99%貧乏人アメリカ人の大統領を目指す、バーニー・サンダース
一羽のマヒワと思しき小鳥が、バーニー・サンダーズの演壇に舞い降りました。 バーニーは演説を忘れて、邪気のない笑顔で小鳥を愛しそうに見守りました。 小鳥は、暫くバーニーと向き合っていました。 バーニーが右手を挙げて語りかけようとすると、小鳥は舞い上がり、喜びに沸く大歓声に送られて夜空に吸い込まれていきました。 2016年3月26日夕刻、アメリカ・オレゴン州ポートランドで行われた、バーニーの米大統領予備選挙キャンペーン集会でのハプニングです。
(1) フランシスコと小鳥:
バーニーは小鳥と交心できたのかな?、、
13世紀のイタリアはアッシジに、フルネームを<フランシスコ・ジョバンニ・ペトロ・ベルナルド>という聖人の修道士がいた。ちなみに、アメリカ民主党大統領候補バーニーの正式名もベルナルドだ。
聖フランシスコは、動物たちと意思が通じる人だったそうだ。小鳥やオオカミなどをふくむ神のあらゆる創造物を自分の兄弟姉妹のように愛し、オオカミを回心させたり、小鳥に説教をしたり、、<万物兄弟の思想>を唱えた。聖フランシスコは、「人間に必要なものは愛と平和だけで、争いや対立は<所有>による悪い産物だ」とし、<清貧>を奨励し自ら実践した。当時もキリスト教とイスラム教の宗教対立が激しく、キリスト教十字軍の侵略が吹き荒れていた。聖フランシスコはイスラム陣営に乗り込んでキリストの教えを説いたりもした。
<愛と清貧と素朴と謙譲>の思想は現代まで受け継がれ、1960年代から1970年代にかけて広がったヒッピーの集会では、「アッシジのフランシスコに続け」と、歌われた。この頃のバーニーはアメリカ社会主義青年同盟に所属し、イスラエルの共同体キブツで学び、バーモント州に住み大工、映画製作、作家、研究者などの職を転々とした。1972年に公開された聖フランシスコの伝記映画<ブラザーサン シスタームーン>でも、小鳥が狂言回しのように、頻繁に飛んでいる。
1980年、当時のローマ法王ヨハネ・パウロ2世は、、聖フランシスコを「自然環境保護(エコロジー)の聖人」に指定した。
(2) 小鳥が運んだ勝運:
別に小鳥の御蔭ではないだろうけど、負けが続いていたバーニーは西アメリカ3州でヒラリーに圧勝した。
「ポートランドの小鳥は、バーニー春の逆襲を告げた」と、2016年3月27日にイスラエル紙ハーレツはネット上で凱旋有料記事を載せた。そして、「さあ、バーニーはこれからニューヨークを目指すぞ!その地のユダヤ人は、なんと、ヒラリー・クリントンに忠誠を誓っているときたもんだ!!」負けるなバーニーとばかりに、バーニー贔屓を露わにした。
ニューヨークはヒラリーの地元だし、バーニーが対決するウォールストリートという金持ちユダヤ系アメリカ人の牙城がある。ウォールストリートとニューヨーク・タイムズ紙は既に、ヒラリー支持を表明している。貧乏人の味方・バーニーが入りこむ隙間はないとされてきた。。イスラエル紙ハーレツも貧しいユダヤ人で民主社会主義を表明しているバーニーを、アメリカの金持ちユダヤロビーが支持するわけがないと信じていた。
その、ヒラリー圧倒的優勢を伝えていたイスラエル紙ハーレツが、3月28日に、ギャロップ紙の3月24日付け記事を引用し、「ユダヤ系アメリカ人のバーニー支持率がヒラリーを抜いた。一方、気に食わない候補者の嫌い度は、ヒラリーが35%でバーニーは30%になった」と、報告している。
(3) 小鳥は飛んでく、どこにでも:
3月の頭にヒラリーは、ニューヨークタイムズ紙を使って、「民主党が早期に一致団結しないと共和党に勝てない、オバマもヒラリーを推してる」等々の噂を流し、バーニーの即時撤退を催促した。しかし、ホワイトハウスは噂を否定し、バーニーは「まだ半分以上の庶民から意向を聞いていないのに、なぜ止めなければならないんだ。私は99%貧乏人のため、最後まで戦い続ける」と、明言した。
確かに、まだ終わっていない。4月は、5日にウィスコンシン州、9日にワイオミング州、19日にニューヨーク州、と続き、26日のスーパーチューズデイにはコネチカット州、デラウェア州、ペンシルベニア州、メリーランド州、ロードアイランド州と、合計8州が手ぐすねを引いて、バーニーとヒラリーの両民主党大統領予備選候補者を待っている。
5月には、3日がインディアナ州、7日がグアム、10日がウェストバージニア州とネブラスカ州、17日がオレゴン州とケンタッキー州、24日がワシントン州と7個所で、民主党員の予備選挙や集会などが予定されている。
6月だって、4日にバージン諸島、5日にプエルトリコ、7日のスーパーチューズデイにはカリフォルニア州、サウスダコタ州、ニュージャージー州、ニューメキシコ州、ノースダコタ州、モンタナ州と6州がひしめき、14日にはいよいよ、ワシントンDCの決戦と、9箇所で投票が行われる。
<マヒワ>と呼ばれる小鳥は全長12㎝で、世界中に生息する渡り鳥です。 日本には冬に集団で飛んできます。 賑やかに鳴きかわしながら、草の種やハンノ木、カバノ木、ヒノ木などの実をついばんでいます。 まさに庶民の小鳥です。
99%のアメリカ産マヒワたちが、バーニーをアメリカ大統領に飛翔させてくれますように、、
文:平田伊都子 ジャーナリスト、 イラスト:川名生十 カメラマン
写真:Wikipedia, the free encyclopedia
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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