ハイテク旅客機「ボーイング787」は、2011年秋から商業運行が始まった。ところが、今年になって、米国や日本で燃料漏れなどのトラブルが続発したため、運行をストップさせて原因究明に当たっている。
機体の軽量化のための炭素繊維複合材は東レが開発、主翼・タイヤ・電子部品など製造の35%に日本企業が参加。日航、全日空はいち早く新鋭機の運行を進めていた。
日経2月9日付朝刊特派員電は、「787機の運行停止が長期化する見通しになった。①原因究明②電池の認可条件見直し③設計の変更④運行認証――という4つのハードルが立ちはだかるためだ。……米運輸安全委員会は7日の記者会見で、熱暴走に至ったプロセスの一部を明らかにした。それによると電源を構成する8つの『セル』と呼ばれるリチウムイオン電池のうち1つがショート。これが隣接するセルにも広がり熱暴走が発生した。『電気飛行機』と言われる787では『フライ・バイ・ワイヤ』と呼ぶ高度な電子制御を採用。以前は油圧装置などで主翼などを動かしたが、電線1本で電気信号を介して操作する方式に変えた。設計変更には関係国の調整が必要だが、手間がかかる。一連の作業を経たうえで『1000%の安全が確認できれば』(ラフード米運輸長官)運行再開させる方針。787復活への道のりは長くなりそうだ」と現状報告していたが、事故の重大性を再認識させられた。
日航・全日空、部品生産企業にも深刻な影響
ボーイング社にとっては今後、日航など航空8社に引き渡し済みの49機の修理に加え、受注している約800機の生産ストップの大打撃を受けることになった。欧州エアバス社としのぎを削ってきたボーイング社には、まことにショッキングなことだ。もちろん、主力機を787機に移した日航、全日空の打撃も大きい。旧型機で当分運行せざるを得ないが、便数削減も心配されている。787機には日本の技術が貢献していただけに、日本経済にとっても深刻だ。「成長戦略には日本企業の技術力の輸出が不可欠。その大事な信用が失われると、戦略の練り直必要となる」と、経産省幹部が指摘(サンデー毎日2・3号)していたが、事故調査が半年いや1年も延びるようだったら、世界経済への影響は深刻だ。
三菱重工株など軒並み下落
経済専門紙の日経は、787機問題を原因究明だけでなく、世界経済への重大な影響について連日のように報じており、参考になる。同紙17日付朝刊は「部品各社、影響大きく」
との見出しで、ボーイング社と日本企業との密接な関係をコメントしている。一部を紹介すると――。「三菱重工業、川崎重工業、富士重工業3社で機体構造の35%を担当。東レは翼や胴体の部材として炭素繊維と樹脂の複合材を供給している。三菱重工は主翼の専門工場を名古屋に設置、2030年をメドに月産10機体制の準備を進めていた。今回の事故によって、先行きは不透明。このため、16日の株式市場は787機の部材を生産する日本企業の株価が軒並み3~6%も株価が下落した。各工場に在庫が増え、今後の動向に気をもんでいる」とレポートしている。ボーイング社の損害は膨大であり、世界経済を揺るがす様相を深めてきた。
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