ここのところ私は、過去の投稿を少し反省しています。 それは、「アベノミクス」に関わる金融・経済領域の論議をすること自体がこの自殺的政策の本質を見誤ることに繋がる、と最近になって気付いたからなのですが、少し遅きに失したのかも知れません。 その例証としては、海外では、最早、バンザイノミクス(Banzainomics)と受け取られてしまった(らしい)のです。
あのバラマキノミクスの本家本元の自民党のすることですよ。 そもそもバブル時代のバラマキの凄さを実感した者としては、筆舌に尽くせぬ無駄使いと利権乱立の渦としか言いようが無い凄さに眼も眩むようでした。 単年度ではとても消化不能の予算をつけられた各行政庁では、翌年度繰り越しが相次ぎました。
それを今またやろうと言うのですから、財源をどうするかを考えないとなりません。 国家予算の半分が借金の時代に、です。 夢物語ならば「打ち出の小槌」が出て来ます。 現実の世界なら「中央銀行の国債引受」となりますが、これは、法で禁じられています。 其処で、金融緩和でデフレ退治を表看板にした日銀の国債引き受け(買取)が出て来たのでしょう。
諸外国の経験からは、中央銀行が国債を引き受けるのは通貨の信認を毀損してハイパーインフレの基となる、と云うのが歴史上の事実としてあります。 第一次大戦後のドイツがそうでした。 歴史では、通貨としての価値が限りなく零になったマルクが壁紙にされた、とか焚火にされた、とかの話が伝わっています。
それはそうでしょう。 国家の借金が一千兆円あるから、紙幣をその分量刷って返せば終わりになるから、と云ってそのとおりにすればどうなるでしょうか。 そんな国の通貨を誰が信じるのでしょうか。 ところが、あろうことか、黒田日銀は、年40兆円から50兆円の国の借金を返すのに日銀券を刷って買うとして来たところ、その倍も買うことにした、と声明したのです。 円安になるのは当然でしょう。
因みにその関連で言えば、GPIFが国民の年金基金で株を今頃になって買うのもバンザイ突撃並みです。 三年前なら分かりますが、日本株の今の値ごろは、割高に近くなっているのです。 個人でも今頃買うのはアホとしか言いようがありませんが、専門家を擁している筈のGPIFがやることではありません。 これ等は、安倍政権の要求、要するに選挙対策でしょう。
個人的には、年齢からも年金に頼るしか他に方法がありませんが、この先には、相当な経済的困難が待っていることでしょう。 我々の世代は、過去の世代と違い、年金他の給付に関わっては制度改悪の連続です。 現実に退職後には、少ない蓄えからでも取り崩さねば生活が出来なくなってしまいました。 人並みに付き合い、人並みに趣味にも出費していればそう遠くない頃には蓄えも尽きる計算です。 必然的に消費は控えなければなりません。
何も悲観的になっているのではありません。 其れどころか、自分も含めて相当な割合の国民が貧困層に落ちるのが目に見えているのですから、気が楽です。 貧困層には貧困層の暮らしがあります。 例えば、米国の貧困層は、買い物一つでも工夫しています。 生活物資全般が低価格で売られているArmy Navy Store (不用軍用品店とでも和訳しておきます)で買い物して節約しているのです。 軍用品なら質の良いものが払い下げて売られているからです。 日本では沖縄にある店ですが、米国とは客層が違います。 日本では、矢張り、百均でしょうか。 最近の百均では何でもあります。 一般のスーパーも客層に依り階層化が激しくなっています。 私等が買い物する処は、地元の小さいスーパーです。 百貨店に並ぶような高級品は眼を皿にして探してもありません。 何でも値頃感のある品物ばかりです。 牛肉を例にとれば、和牛のステーキ等は絶対に買えません。 すき焼き肉等もありません。 ケースに並んでいても誰も買わないからです。 売れるのはバラ肉ばかりです。 因みに、私は、そのバラ肉で「すき焼き風」鍋をするのが常です。 勿論、バラ肉は少々あれば良いので、後はうどんです。 少し悲しい味がします。
自分自身では、一般的な給料取りと思っている者の退職後がこれですので、消費が活発になる訳がありません。 必然的にインフレにも為らないのですから、これからも金融緩和の表看板には事欠くことは無いのでしょうが、さて何時まで持続するのでしょうか、このバンザイノミクスは。 敗戦後の強烈なインフレを幼年期の生活で経験した者としては、二度と見たくない悪夢なのです。 満足な夕食を準備出来ない自分を幼児の前で責めた亡母を思い出します。