学問を知的活力のある大学へ」を6月8日に発表した。全国の大学でも呼応して支持声明など挙げてほしいと呼びかけがあった。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
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