韓国通信NO714
ソウルにある戦争記念館を知る日本人は少ない。広大な敷地に威容を誇る記念館は有史以来の中国と日本との戦争の歴史、朝鮮戦争の展示で埋め尽くされる。韓民族の独立と愛国心を育てることを目的に1994年にオープンした。
韓国の友人にすすめられ、開館してから日も浅い頃訪れたことがある。数多くの受難の歴史とともに、誇らしげに展示されているベトナム戦争派兵に違和感を覚えた。
朴正熙時代、アメリカの要請によるベトナム参戦は多数の韓国軍兵士の犠牲と引き換えに膨大な外貨をもたらし、経済復興に貢献したことで知られる。すすめてくれた友人はアメリカの戦争に加担した韓国の歴史の一面を知ってもらいたかったのだろう。
今もその展示が続いているとしたら、他国への侵略を誇る韓国と、侵略そのものを否定するわが国の靖国神社の遊就館との違いがわかる興味深い施設であることに変わりはない。
<フォンニィ・フォンニャット虐殺事件で賠償判決>
ベトナム戦争当時、韓国軍兵士によって引き起こされた民間人虐殺事件(フォンニィ・フォンニャット事件)。去る7日、被害者グエン・ティさん(63)にソウル地裁は国家損害賠償を認める判決を下した。事件が起きた1968年から実に55年ぶりの判決である。
判決は「違法行為には時効を適用せず」と国側の主張を退けた。ベトナムに派兵された韓国人兵士約30万人。兵士が引き起こしたベトナム民間人の犠牲は多数に上る。今後さらに実態が明らかになれば損害賠償の請求は増えると予想される。
1999年に『ハンギョレ21』が事件を報じて韓国社会に衝撃を与えた。自国兵士の犯罪に対して韓国政府と国民の対応が注目される。徹底して謝罪したドイツと、謝罪しない日本との比較において韓国政府は試練に立たされている。
個々の被害を立証するのが困難とされるなか、韓国の支援団体は真相究明による政府の責任を求め支援を表明。支援者のシム・アジョン氏(ベトナム戦争の公正な解決のための市民社会ネットワーク)は語る。「誤った戦争への参戦の恩恵を平気で語る時代に私たちは生きている。改めて私たちは考える時間が必要だ」と。
<写真/裁判支援者たち「記憶して連帯!」
「ベトナム戦争の国家賠償請求訴訟支持記者会見」の懸垂幕>
また去る8日に日本大使館前で開かれた定例水曜集会で正義記憶連帯のイ・ナヨン理事長は「真相の究明と政府レベルの責任認定および公式謝罪と法的賠償がなされることを心から願い、勝訴した原告グエン・ティさんの勇気を胸に刻み、その切なる願いを実現するため最後まで連帯して行動する」と訴えた(いずれも『ハンギョレ新聞』より)。
戦争記念館に従軍慰安婦問題とフォンニィ・フォンニャット虐殺事件の解決を戦争の歴史として展示する日が来ることを期待したい。
初出 :「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
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