トリチウム(三重水素)の恐怖 (現在注目の放射性物質=トリチウムについて簡単にまとめました)

現在注目の放射性物質=トリチウムについて,下記に簡単にまとめましたので,ご参考までにお送り申しあげます。(下記と同じ内容のものを別添PDFファイルにして添付いたしました)

 

<参考サイト>

(1)【トリチウム安全神話】三重水素の本当の正体とは? 矢ヶ崎克馬教授

http://www.sting-wl.com/yagasakikatsuma11.html

 

(2)<参考資料>日本の発電用原子炉トリチウム放出量 (2002年~2012年度実績)

http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/genpatsu/tritium_3.html

 

(3)六ヶ所再処理工場 7・8月の放射能海洋放出

http://www.jca.apc.org/mihama/reprocess/tritium_jul-aug.htm

 

(4)事故を起こさなくてもトリチウムを大量に放出する四電・伊方原発

http://hiroshima-net.org/yui/pdf/20150314.pdf

 

(5)福島第1原発のトリチウム汚染水(上澤千尋 『科学 2013.5』)

http://www.cnic.jp/files/20140121_Kagaku_201305_Kamisawa.pdf

 

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トリチウム(三重水素)の恐怖

 

1.トリチウムとは、

周期律表に1つの元素として記載された原子ではなく、水素の放射性同位体である=簡単に言えば、ちょっと変わった水素、のこと

(周期律表の元素の例:リチウム、ナトリウム、カルシウム、ヘリウム、酸素、塩素他)

 

2.水素の放射性同位体=原子核が違う=化学的(電気的)性質は同じ=区別困難

水素            陽子1つ、電子1つ

二重水素(デューテリウム) 陽子1つ、中性子1つ、電子1つ 安定、天然は微量

三重水素(トリチウム)   陽子1つ、中性子2つ、電子1つ 不安定・放射性物質

 

3.トリチウムの生成

ウラン-235(235U、44.8億年)とプルトニウム-239(239Pu、2.41万年)が中性子と反応した時に起こる三体核分裂(二つの大きな原子核と一つの小さな原子核が生成する現象)によって生じる他、原子炉内では、制御棒のなかの中性子吸収物質=炭化ホウ素に含まれるホウ素10 に中性子があたってトリチウムが生成される、あるいは原子炉水中に不純物として含まれるリチウム6 などのような軽い元素に中性子があたることによってもトリチウムができる。なお、かつては大気中の水爆核実験(核融合)により大量のトリチウムが地球上に放出された。

 

(加圧水型炉では,原子炉水中にホウ素とリチウムが添加されており,このため沸騰水型炉よりトリチウムの生成量が多い ⇒ およそ10倍)

 

●青森県六ケ所村の再処理工場が放出するトリチウム

青森県六ケ所村の再処理工場が本格稼働すると、その工程から出てくる様々な危険な放射性物質が膨大な量で環境に(大気中及び海中)放出されるが(中でも量が多いのが、クリプトン85、炭素14、放射性ヨウ素(131、129)、に加えてトリチウムである。トリチウムの海中への放出濃度は1億7千万ベクレル/リットルという信じがたい数字であり、1年間の放出量も2京ベクレルと天文学的な数字となっている。ちなみに大気中へのトリチウム放出は海中放出の1/10程度だが、それでも数字としては極めて巨大である。驚くべきことに青森県六ケ所村の再処理工場には放射性物質の法定排出基準はなく、まさに放射能垂れ流し放置の無法状態が黙認されている。

 

4.トリチウムの放射線

・半減期12.3年、ベータ線のみを出す(放射性セシウムのようにガンマ線は出さない)、ベータ線を出した後、ヘリウム3になる。

・ベータ線のエネルギーは最大で18.6 keV(キロ・エレクトロンボルト),平均5.7 keV である。解説書などには「弱いベータ線」などと書かれているがとんでもない話で、これでも人間を含む生物の細胞を形作る分子の結合エネルギー(数十~数百eV)に比べれば巨大なエネルギーで、特に内部被曝の場合には、人間や生物の体を破壊するには十分に大きなエネルギーである。

 

