ポツダム宣言と玉音放送~敗戦記念日に寄せて

韓国通信NO703

 米・英・中(後にソ連参加)が発表したポツダム宣言を日本政府は受諾、8月15日正午、天皇がラジオ放送で降伏を発表した。
 「朕深ク世界ノ大勢ト帝国ノ現状トニ鑑ミ、非常ノ措置ヲ以テ時局ヲ収拾セムト欲シ、茲ニ忠良ナル爾臣民ニ告ク」から始まり、「朕ハ帝国政府ヲシテ米英支蘇四国ニ対シ其ノ共同宣言ヲ受諾スル旨通告セシメタリ」とポツダム宣言の受諾から始まるが、記憶に残るのは「忍ヒ難キヲ忍ヒ以テ万世ノ為ニ太平ヲ開カムト欲ス」という部分だけというのも不思議な気がする。天皇の声を「玉音」と言って憚らない敗北宣言で何が語られたのか知ろうとする人はあまりいない。敗戦だけで十分。私自身も「敗戦の弁」を詳しく知りたいとは思わなかった。

 「終戦の詔勅」を読み直して日本側のポツダム宣言の受け止め方に勝者と乖離があることに気づく。降伏はするが負けてはいないと言いたそうな口ぶりだ。
 戦後、新憲法のもと恒久平和を誓い民主主義国家として歩んできたわが国が急転回しようとしている。平和を口実にした軍備大拡張、先制攻撃を含む戦争体制、核兵器の共有が公然と語られ、健康で文化的な生活を保障すべき国の基本を放棄した非情な社会の到来。ポツダム宣言が求めた日本の政治体制との大きな違いに気づく。宣言は軍国主義の清算と民主主義国家の建設と基本的人権の尊重を求めていた。
 明治以降、日本がしでかした戦争とは何だったのか。敗戦から何を学んだのか。歴史を学べばわかるはずだが「歴史の必然性」に思考を委ね、反省のない肯定に陥っているように見える。ポツダム宣言から今日までの歴史を振り返るのはあながち無意味ではない。

 <都合の悪い歴史を無視する人たち>
 安倍首相(当時)がポツダム宣言について問われ、「つまびらかに読んでおりません」と答えた(2015年5月20日党首討論)。不勉強で知らなかったのか、知らないふりをしたのかはわからない。わが国の敗戦と戦後政治体制のスタートになったポツダム宣言をあっけらかんとして「知らない」といったのは驚くほかない。
 『戦後レジームの打破』を主張する政治家としては、敗戦を認め、非軍事化、民主主義国家として再出発を求められた事実は認めたくなかったのだろう。敗戦から77年たって、故安倍晋三を始め意図的に過去を忘れようとする政治家たちが多すぎる。

ポツダム宣言(邦訳全文) 不自然な訳文箇所に若干の修正あり(筆者)
1. 我々合衆国大統領、中華民国政府主席、及び英国総理大臣は数億の国民を代表し協議の上、日本国に対し戦争を終結する機会を与えることで一致した。
2. 3ヶ国の軍隊は増強を受け、日本に最後の打撃を加える用意を既に整えた。この軍事力は、日本国の抵抗が止まるまで、同国に対する戦争を遂行する一切の連合国の決意により支持され且つ鼓舞される。
3. 世界の自由な人民に支持されたこの軍事力行使は、ナチス・ドイツ軍に完全に破壊をもたらしたように、日本と日本軍が完全に壊滅することを意味する。
4. 日本が、無分別な打算により自国を滅亡の淵に追い詰めた軍国主義者の指導を引き続き受けるか、それとも理性の道を歩むかを選ぶべき時が到来したのだ。
5. 我々の条件は以下の条文で示すとおり、これについてはあくまでも譲歩せず、執行の遅れは認めない。
6. 日本国民を欺いて世界征服に乗り出す過ちを犯させた勢力を永久に除去する。無責任な軍国主義が世界から駆逐されるまでは、平和と安全と正義の新秩序も現れ得ないからである。
7. 第6条の新秩序が確立されるために日本国領域内の諸地点は占領されるべきものとする。
8. カイロ宣言の条項は履行されるべきであり、又日本国の主権は本州、北海道、九州及び四国ならびに我々の決定する諸小島に限られなければならない。
9. 日本軍兵士は武装解除後、各自の家庭に帰り平和・生産的に生活出来る機会を与えられる。
10. 我々の意志は日本人を民族として奴隷化し、また日本国民を滅亡させようとするものではないが、日本における捕虜虐待を含む一切の戦争犯罪人は処罰されるべきである。日本政府は日本国国民における民主主義的傾向の復活を強化し、これを妨げるあらゆる障碍は排除するべきであり、言論、宗教及び思想の自由並びに基本的人権の尊重は確立されるべきである。
11. 日本は経済復興し、課された賠償の義務を履行するための生産手段、戦争と再軍備に関わるものを除き保有出来る。また将来的には国際貿易に復帰が許可される。
12. 日本国国民が自由に表明した意志による平和的傾向の責任ある政府の樹立を求める。この項目並びにすでに記載した条件が達成された場合に占領軍は撤退するべきである。
13. 我々は日本政府が全日本軍の即時無条件降伏を宣言し、またその行動について日本政府が十分に保障することを求める。これ以外の選択肢は迅速且つ完全なる壊滅があるのみである。
1945年7月26日

 ポツダム宣言がナチス・ドイツと日本軍国主義が世界の平和秩序に災難を与えたことに連合国がどう対処したかは明白だろう。日本の民主化、領土の限定、再軍備の否定、戦争犯罪人(戦争責任)の処罰などを求める内容だ。
 現在緊迫の度合いを深めている中国、ロシア、南北朝鮮、台湾との関係はポツダム宣言の精神から紐解くことは可能と思える。韓国に対する賠償は日韓条約で禍根を残したまま個人の賠償問題が日韓関係をこじらせ現在に至り、北朝鮮との賠償問題は未着手のまま、台湾は蒋介石が賠償放棄、中国は毛沢東、周恩来政府によって賠償は放棄されたとは言え、日本の侵略による朝鮮、中・台が受けた物的、人的被害は放棄された額を含めて天文学的数字にのぼる。ポツダム宣言の受諾は重い。それを否定して過去に何もなかったかのようにふるまい、近隣アジア諸国との対立を当然のように考える日本政府の態度は敗戦否認の開き直りそのものだ。政治家に日本国憲法の勉強とポツダム宣言の再読をすすめたい。恒例の日本人死者310万人のための戦没者慰霊式典などは見たくない。アジアの犠牲者は2千万人を超える。合掌

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