日本では橋下大阪市長が原発再稼動を容認とのニュースがありました。そして、JNNと毎日新聞が行った大阪府内の735人の有権者を対象にした電話調査によれば、49%が橋下市長の再稼動容認を支持する、18%が支持しないという結果でした。再稼動容認を支持する人たちに質問します。: 私たちが学ぶべきフクシマの教訓はないと仰るのでしょうか?高が電力不足プロパガンダのために...原発のリスクと核廃棄物を私たちの後代子孫に残すつもりなのですか?
「If...」ーもし事故が発生したら...どうするおつもりですか?念のためにお伝えしておきます。世界中の原子力発電所において、シリアスなケースも含めて、3月には13件の、4月には18件の、5月には12件の故障事件が起こりました。:http://www.contratom.de/2012/06/01/storfall-report-fur-mai-2012/
南ドイツ新聞に、世界における原発事故発生のプロバビリティーに関しての衝撃的な記事がありましたのでご紹介いたします。
「チェルノブイリ、フクシマのような原発大事故は10年ごとに起こる」 これが、ドイツを代表する学術研究機関「マックスプランク・インスティチュート」の研究結果です。原文へのリンクは:
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概説:原発の最大想定事故は10年ごとに起こる
南ドイツ新聞(Süddeutsche Zeitung )オンラインー2012年5月24日付
筆者:Christopher Schrader
この推定は、あるラディカルな環境グループの論拠を示すガイドラインから出たものではなく、*マックスプランク・インスティチュート(Max- Planck -Institut)が算出した推定値である。マックスプランクの推定は:世界中にある未だ稼動を続けている全ての原子炉の中から、20年から25年の間に、炉心溶融事故が2件発生する可能性があるという事である。しかし、この高い推定値に対しての反論もある。
原発の重大事故と、より広い地帯に及ぶ放射能汚染は、場合によっては、今まで推定されてきたよりも遥かに蓋然性が高くなる可能性がある。この推定によれば、平均で毎50年ごとに放射性セシウムの雲が西ヨーロッパや特にドイツのある部分区域の居住地帯を覆うことになる事を覚悟しなければならないと謂う。
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原発事故後の放射性セシウム137汚染のリスク
原発事故後に放出される危険なアイソトープーセシウム137の拡散可能性
(マップ:Daniel Kunkel、MPI《マックプランク・インスティチュート-化学分野》ー2011年
編纂:SZ《南ドイツ新聞》)資料:Süddeutsche Zeitung記事から
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これは、ドイツのマインツにあるマックスプランク・インスティチュート(化学分野)の所長、ヨース・レリヴェルド氏が二人の研究員仲間との共同ワークで、核安全のために、1986年のチェルノブイリと2011年のフクシマ大惨事からの推断を引き出そうと、詳しく調査し算出した結果である。
レリヴェルド氏と彼のチームは先ず、原子炉の事故について幾つかの推定をし、それから、世界にある稼動中の440基の原発の各基から放散された放射能がどこに拡散していくかという蓋然性をコンピューターでシミュレートした。シミュレーション結果は、多量の放射性粒子が非常に遠くまで拡散したことを示した。例えば、放出された放射性粒子の半分が、事故で破損された原子炉から1000キロ以上離れたところまで降下し、放射性降下物の1/4の量が2000キロ離れたところまでにも拡散された。
この部分の研究内容は、確かに大気化学者たちの専門分野であるが、「原子力事故発生率の推定法に関しては、様々な見解があり得るという事」をレリヴェルド氏は認めている。「でも、そうだとしたら(我々の推定法に賛成できないのなら)、どのようなもっと良い方法があるのかを、はっきり示すべきです」と、レリヴェルド氏は彼の批判者に挑戦している。
マックスプランクの研究者たちは単に、送電網に接続されている全ての民間原子炉の稼動年数を、今迄に起こった(多量の放射能を放出した)メルトダウン事故件数で割った。この「最大想定事故(Super-GAU)」と呼ばれる事故は4件あった。1件はチェルノブイリであり3件はフクシマである。 算出結果は、3625稼動年数に1件の大事故発生となり、それを研究者たちは切り上げして、5000稼動年数に対して1件とした。
