ビデオ:イスラエルの暴徒、反-パレスチナの狼藉で「エルサレムの日」を祝う

イスラエルは東西エルサレムの「統合」(じつは強奪)を希うとして「エルサレムの日」を設けている。実際には、東エルサレムを含む西岸、ガザ、シナイ、ゴラン高原を占領した「六日戦争」(第三次中東戦争)の祝勝記念日である。例年続いているが、今年も5月17日の「エルサレムの日」に、イスラエルの若者極右ナショナリスト集団の暴徒が占領地東エルサレムの旧市街に繰り出して反-パレスチナ、反-イスラームの人種差別ヘイトスピーチを叫び合った。そのビデオ記録と報告である。拙訳ですが紹介させていただきます。(2015年5月28日記)

 

※原文( )内は[ ]表記とし、訳者挿入は( )に入れた。

 

Video: Israeli mobs celebrate Jerusalem Day with anti-Palestinian rampage in Old City

ビデオ:イスラエルの暴徒、反 レスチナの狼藉で「エルサレムの日」を祝う

 

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アリ・アブーニウマの投稿(松元保 昭訳)

2015年5月18日

エレクトロニック・インティファー ダ

2015年5月19日

インティファーダ・パレスタイン

 

【ビデオ:レハーヴァ暴徒軍団「エルサレムの日」Lehava’ s gang, “Jerusalem day”, 17.5.2015

https://youtu.be/u3WmHxUwc_M

原注:YouTubeビデオのccボタンをクリックすると英語字幕が見れます。

【ビデオ英語字幕仮訳:レハーヴァのデモ隊はダマスカス・ゲートから旧市街の スーク(市場)に入り、以下のシュプレヒコールを繰り返す。レハーヴァ、カハネについては文中の訳注参照】

 

カハネはまだ生きている、(「わが父祖(預言者アブラハム)はまだ生きる」の旋律で歌った)

アラブよ、気をつけろ!ウチの女は言いなりにならねぇぞ

ヤッラー レハーヴァ ヤッラー レハーヴァ(行くぞ! レハーヴァ)

アラブよ、気をつけろ!ウチの女は言いなりにならねぇぞ!

アラブよ、気をつけろ!ウチの女は言いなりにならねぇぞ!

カハネ カハネ!  カハネ カハネ!  カハネ カハネ!

イスラエルの女は ユダヤ民族のものだ! イスラエルの女は ユダヤ民族のものだ!

アラブよ、気をつけろ!ウチの女は言いなりにならねぇぞ

アラブよ、気をつけろ!ウチの女は言いなりにならねぇぞ

ムハンマドは死んだ! ムハンマドは死んだ! ムハンマドは死んだ!

手をつなごう 奴はオレンジIDだ(イスラエル市民ではない居住者IDカードの色)

ムハンマドは売春婦の息子 ムハンマドは死んだ! ムハンマドは死んだ!

 

この日曜日、イスラエルの何千人もの若者、彼らの多くは子どもたちだったが、「アラブに死を」など人種差別と反-ムスリムのスローガンを大声で繰り返し、占領されたエルサレム旧市街を通り抜けて暴れ回った。

 

一部の者は見物人やジャーナリストを襲撃し、正午に閉鎖 するよう命じられたパレスチナ人の店舗のシャッターをドンドンと叩きながら行進した。

 

暴徒のデモは、1967年 のエルサレム東部地域占領を祝うイスラエルの祝日「エルサレムの日」のクライマックスとなった。1948年 には、シオニスト民兵が民族浄化のあげくエルサレムの西部地域を奪った。

 

国際法のもとでは、イスラエルが主張する1967年の征服に引き続くエルサレムの併合は無効であり、また世界のいかなる国によっても承認されていない。

 

人種差別シュプレヒコール

日曜日の暴力的光景は、その日の午後遅く、大量の宗教的 ナショナリストのイスラエル・ユダヤ人がダマスカス・ゲート付近に流れ込んでいくのを占領部隊が放置した時に始まった。

 

ここダマスカス・ゲートは壁に囲まれた旧市街の入り口 で、イスラエルが占領地ウエストバンクの何百万人のパレスチナ人のアクセスを事実上不可能にさせるまでは、久しいあいだ周辺の村々からくるパレスチナ人の活気あふれる市場だった。

 

【画像:5月17日、いくつもの人種差別スローガンをシュプレヒコールするイスラエル人が、エルサレム 旧市街に入るデモの前にダマスカス・ゲートに集結。(シャーロット・シルヴァー撮影)2015-5-17-damascus-gate.jpg

若者と少年のいくつものグループが、大声で叫びまた踊りながら輪 になって団結を表わした。

 

現場から報道したエレクトロニック・インティファーダの シャーロット・シルヴァーによれば、最初にパレスチナ国旗を持つ二人の女性に対して攻撃した暴徒は、次いで同調する群衆を増やして、手当 たり次第にパレスチナ人の見物人やジャーナリストに向かっていき、その場の雰囲気が怒れる暴徒に素早く転化していったという。

