デジタル庁一年、進まぬマイナンバーカード

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 9月3日、またもや、マイナポイントの「つくらなくちゃ!もらわなくちゃ!」の新聞全面広告が出た。我が家で購読している朝日と東京の二紙にはあったのだが、他紙はどうだったのか。しつこい、と言われてみても、「書かなくちゃ!」

マイナポイントの昨年夏以来、洪水のような広告の異様さは、多くの読者の顰蹙を買っているのではないか。昨年も、同じことを書いていたのだが。

マイナンバーカード、このCMの洪水はなんだ?!(2021年10月15日)
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2021/10/post-8b9bd0.html

 先週8月31日の東京新聞は「社説」で「デジタル庁1年 暮らしの利便性第一に」の見出しのもと、デジタル庁の最優先課題のマイナンバーカードの普及が5割程度にとどまるのは、「国民が利便性を感じず、個人情報漏えいの懸念が拭い切れないからだ。カード普及を目指すなら、ポイント還元ではなく、制度の信頼性向上に努めるのが先決だ」と述べる。
 同じ紙面の投書欄にも「〈マイナ〉安全性を示せ」(山崎猛)と題して「国民がマイナカードに慎重な理由は個人情報の管理に不安があるからである」として「安全性を示さずにCMやお金で釣るとは国民をばかにした話である」と結んだ発言があった。
 さらに、「デジタル庁発足から1年 信頼性・透明性道半ば」(山口登史)の見出しで、マイナンバーカードの普及率が47%に留まる理由として、個人情報漏えいと国家による監視強化を懸念する記事もある。現在、デジタル庁職員750人の内250人が民間出身であり、庁内の有識者会議の議事録が非公開であるというのだから、その透明性が確保できないのは当然だろう。
 そして、9月3日の全面広告だったのであり、同日の「時事川柳」にはつぎのような一句もあるではないか。

・ひょっとして 支配の道具じゃ あるマイナ(川崎市 じゅんきち)

 朝日新聞は、9月3日の全面広告の前日9月2日、「1年〈何でもできるデジ庁〉の現実」の見出しで、デジタル庁の一年を振り返って、「マイナ保険証」めぐっての厚労省との壁、行政自体のデジタル化も人員不足ということで進まない作業などを伝えるのみで、7月13日の「社説」では、「政府が、自治体ごとのマイナンバーカードの交付率を、地方交付税の額に反映させる方針を打ち出した。住民がカードを取得した率が高い自治体には、交付税の配分を増やす。先月閣議決定した「デジタル田園都市国家構想」の基本方針に盛り込まれた」と報じ、「交付税は、すべての自治体が一定の行政サービスを行う財源を保障するために、国が自治体の代わりに徴収し、財源の不均衡を調整するものだ。この「地方固有の財源」を、国策の推進に用いるのは、明らかに交付税の精神に反する。 なぜここまで理の通らないことをしようとするのか」と疑問を呈している。

 8月31日の毎日新聞は「自治体間競争 あおる国 伸び悩むマイナンバーカード」に見出しで、「地方交付税の算定にカード交付率を反映し、交付率自治体には支給額を上乗せすることを検討している」と伝える。総務省は、22年度からホームページで全国すべての自治体の交付率が公開され、公布先進地域として、上位10位までが【特別区・市】【町村】【都道府県】別にトップに掲載されているのが下の表である。

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総務省/マイナンバーカードの市区町村別交付枚数等について(令和47月末時点)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000828898.pdf

 ちなみに、佐倉市も以下のように表示されている。予備校の模擬試験成績発表の掲示板を思い出すし、かつて、ハンセン病者強制隔離政策の一環として「無らい県運動」と称して実施されたハンセン病者隔離を実施した歴史を想起する。丁目ごとに、マイナンバーカード未取得者リストができたりして・・・。佐倉市は41.5%であった。

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 そして、洪水のようなCMの財源といえば、なかなかずばりの数字は出てこないのがもどかしい。

 「21年度補正デジタル予算は2.8兆円 マイナポイントだけでない増強点」「日経コンピュータ」(2021年12月23日)によれば、以下の数字になる。
 日経コンピュータが集計した主なデジタル関連項目の総額は2兆8616億7100万円と、過去最大の規模に達し、このうち6割強の約1兆8486億円は、1人当たり最大2万円分を付与するマイナポイント事業であり、マイナンバーカードの普及・普及・促進事業に346億円を計上している。デジタル庁にはマイナンバーカードのシステム整備に101億円が計上されているという。 2022年度の当初予算では、総務省のマイナンバーカードの交付・申請・促進には1064億円(前年度比0.8%増)、デジタル庁のマイナンバーカード制度の推進に4. 7億円(前年度比74%増)ということになっている。当初と補正の落差は理解に苦しむのだが、こんなデータもある。
 日経クロステックの集計ではデジタル関連は総額2兆8616億7100万円だった。補正予算と一体化した2021年12月~2023年3月までの「16カ月予算」で見ると、岸田政権は総額4.1兆円強をデジタル分野に投入する。1年前に一体で編成した「15カ月予算」(2020年度第3次補正予算と2021年度当初予算)で投じた1.7兆円の2.5倍近い規模に拡大する(2022年1月4日)。

 あの執拗なCMの財源はと、昨年も、総務省の担当(自治行政局住民制度課マイナンバー制度支援室)に質問したが、広告代理店に聞かねばわからない?!というのだった。新聞社もテレビ局も、マイナンバー制度についてあれこれは言うものの、政府は巨大広告の大事なスポンサーなので、正面から批判することはしない。メディアの権力監視機能は、すでに翼をもがれているようなものではないか。
 少し古いデータなのだが、2020年9月にマイナポイントがスタートしたころ、その広報費として政府が計上しているのは、なんと53億8000万円。しかも、すでに約1カ月でその約半分となる約27億円がかけられているというのだ(『リテラ』2020年9月24日)。

 一方で、共同通信によれば、取得者に最大2万円ぶんのポイントが付与される2022年6月にスタートした「マイナポイント第2弾」の事業には、総務省が約1兆4000億円の予算を確保しているが、カードの新規取得者が伸びないため、約6000億円余り、9月末の期限延長もあり得ると、報じている(「予算が6000億円残余「マイナカード」普及しない理由は「メリット感じない」…身分証明書にならない事態も」『Flash』 2022年8月28日)。ちなみに、8月25日現在、交付率が5割を超えたと総務省が発表したという。
依然として、広告費の全貌は、わからないでいる。

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たった一本のヤマボウシの実が庭一杯に。

初出:「内野光子のブログ」2022.9.4より許可を得て転載
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2022/09/post-37c186.html

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
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