マイナカードのトラブル続出、見事なまでの?タライ回し

 役所のタライ回しがいくらお手のものといっても、マイナカードのトラブルは、いったい、誰が責任を取るのだろう。マイナカード申請促進の洪水のようなあの新聞全面広告には、たしかに、総務省、デジタル庁、厚生労働省の文字が連なっていた。

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2023年5月15日『東京新聞』より。

 マイナ保険証では別人の個人情報が紐づけされたり、病院などの窓口では一体化したはずのマイナ保険証が用をなさなかったりとしたトラブルが明らかになってきた。
5月12日、厚生労働省の調査で、「マイナ保険証」をめぐり、医療保険を運営する健康保険組合などによる誤登録が2021年10月から22年11月末までに全国で約7300件あったことが分かった。加藤厚労相は、健康保険組合などによる入力ミスが原因だとし、関係機関にチェックをするように求めたという。

 また、先月来、コンビニでのマイナカードによる住民票や証明書の誤発行などのトラブルが続いたが、河野デジタル相は、5月9日の閣議後記者会見で、システムを提供する「富士通Japan」に一時停止と再点検を要請し、今後については自治体と富士通Japanと調整していただく、と語っていた。

 あの“居眠りしてなかった”松本総務相も、5月16日、他人事のように、「厚生労働省が関係する機関が連携してシステム開発や運用において万全を期しているところでございます」との発言である。

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2023年5月15日、フジテレビ「めざまし8」より。

 いったい、どこに、だれに責任があるというのだろう。いうなれば、富士通の子会社の富士通Japanに、その下請けの、また下請けの人たちの責任かのような。そして、セキュリティの安全性を強調したところで、組織からの情報の大量漏えいは、日常茶飯だし、再委託、再下請けにより、個人情報は限りなく、多くの人の手に渡るわけで、いくら丁寧に説明を尽くされても、納得できるものではない。

 さらに、マイナカードは、社会保障、税、災害対策における事務の効率化を図り、国民へのサービス向上を図るためと喧伝されて、法制化している。にもかかわらず、いま、政府が躍起になっているのは、マイナカード取得によるポイント付与による取得促進であったし、現在は、本来の「社会保障、税、災害対策」はどこへやら、健康保険証との一体化という、法律上、マイナカード利用も可とする100項目もある別表の一つをもって、マイナカード取得の義務化に躍起になっているのが現状である。そもそも、さまざまなリスクが伴うマイナカード取得は、当然のことながら、法律上自由なのである。

 「新しいシステムは問題が必ず生じる。新しいものの不安感が強いから(問題が)出るとクローズアップされるが、紙のカルテでも問題は山ほどあった」「デジタルの問題ばかりを指摘せず、前に進めていく必要性」などと、おおざっぱな無責任な発言をするコメンテイターもいる中で(橋本徹「めざまし8」2023年5月16日)、国は国民を決して守ってはくれない、自分で守るしかないのか、の思いしきり。

初出:「内野光子のブログ」2023.5.17より許可を得て転載
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2023/05/post-6e51bf.html

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
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