 

ハアレツはヨルダンのテレビ・クルーを襲撃した暴徒のビデオを公表した。イスラエル・タイムズも、女性ジャーナリストにハラスメントをして彼女の撮影担当者と話しているところを邪魔した若いイスラエル人をビデオに収めた。

 

多くの者がポピュラー・ミュージックに聖書の詩歌をつけて歌い、しばしばイスラエルのパレスチナ支配を正当化するために粉飾して替え歌にした。多くの人種差別スローガンのなかには「ユダヤ人は 高貴な魂。アラブ人は売春婦の息子。」というのもあった。

 

狂気が続き蔓延したレイシスト(人種差別主義者)のヘイト(憎悪)の本質が、この投稿ではわずか一部だが、エレクトロニック・インティファーダが得た膨大な場面の中に記録されている。このビデオは、エルサレム住民によく知られている(BDSや占領監視活動の)Zalamehと いうツイッターで発信されたが、その情報にはユダヤ人の過激主義と公然たる人種差別主義の混在した姿が提供されている。

 

【ビデオ:占領地エルサレムでイスラエルの暴徒が反パレスチナのスローガンを叫び合う】

ビデオはパレスチナ国旗を持っている2人の女性を口汚く罵っているところも収めている。

https://youtu.be/u3WmHxUwc_M

 

しかし、銃火器で完全武装した馬上のイスラエル国境警備 兵は大部分のパレスチナ人をダマスカス・ゲートの外側に追いやった。警備兵はデモの一団が誰かを襲撃するなら介入しようとして群衆側を監 視していた、とシルヴァーは語った。

 

「彼ら全員が死ぬように」

このビデオには、何人かの若者がひどい人種差別的なコメントをシルヴァーに語っている。ひとりが「パレスチナからのエルサレムの解放」を祝うために来たと語ると、もう一人が「奴らの記憶が消されるように」と口をはさんだ。

【ビデオ:ダマスカス・ゲート(被占領地東エルサレム)前の 「エルサレムの日」、2015517日】

https://youtu.be/u3WmHxUwc_M

 

「きょう奴らみんなが死ぬ、みんないっしょに」と別の者 が口をはさんだ。ひとりの子どもがエルサレムは「ドンキー(馬鹿な奴ら)」から「解放された」んだと、繰り返し言い張る。

 

口々に叫ぶ暴徒からは、最初から最後まで似たような表現 が聞かれた。

 

誰かの名前を叫ぶ罵りや消されるべき記憶は、アドルフ・ ヒトラーと同じく軽蔑されるべき敵として典型的に利用されてきたものだが、パレスチナ人に対してユダヤの若者がそれを利用することは人種憎悪が過激なレベルに達した指標であると、イスラエル(研究)の専門家ディナ・シャンラーは注目する。

 

異常に不穏な情況のなかで、こうした見方をべらべらしゃべる子どもたちに責任があると考えることは出来ない。しかし大量の子どもたちがこのヘイトデモに参加していることは、イスラエルの若者が 感化される組織的な反-パレスチナの扇動と教化を強烈に現わしている。

 

ユダヤの女はユダヤ人の「もの」

ついでデモの暴徒たちは旧市街に入り、普段はパレスチナ人の商店主や買い物客でいっぱいの狭い通りに向かって駆け降りていった。

 

反-異種族混交のグループ・レハーヴァ(Lehava)のメンバー―なかにはまだかなり若く見える者もいるが―もまた、「アラブよ、気をつけろ―ウチの女はいいなりにならねぇぞ」と叫んでデモに参加した。[最初のビデオを見よ]

 

【訳注:レハーヴァ(Lehava):ユダヤ人の異種族との同 化、とくにユダヤ人女性の非ユダヤ人との異種族混交に反対する極右シオニスト・グループ。ベンツィ・ゴプシュタイン(Bentzi Gopstein)やメイル・カハネ(Meir Kahane )の影響で2009年にモーゼ・シオン(Mosis Zion)によって設立された。「左派の死」「アラブの死」などという過激な言論と妨害活動を展開中。】

 

彼らはまた、「イスラエルの女は、イスラエル[ユダヤ]民族のものだ」と叫び合った。

 

これらは、ユダヤの女に寄り付くなというパレスチナの男 たちに対する警告である。事実上、ユダヤの女はもっぱらユダヤの男たちのものだという表現だ。

 

宗教的憎悪

同じデモ隊の中に、人気のある宗教的ナショナリストの 歌、アブラハムを謳った「われらの父祖はまだ生きる」の旋律で「カハネはまだ生きている」と歌っているのが聞こえる。

 

ユダヤ防衛同盟(JDL)を設立し暗殺されたブルックリンのラビ、メイル・カハネ(Meir Kahane)は、このようにほとんど聖書 の族長レベルにまで高められた。

 

