ソロー残差から現代の技術進化論へ=ソローの貢献

以下でソローの貢献をソロー残差から現代的技術進化論への展開の中で概観してみる。それは仮説に基づく理論モデルが有益なアプローチを生み出したという好個の例なのである。

 1. ソロー残差とは何か?

1957年:Solow は成長会計を導入し、生産の伸びを

 資本投入の増加

 労働投入の増加

 その他の「説明できない部分」=ソロー残差(TFP)

に分解した。

> 技術進歩の大部分は「残差」として説明された

> → 経済成長は技術進歩によってもたらされる

これは、技術進歩が成長の核心にあることを理論モデル的に示した、革命的発見だった。

 2. だが「残差」はブラックボックスだった

ソロー残差は、

 何が「技術」なのか?

 誰が、どこで、なぜ起こすのか?

を説明しない。

説明できないものをすべてTFPに押し込めたという批判があった。

> “TFP is a measure of our ignorance.”

>  Abramovitz (1956)

 3. 新しい視点:技術は「多様で偏っている」

1980年代以降、残差を分解して見ると、

 労働節約型技術

 資本偏向型技術

 熟練偏向(Skillbiased)技術

 ICT偏向技術

 エネルギ節約技術

 AI・デタ集約型技術

など、特定要素に偏る技術進歩が観察されるようになった。

→ ハロッド中立の前提は現実と乖離

→ ソロー残差は「中立的ではない」

 4. TFPの内訳を掘り下げる研究へ

近年では

 イノベション投資(R&D)

 組織改善

 サプライチェン効率化

 デタ資産の蓄積

 人的資本の高度化

などを計測対象に組み入れるアプローチが進展。

TFP = 社会のあらゆる知の進化の複合体

 5. そして現在:AIとデジタル化がゲームを変える

AIは

 代替ではなく補完構造を変える(taskbased)

 熟練偏向性を強化する

 データを新たな生産要素へ昇格させる

→ 生産関数の根本的再設計が必要

→ 「残差」ではなく直接測定対象

 ■まとめ(主張)

| 時代           | 技術進歩の扱い                         |

|  

| ソロー(1950s) | すべてを「残差」として一括処理                 |

| 1980-2010s   | 偏りある技術(SBTC、ICT等)が観察、残差の内部構造を分析 |

| 2020s         | AI・データ等が主役化、生産要素そのものが再編成        |

つまり:

> ソロー残差は「技術進歩の存在」を理論内で示した

> 現代研究は「技術進歩の内容と偏り」を解明する段階に入った

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔study1377:251204〕