ブルマン!だよね氏の頂門の一針「異論なマルクス 搾取理論は格差・貧困問題を解明できるか?」を拝読し、今春俄かに発症しました眼病にも拘わらず、氏のご投稿中ピケティに関わる疑問を更に呈したいと思い投稿しました。
第一に、米英を筆頭に先進諸国でブルマン!だよね氏がご指摘になる「産業構造の大変動」が生じていることは、日本経済の危機的状況を踏まえて幾多の提案をされているエコノミスト野口悠紀雄氏(早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問)の諸著に詳しいのですが、一言で言って、現下では、製造業が廃れて金融業が全盛になり、更にそれらを含む経済の業態が変化しつつある、と思われます。
その例証には、最近、NASDAQが歴史的な高値を更新したことがあげられると思われます。 日本とは相違して先端的な起業の勢いが衰えることが無い米国の状況は、製造業を早々と捨て去り時代の先取りをしつつ業種の更新を絶え間なく継続する経済の波動を感じます。
また、米英の現下の筆頭産業である金融にあっても、投資信託の分野に観られる如く、今や科学的投資理論に基づくインデックスファンドやETFが奔流の勢いになり、個別株選定で市場を出し抜こうと逸る株屋の出る幕では無くなりつつあります。 その筆頭がジョン・ボーグル (John Bogle)氏創設の世界最大級の運用会社であるバンガード(Vanguard)グループであるのは、今や自明のことでしょう。 そして最新の金融投資理論に基づく単位株選定を排した低コスト投資信託は、ドル・コスト投資理論とともに労働者層の自前年金運用の要求にも応えているところです。
経済の実状を背景に、米国の格差拡大は、労働の質の拡大と増幅を基にしたもの、と捉えるのが現実的でしょう。 詰まり労働そのものが前世紀の労働作業では無くなり、高度な知的労働に転換したのです。 残った製造業でも、米国においては、新興国に製造そのものは委託して、その製品の価値創造と生産管理が知的労働者に依り行われるものとなったのです。
また、19世紀の経済実態分析に基づくマルクスの理論は、資本家と投資の果たす役割を不当に低評価するものであり、奴隷労働に依る搾取を念頭に置いた単純な労働を分析の基礎に据えた数世紀以前のモデル解析として今や失笑の対象となる、と極言するのは不当でしょうか。
投資の成果を搾取の結果と捉えるのか、正当な投資のリターンと受け取るのか、との評価、価値の認識とも言えましょう。 蟹工船のような単純モデルでは、現下の経済を分析も出来ないのですから仕方がありませんが。
ともあれ、ピケティの翻訳者が以下の如く、少々、表現が卑俗に過ぎる嫌いがあるものの、ピケティ盲信を排されている事実も申し添えます。
曰く
「ピケティを盲信して格差、格差、この世の終わりだ資本主義の宿痾だ革命だマルクス様の復活だついでにアベノミクス許さんとさわぐのはたいへん愚かで恥ずかしいことなので、やめていただきたいところ。金持ち儲かるんだろ、知ってたぜ、常識だフン、どうせオレたち貧乏人はいくら頑張ってもダメなのよ、ついでにアベノミクス許さん、とかいった間抜けな発言は、ツイッターくらいにとどめておいてほしい。」(山形浩生 の「経済のトリセツ」)