カハネはまた、イスラエルにおいてさえ非合法化されテロ リスト集団と扱われた過激な人種差別組織、カハ(Kach)を創設した。

 

【訳注:メイル・カハネ(Meir Kahane) およびカハ(Kach):メイル・カハネ(1932~1990)は、米国ブルックリンのイェシヴァでラビとなり、過激シオニスト、好戦的なウルトラ人種差別主義者であった。1968年米欧で活動するユダヤ防衛同盟(JDL) を設立したが、暗殺と爆破を繰り返しFBIからも「テロ組織」と名指された。1971年 イスラエルに移住し政党カハを設立しクネセト議員となり宗教右翼に大きな影響を及ぼした。1994年 ヘブロン・イブラヒーム・モスクで集団殺戮した医師バルーフ・ゴールドシュタインもJDLの 同盟員。1998年イスラエル政府はカハを「反民主主義」として禁止した。JDL の「アラブ人をガス室に」という落書きが西岸各地に見られる。1990年マンハッ タンでアラブ人に射殺されたといわれている。】

 

彼メイル・カハネは、全パレスチナ住民はイスラエルが占 領した土地から追放されるべしという要求でもっとも記憶されている。

 

挑発と中傷を意図したスローガンの声の中には、ムスリムの預言者ムハンマドは「ホモ」で「売春婦の息子」だというシュプレヒコールも聞かれる。

 

パレスチナ人への敵意に満ちた表現、さらにジェノサイド を呼び起こすヘイト(憎悪)は、昨年7月に10代 のパレスチナ人ムハンマド・アブー・フデイルを誘拐し生きたまま焼いてクライマックスに達した「アラブに死を」のデモ行進を連想させる。

 

エルサレムのモスクを破壊せよ

 

【画像:「アルアクサ・モスクを破壊せよ」というヘブライ語のフライヤー jerusalem-flyer-sm.jpg

「エルサレムの日」のデモで配られた一枚のチラシは、ユダヤ教の神殿に道をあけるためアル=アクサ・モスクを「つぶせ」とイスラエル政府に訴えている。(シャーロット・シル ヴァー)

 

ユダヤ人の過激組織は、その場所をユダヤの第三神殿に 取って代えるためイスラエル政府がエルサレムのアル=アクサ・モスクと岩のドーム を破壊するよう要求するチラシをばらまいた。

 

イスラーム世界の最も神聖な場所の一つであるアル=アクサ・モスクの破壊は、イスラエル政府に後押しされ資金提供されるいくつかのイスラエ ル・ユダヤ人組織の積年の目標である。

 

日曜日のデモで受け取った絵を使ったチラシは次のように 主張している。

「エルサレムの日を祝して、われらすべてのものはイスラエル政府に要求する。われらが 生贄の捧げものを再興し神殿を建てることが出来るよう神殿の丘にあるモスクを打ち倒すことを。」

 

「[神殿の]丘に帰還すること」を要求した組織が署名している。

 

激しい憎悪と宗教的国家主義的なショーヴィニズム(好戦 的排外的愛国主義)のムードは、イスラエル首相ベンジャミン・ネタニヤフの宣言によって疑いなく鼓舞されたのである。つまり彼は、「エルサレムは―他のいかなる民族でもなく―いつでもただユダヤの民だけの首都であった」とその日に語ったのである。(ハアレツによる⇒http://www.haaretz.com/polopoly_fs/1.656921.1431885137!/image/1999316212.JPG_gen/derivatives/landscape_640/1999316212.JPG

 

デモは、嘆きの壁で行われた大規模集会で、他の政府要人 のなかでもユダヤの家[Habayit Hayehudi]の党首、教育大臣ナフ タリ・ベネットの参加によって最高潮に達した。

 

ディナ・シャンラーの翻訳と分析に感謝して

(以上、翻訳終わり)

 

【訳者ひとこと:

激しい憎悪表現はナチの再版をみているようだが、日本でもこの数年、あからさま な人種差別的排外ヘイトが主に在日韓国・朝鮮人に対して顕在化してきた。「殺せ、殺せ朝鮮人」「ガス室に朝鮮人、韓国人をたたき込め」などと口汚い言葉が横行している。イスラエル、日本双方ともに、他者の血潮を踏み台にしたままの国家神話に突き進み新たな鬼子を生み出している。表現の根には、共通して「抹殺の思想」があり、その背景には侵略と戦争犯罪の反省、謝罪、賠償の捻じ曲げ、無視による「対話の拒絶」がある。

 

侵略と民族浄化に何の反省もなく「ユダヤ国家」を標榜するイスラエルの人種主義 がエチオピアやモロッコのアフリカ系棄民を生み出しているように、俘囚にも蝦夷にも賤民にも穢多にもアイヌにも琉球にも在日朝鮮人にもおよそ被差別の人間に深刻な反省をしてこなかった中心部日本人が福島の棄民を生み出している。エルサレムの、新大久保のヘイトスピーチは、 地獄への燈火である。】

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion5381:150530〕