トランプ共和党苦戦の米中間選挙 - 下院は民主党が過半数制圧か -

11月6日投開票の米中間選挙は、「アメリカ・ファースト(米第一主義)」を掲げるトランプ米大統領の政治に対する米国民の信任投票と位置付けられる。現在の米連邦議会では上下両院とも与党共和党が過半数を占めているが、今度の中間選挙によって、少なくとも下院では与野党が逆転して野党民主党が過半数を握りそうだ。そうなればトランプ式独断専行型政治も何らかの修正を迫られよう。

定数100議席の上院は現在共和党51議席、民主党49議席だが、中間選挙で与野党逆転がなるかどうかは今のところはっきりしない。いずれにしても上院で与野党の票差が大きく開くことはなさそうだ。下院で民主党が大勝ちすれば、トランプ大統領弾劾の動きが出てくるだろう。下院では過半数で大統領弾劾決議を可決することができる。しかし上院では3分の2多数でなければ弾劾決議は通らない決まりだ。だからトランプ弾劾は最終的には成立しない見通しなのだが、下院で弾劾騒ぎが進めば大統領の身動きは束縛されるだろう。

米中間選挙は4年ごとの大統領選挙の2年後、つまり中間年に一斉に実施される連邦議会の上下両院や、同時期に改選となる州知事などの選挙の総称だ。投票日は大統領選挙と同様に連邦法の規定で「11月の第1月曜日の次の火曜日」と決められている。上院は州全体が一つの選挙区で、人口の多少に関係なく50の各州に2議席が割り当てられている。議員は期間をずらして任期6年を務めるようになっており、定数100議席の3分の1ずつが2年ごと改選される。下院定数435議席は、大統領選挙年と中間選挙の2年ごとに全員が改選される。

第2次世界大戦以後これまでの中間選挙では、2年前の大統領選挙で当選した与党(今年の場合は共和党)が上下両院で議席を減らすのが定説になっている。例えば1994年のクリントン政権(民主党)は、共和党に40年ぶりの上下両院での過半数獲得を許す歴史的大敗を喫した。2010年のオバマ政権は下院で63議席も減らす惨敗に見舞われた。この年は経済不況が続く中、「大きな政府」を批判した保守系草の根運動「ティーパーティー(茶会運動)」が躍進したのだった。
与党が中間選挙で不利なのはなぜか。米国務省発行の『アメリカ政治ガイドブック』によれば、「政府と議会の多数派が異なると立法面などで困難が生じるが、より政治的な歩み寄りが必要になる。アメリカ人は政府に広範な権限を与えることに不安があり、政府と議会のねじれ状態に安心を覚えるのだろう」と説明している。有権者は議会の大統領に対するチェック機能を期待して、権力のバランスを取ろうとしているのだというわけだ。

今年の中間選挙が特に注目されるのは、ドナルド・トランプという特異な大統領に対する信任投票という意味合いがあるからだ。アメリカの世論調査機関「ピュー・リサーチ・センター」がこのほど実施した調査によると、米有権者の投票への意欲はここ20年で最も高いレベルにあるという。その理由は「アメリカ第一主義」を掲げて、米国内や国際社会の分断もいとわないトランプ大統領の政治姿勢だ。

ピュー社の調査では、中間選挙での最重要点として60%が「トランプ氏への賛否の表明」と回答した。投票への熱意は「反トランプ」を掲げる民主党支持者の間で特に高い。過去3回の中間選挙(06年、10年、14年)で、同時期に「これまで以上に投票に意欲がある」と回答したのは36~42%だったが、今回は62%に急上昇している。

「これまで以上に投票に意欲がある」との回答が過去3回は33~57%だった共和党支持者も、今回は59%と増えている。米メディアによると、共和党支持者の間では今回の中間選挙でトランプ大統領を是が非でも守らなければならないという危機感が高まっているという。

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