5.原発排出のトリチウムへの規制

(1)告示濃度限度         WHO基準(トリチウム=10,000ベクレル/㍑)

トリチウム水   60ベクレル/cm3(60,000ベクレル/㍑)(6千万ベクレル/m3)

トリチウム水蒸気 0.005ベクレル/cm3(5ベクレル/㍑) (5千ベクレル/m3)

有機結合型トリチウム 20ベクレル/cm3(20,000ベクレル/㍑)(2千万ベクレル/m3)

一般化合物トリチウム 40ベクレル/cm3(40,000ベクレル/㍑)(4千万ベクレル/m3)

 

(その他の放射性核種)                        WHO基準

放射性セシウム134        60ベクレル/㍑     10ベクレル/㍑

放射性セシウム137        90ベクレル/㍑     10ベクレル/㍑

放射性ストロンチウム90      30ベクレル/㍑     10ベクレル/㍑

 

(2)福島第1原発汚染水に係る東京電力自主基準

放射性セシウム134           1ベクレル/㍑

放射性セシウム137           1ベクレル/㍑

放射性ストロンチウム90         5ベクレル/㍑

トリチウム              1,500ベクレル/㍑

 

実用発電用原子炉施設からの年度別トリチウム水放出量(単位:[Bq])

施設名              2007年          2008年             2009年       2010年

東電福島第一原子力発電所1.4×1012           1.6×1012            2.×1012              –

東電福島第二原子力発電所7.3×1011           5.0×1011            9.×1011   1.6×1012

(10の12乗=1兆)

 

(法規制の根拠:放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律 ⇒ 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律施行令・施行

規則 ⇒ 放射線を放出する同位元素の数量等を定める件(平成十二年科学技術庁告示第五号)⇒ 別表第二)

https://www.nsr.go.jp/activity/ri_kisei/kanrenhourei/index.html

 

6.トリチウムによる内部被曝の危険性

・トリチウムによる被ばくは、特殊な場合を除き、外部被曝はほとんど問題にならない(空気中では5mmくらいしか飛ばない)

・問題は内部被曝である。トリチウムは、下記にあるように、有機物の水素と入れ替わった有機結合型トリチウムによって、白血病や脳腫瘍などの発がんの危険性や、その他の放射線被曝による健康被害が出る可能性の高い危険な放射性物質と言える。トリチウムの出す放射線=ベータ線のエネルギーが他の放射性核種に比べて小さいからといっても、その内部被曝による危険性を軽視することは許されないことである。

・トリチウムの放射線のエネルギーは小さく、18.6KeVのエネルギーを持つベータ線で、体内では0.01mmほどしか飛ばない。エネルギーが低いベータ線の特徴はエネルギーの高いベータ線より相互作用が強く、電離の密度が10倍ほどにもなる(電離とは分子切断のこと)(矢ケ﨑克馬琉球大学名誉教授)。

・内部被曝の場合には、放射線が直接、細胞内の組織や生命秩序を、そのすさまじいエネルギーで破壊することに加え、細胞内で活性酸素を生み出し、その活性酸素(主としてヒドロキシルラジカルで、これに対抗する抗活性酸素向け酵素は人体内には存在しない)が化学反応によって体内で悪い影響を及ぼす作用もある。

・なお、内部被曝の定量的把握に放射線被曝の評価単位である「シーベルト」は使えないので(内部被曝の実態を反映していないため過小評価がはなはだしい)、ベクレル単位で量を把握したのちは定性的に判断していくことをお勧めする。

 

(1)自由水型トリチウム (Free Water Tritium:FWT)

・トリチウムは酸素と結合してトリチウム水(HTO)の形をとることが多く,人体の特定の組織や臓器には濃縮しない。

・体内に水として存在しているトリチウムは、比較的早く体外に排出されるようだが、ここでも恒常的な低線量被曝(内部被曝)の場合には、毎日のようにトリチウムが体内に取り込まれるため、結果として一定量以上のトリチウムが常に体内に存在し続けることになってしまう。

