本日(8月3日)東京地裁民事第24部で、注目すべき判決が出た。新しい法解釈を含むところはまったくないが、インターネット上に氾濫する匿名言論の誹謗中傷記事に歯止めが掛かることを期待させる判決である。
在特会の京都朝鮮学校襲撃事件や徳島教組威力妨害事件では、首謀者だけでなく、付和雷同した参加者も有罪となり高額損害賠償責任を負担した。今度は、ネットだ。匿名に隠れての言いたい放題は通じない。ヘイト記事はなおさらのこと。本人は匿名に隠れて安全地帯にいるつもりでも、探し出せるのだ。住所氏名が割り出せれば、あとは簡単。本日のような判決になる。そして、弁護団は判決認容の170万円とほぼ1割の遅延損害金を厳しく取り立てるはずだ。
原告は女子高生。卑劣なネトウヨ君は、葛飾区四つ木の住人。このネトウヨ君が何をしたのか。判決から要約引用すれば、「被告は,平成26年9月8日,インターネット上のサービスであるツイッターにおいて,原告の写真を掲載し,『原告が,高校生平和大使に選ばれた。詐欺師の祖母,反日韓国人の母親,反日捏造工作員の父親に育てられた超反日サラブレッド。将来必ず日本に仇なす存在になるだろう。』との投稿をした。これは,原告の社会的評価を低下させ,原告の名誉権を侵害するものである。さらに,本件投稿は,原告の肖像権を侵害する。」
ネトウヨ諸君、原告の請求が満額認容されて、このツイッター1通が170万円だ。君も、「反日韓国人」「反日捏造工作員」などと書いてはいないか。口は災いの元、筆は損害賠償の源だ。悪いことは言わない。今後は慎んだ方がよい。君も、被告となり得るのだから。
興味深いのは損害論だ。170万円の内訳は以下のとおり。
ア 精神的損害に対する慰謝料 100万円
イ 調査費用
発信者情報開示の仮処分に関する弁護士費用20万円
発信者情報開示の仮処分に関する翻訳費用20万円
経由プロバイダに対する発信者情報開示手続に関する弁護士費用20万円
ウ 本件訴訟の弁護士費用10万円
実は、裁判所は判決理由の中で、「本件の慰謝料額は200万円が相当」と意見を述べている。しかし、原告が100万円しか請求していないから、その上限の判決となった。実質的に本件は270万円の判決と理解しなければならない。
匿名を暴くのには手間暇かかる。そのための手続費用が加算されることになる。これも教訓として世のネトウヨ諸君に知ってもらわねばならない。
本件の被告ネトウヨ君は、ネトウヨ族の代表として、貴重な体験をした。身をもって「匿名に隠れての言いたい放題は、実は真っ当な社会では通用しないことなのだ。」「調子に乗ってバカ言ってると、手痛い損害賠償の判決を喰うことになる」こと学んだ。世のネトウヨ諸君にも貴重な教訓だ。この教訓に学んだ方がよい。
以下はNHKの報道。
「判決のあと、元記者の長女(原告)は、弁護士を通じてコメントを出しました。
この中で、当時の気持ちについて『ひぼう中傷の言葉が大量に書き込まれた時、私は「怖い」と感じました。匿名の不特定多数からのいわれのないひぼう中傷はまるで、計り知れない「闇」のようなものでした」と振り返っています。
その上で『今回の判決がこうした不当な攻撃をやめさせるための契機や、健全なインターネットの利用とは何かについて考える機会になってほしいと思います』と訴えています」
この言は立派なものだ。原告は「将来必ずや日韓の平和に貢献する存在」になるものと思わせる。
(2016年8月3日)
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2016.08.03より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=7273
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
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