ベラルーシの甲状腺がん増加について、およびウクライナ・ルギヌイ地区はセシウム137の汚染レベル

みなさまへ    松元

「平和への結集」の太田光征さんから重要な資料が2度にわたって提供されましたので、(重複するリンク先もありますが)紹介させていただきます。

「福島集団疎開裁判・矢ヶ崎克馬意見書」で言及されているものです。

=====ベラルーシでは~=====

[転送・転載歓迎します。重複受信の際はご容赦ください。]

ベラルーシでは子ども・大人の甲状腺がんがチェルノブイリ事故後1年で増加(ミハイル・V・マリコ)/原爆投下後の最初の年に白血病が増加(草野信男『原爆症』)
http://unitingforpeace.seesaa.net/article/265634282.html

国連放射線影響科学委員会(UNSCEAR)2000年報告によれば、ベラルーシではチェルノブイリ事故後1年で子どもの甲状腺がんが増加している。

ベラルーシ:チェルノブイリ事故後1年で甲状腺がんが増加
http://unitingforpeace.seesaa.net/article/255986068.html
国連放射線影響科学委員会(UNSCEAR)2000年報告
http://www.unscear.org/unscear/en/publications.html
UNSCEAR 2000 report – Vol. II: Effects
http://www.unscear.org/unscear/en/publications/2000_2.html
Annex J: Exposures and effects of the Chernobyl accident (115 pages)
pp.498-499

福島集団疎開裁判・矢ヶ崎意見書甲104で取り上げられている「ベラルーシの青年・大人の甲状腺ガン」でも、ベラルーシで子どもだけでなく青年・大人の甲状腺がんが事故後1年で増加していることが報告されている。

「チェルノブイリ事故による放射能災害―国際共同研究報告書」(今中哲二編、技術と人間、1998 年)
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/Chernobyl/J-Version.html
第5章「個別の健康影響研究」21節「ベラルーシの青年・大人の甲状腺ガン」(ミハイル・V・マリコ、ベラルーシ科学アカデミー・物理化学放射線問題研究所)
福島集団疎開裁判・矢ヶ崎克馬意見書甲104(「ベラルーシの青年・大人の甲状腺ガン」を収載)
http://1am.sakura.ne.jp/Nuclear/kou104Yagasaki-opinion4.pdf
福島集団疎開裁判・意見書リスト
http://song-deborah.com/copyright/Japaninfrige/Fukushima-sokai-case.htm

東電のサイトも国連放射線影響科学委員会(UNSCEAR)2000年報告からベラルーシにおける甲状腺がん発生件数のグラフを転載しているが、「一方、がんが事故後増加したという報告が見られるが、放射能で汚染のない地域でも近年増加しているという報告があることから、これも含めて考える必要がある」と記述している。

TEPCO : 放射線の話 | 放射線コーナーQ&A その他 Q2
http://www.tepco.co.jp/nuclear/hige/qa/thi/gqa/qa-g2-j.html

ここでいう「がん」がベラルーシにおける甲状腺がんを示しているのかどうか分からないが、「ベラルーシの青年・大人の甲状腺ガン」によれば、青年・大人の甲状腺がんは事故前から増加傾向にあったものの、それは事故後の急増を説明できないほど小さい。

放射線とがん発症時期の関係については、原爆被害の研究で故草野信男が記録を残している。ECRR(欧州放射線リスク委員会)2010年勧告では、草野の『原爆症』(築地書館、1995年に再発行)を引用して、「初期の日本人の報告書は、原爆投下後の最初の年に白血病の症例が増加しはじめ(最初の症例は被ばく ヶ月後)、そして、原爆投下時には居合わせなかったが後

なって被爆地に入市した人たちの間でも発症があったことを示している(Kusano 1953)」と書いている。

福島原発事故:その放射能の影響と欧州放射線リスク委員会勧告 第2回
http://www.inaco.co.jp/isaac/back/032/032.html

太田光征

=====チェルノブイリ事故後に~======

チェルノブイリ事故後に健康被害が増加したウクライナ・ルギヌイ地区では千葉県東葛地域と重なるセシウム137レベルの地域でも定期検診を実施
http://2011shinsaichiba.seesaa.net/article/265437525.html

福島県郡山市とチェルノブイリ事故後のウクライナ・ルギヌイ地区はセシウム137の汚染レベルがよく似ており、それらの下限は千葉県東葛地域のセシウム137レベル1万~6万Bq/m^2(2011年9月)と重なる。同地区では事故後に健康被害が増えており、東葛地域と同じ汚染レベルの地域でも全身カウンターによる定期検診が子どもだけでなく大人にも実施されている。

チェルノブイリ汚染分類 Cs137 kBq /m^2 郡山市 ルギヌイ地区(農地面積)
移住義務       555- 0 (0%) 2 (0.6%)
移住権利       185-555 19 (16.1 %) 42 (12.7%)
管理強化       37-185 69 (58.5 %) 283 (85.2%)
           -37 32 (27.1 %) 5 (1.5%)

表は矢ヶ崎克馬氏が福島集団疎開裁判意見書甲49で「ウクライナ・ルギヌイ地区住民の健康状態」と文科省調査結果を基に作成(表記を一部修正)。

「チェルノブイリ事故による放射能災害―国際共同研究報告書」(今中哲二編、技術と人間、1998 年)
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/Chernobyl/J-Version.html
第4章「疫学研究と健康統計データ」18節「ウクライナ・ルギヌイ地区住民の健康状態」(イワン・ゴドレフスキー、オレグ・ナスビット:ルギヌイ地区医療協議会、ウクライナ科学アカデミー・水圏生物学研究所)
福島集団疎開裁判・矢ヶ崎意見書甲64(「ウクライナ・ルギヌイ地区住民の健康状態」を収載)
http://1am.sakura.ne.jp/Nuclear/kou64.pdf
福島集団疎開裁判・矢ヶ崎意見書甲49
http://1am.sakura.ne.jp/Nuclear/kou49Yagasaki-opinion.pdf
文部科学省による埼玉県及び千葉県の航空機モニタリングの測定結果について(平成23年9月29日)
http://radioactivity.mext.go.jp/ja/1910/2011/09/1910_092917_1.pdf

「ウクライナ・ルギヌイ地区住民の健康状態」によれば、同地区ではチェルノブイリ事故前の1984年には胃がんの診断後余命が62カ月であったが事故後の96年には2.3カ月に短縮するなど、「事実上すべての患者に免疫力の低下がみられた」。内分泌系では、子どもたちの間で甲状腺疾患数が88年~90年に1000人当たり10件だったのが、95年までに90件以上に上昇し、甲状腺腫数も91年までのゼロから95年までに1000人当たり約13症例に上昇している。新生児罹病率も86年までの1000人当たり50人前後から88年以降は約150人~300人以上に増加している。事故前にはまったく記録されていない「間脳の障害を伴う自律神経失調症」が事故後に急増するなど、精神神経障害も増えている。若者の高血圧の増加など老化指標が確認されており、事故前(84年~85年)の平均寿命75歳が事故後(90年~96年)は65歳になった。

ルギヌイ地区の管理強化地域(東葛地域の汚染レベル)を含む汚染地域では全身カウンターによる定期検診が子どもだけでなく大人にも実施されている。
太田光征

(以上、転送)