・トリチウムがトリチウム水として人体に取り込まれた場合でも,その一部が細胞核の中にまで入り込んで,DNA(遺伝子)を構成する水素と置きかわる可能性がある。その場合には,トリチウムからの飛ぶ距離が短いベータ線が遺伝子を直接傷つけるため非常に効果的に作用し,ガンマ線よりも危険性が高いと思われる。

 

(2)有機結合型トリチウム(Organically Bound Tritium:OBT)

・トリチウムが有機化合物になると(有機物の水素と入れ替わる)、人体に吸収されやすくなり、細胞核の中に入ってDNAを傷つけやすくなり、かつ体内に長い間留まるので極めて危険

・トリチウムのきわだった特性として、環境中の普通の水素と非常に早く入れ替わるという特性がある。これは体の中の水素とも速やかに入れ替わるということを意味する。また、トリチウムは、新陳代謝や細胞の再生の過程で炭素と強く結びつき、有機結合型トリチウム(OBT)を形成する傾向を持っている。

・植物中に取り込まれたトリチウム水は、光合成により有機化されると、葉、実および根などの組織中に蓄積される。

・マウスの実験ではトリチウムが脳内に脂質成分として長く残るため、脳腫瘍などの危険性が高い

 

7.有機結合型トリチウムの人間体内への取り込み

人間は2 通りのやり方で有機結合型トリチウム(OBT)を体内に蓄積する。なお、有機結合型トリチウム(OBT)が食物連鎖を通じて生物体内で濃縮していくかどうかはよくわかっていないが、理論的にはあり得ない話ではない。

 

(1)1 つは、原子力施設から出るトリチウム水(HTO)の水蒸気によって汚染された土地で育った野菜や、穀物や、蜂蜜や、ミルク(そして日本では魚介類)などの食べ物を摂取することによる。

 

(2)もう1 つは、トリチウム水(HTO)を飲んだり、食べたり、呼吸したり、皮膚から吸収したりすることによって、人体が必要とする有機分子の中にトリチウムを新陳代謝して摂り込み、新しい細胞に組み入れることによってである。

 

8.トリチウムの除去

・トリチウムは水素(の放射性同位体)なので、化学的性質は普通の水素と同じ。従って、トリチウムの化学的性質を利用しての分離は基本的にできない。

・莫大な費用をかけてウラニウムを濃縮するのと同じプロセス、ガス拡散法やガス遠心分離法などで何十段階も繰り返していくとトリチウムだけを取り出すことは可能。トリチウムを除去するために莫大な費用をかけて対策するよりも、原子力発電をやめてしまったほうが賢い。

 

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(参考)カナダにあるCANDU 炉(キ ャンドゥ)や,日本の2003 年3月に運転停止し現在解体工事中の新型転換炉「ふげん」は,中性子の減速材として重水を用いており,重水の放射化によって大量のトリチウムができる。また,イギリスにある改良型ガス冷却炉(AGR)では,燃料の被覆管にステンレスを採用しているのだが,トリチウムがステンレスの被覆管を通過してしまうため,環境中に大量のトリチウムが放出され問題になっている(トリチウムは物質透過性が高い?)。

 

(こうした原発(特に加圧水型)や核施設の周辺では、子どもの白血病や脳腫瘍が多発傾向を示し問題となっている。日本でも加圧水型の原子炉がある泊(北海道)、玄海(佐賀)などでは周辺地域の白血病多発が目につく他、伊方や川内、あるいは若狭湾の原発銀座などでもトリチウムの被ばく被害が今後懸念される)

 

(人口10万人あたりの白血病による死者数)

この5年では、原発がある玄海町の白血病による死亡者は、全国平均の6~7倍ということになる。

 

<1998~2002年の平均>   <2003~2007年の平均>

全国平均        5.4人              5.8人

佐賀県全体       8.3人              9.2人

唐津保健所管内    12.3人            15.7人

玄海町         30.8人            38.8人

 

(参考文献)

●福島第1原発のトリチウム汚染水(上澤千尋 『科学 2013.5』)

●事故を起こさなくてもトリチウムを大量に放出する四国電力・伊方原発(原田二三子 2015年3月)

●核燃料サイクル施設批判(高木仁三郎:七つ森書館)

以 上

t1t2t3t4〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion5312:150430〕