彼らは、フクシマ第一原発での3基の原子炉に起こった出来事をそれぞれ独立した3件の事故として見なしている。何故なら、事故原因は共通しているが、3基それぞれの原子炉には別々の安全系(Safety System)が設置されてあって、それにも拘らず、その中の一基も重大事故を免れる事が出来なかったからである。この結果から将来の重大事故発生率を外挿すると、未だこれから20年から25年間、稼動を続けていく440基の原子炉の中から、この期間中に、2件の炉心溶融事故が発生する可能性があると算出された。
一方、これまでの1990年代からの原子力安全性分析は、そのような重大事故が発生し得る確率は1%であると推定していた。マックスプランクのレリヴェルド氏は「我々の推定値はその200倍になります」と述べる。
原子力技術専門家の間ではそれに対して反論が起こっている。「チェルノブイリとフクシマの事故経過は、それぞれが特殊なケースであって、両方とも典型的な原発事故ではありませんでした」と、ケルンにある、国の原子力規制機関にも専門的アドヴァイスを提供している原子炉安全有限会社(Gesellschaft für Reatorsicherheit)のホースト・ロッフェラー氏は言う。またロッフェラー氏は、マックスプランク研究者の推定法に対して、「より正確な分析法がない中で、このような方法で炉心溶融事故発生の平均的蓋然性を推定することが許されるのかどうか否かということは、真の科学的な問題ではありません」とも述べている。
一方、グリーンピースの原発専門家、ハインツ・スミタル氏はレリヴェルド氏研究チームの推定法を支持している。「これは単純な推定法で、古い原子炉と新しい原子炉とを区分していません。もし他の方法で推定しょうとするのだとしたら、大変な努力を費やさなければならないでしょう。そして、その方法でもっと正確な推定値を算出することが出来るかも分からないのです。」とスミタル氏は述べる。
原発リスクは南西ドイツが一番高い。
レリヴェルド氏ら研究者の次の分析ステップは、炉心溶解事故後の放射能放出量の平均値を推定することであった。彼等は、チェルノブイリ事故のケースを基にして放出量を推定することにした。それに対してもロッフェラー氏は、「炉心溶解事故の放射能放出量を推定するのに、10%だけチェルノブイリのケースを基にする推定法は受け入れるが、残りの90%までもチェルノブイリを基にするのでは推定値が過大になってしまう。」とマックスプランク・チームを批判する。
そして、研究者たちは、風や雨をシミュレートして(これもシミュレートで放出された)放射性物質、セシウム137(30年の半減期)とヨウ素(8日の半減期)に与えた。それから、(コンピューターで)大気モデルを使い放射性粒子が地面に降下するまで、あるいは雨によって洗われ落ちるまでの間およそ一週間、放射性粒子の流れを追っていった。
その結果として、特に度重なって放射性降下物で汚染された地帯は、米国の北東地域、日本そして西ヨーロッパであった。ドイツにおいては、とりわけフランスとベルギーとの国境に沿った南西地域、そしてシュトゥットガルト市とケルン市との間だった。これらの地帯周辺には多くの原発が位置しているためで、その地帯が放射性汚染されるリスク率は年に2パーセントとなる。
レリヴェルド氏は、地帯を「放射能汚染区域」と定めるための基準として、国際原子力機関(IAEA)の基準を用いた。IAEAの基準は:「地域の自然バックグラウンド放射線量が2倍になり、決められた被曝量限界値を超えた場合」である。
「ドイツの脱原発は、我が国が受ける放射性セシウム汚染のリスクを半分にします。-それ以上の効果はありません」と、レリヴェルド氏は言う。そして、「被曝の危険を少なくするためには、脱原発推進のために国際的に協調していかなければなりません」と述べた。
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*マックスプランク・インスティチュート(Max-Planck-Institut): ドイツを代表する学術研究機関で科学の研究に寄与することが義務付けられている。公的財政支援を基盤として研究を推進している
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion0907:120607〕