たんなる予算消化かも?!
8月28日、朝日新聞のマイナンバーカードの全面広告に驚いて、当ブログに下記の記事を書いた。朝日だけではなく同日の毎日新聞にも全面広告があったので、他の全国紙にもあったのかもしれない。
2021年8月28日 (土)マイナンバーカード、全面広告、朝日の見識を問う
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2021/08/post-820e5f.html
以降、自民党総裁選に続いて、総選挙の政局報道で姦しい中、新聞広告に驚いているまもなく、あれよ、あれよと、テレビのコマーシャルがしきりに流れ始めた。
マイナンバーカードの発行が4500万を突破したそうで、佐々木蔵之介が、八百屋?の店先で「三人に一人はカードを持ってるんだって」と店員と掛け合うのは「そろそろあなたもマイナンバーカード「<3人に1人持ってる>」篇 15秒」というのらしい。また、喫茶店で、カードを持ってない田中みな美(後から彼女の名前を知ったのだが)が友人にそのメリットを聞くのが「そろそろあなたもマイナンバーカード<メリットを知る>篇 30秒」、黒柳徹子が中年の男性を相手に、一方的にしゃべる「そろそろあなたもマイナンバーカード<デジタル苦手>篇 15秒」であることがわかった。ヤフーで検索していると、右肩にしょっちゅうこの広告が現れる。8月28日から一斉に流し始めたことは、ネット上の総務省の「報道資料」(連絡先:自治行政局住民制度課マイナンバー制度支援室)で知った。
そして、10月10日には、また、下記のような黒柳徹子の全面広告に接して、税金には違いないが、いったいこの広告費は、どこから出ているのかと、疑問が広がった。
「society5.0時代の社会」ってなに?
上記のマイナンバー制度支援室に聞いてみた。総務省のホームページの「予算・決算」のところでわかります」というので、それじゃあ、ということで、パソコンをひらき、誘導してもらい「令和二年度総務省所管第3次補正予算の概要」(2021年1月)からわかるという。なんと、これらの広告費は、2020年、昨年度第三次補正予算、つまり、その積み残しから出ているというのだ。その「概要」をたどってみた。「経済政策」として3,981.3億円が計上されている。
【経済対策】
Ⅰ 新型コロナウィルス感染症の拡大防止策
30.4億円
Ⅱ ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現
1.国・地方を通じたデジタル・ガバメントの推進
1,799.3億円
2.マイナンバーカードの普及・利活用の促進
1,336.4億円
1)マイナンバーカード普及に係る対応策強化
1,032.1億円
2)マイナンバーード機能のスマートフォン搭
載等の実現に向けた実証等
39.6億円
3)マイナポイントによる消費活性化策の拡充
250.0億円
4)マイナポイントの基盤を活用した個人給付の検討
14.7億円
3.テレワークや遠隔教育を支える情報通信基盤の整備
4.Beyond 5Gをはじめとした先端技術への戦略的投資
5.デジタル化の進展に合わせたセイバーセキュリティの確保
6.新しい働き方・暮らし方の定着・デジタル格差対策の推進
7.総務省の政策資源を総動員した海外展開の推進
Ⅲ 防災減殺、国土強靭化の推進などの安心・安全の確保
50.2億円
各項目の解説を見るまでもないが、
Ⅱ-2-1)マイナンバーカード普及に係る対応策強化 1,032.1億円
ということで、「キャンペーンやテレビCMなどの広報活動を強化する」ための予算が1000億円を超えていることがわかる。昨年度の積み残し、残してはならぬ、使いは果たさねば、来年度度予算獲得にも影響し、9月1日デジタル庁発足の機もあって、8月下旬からの一斉広報になったのも見て取れる。あんなに大きな新聞広告、しきりに流れるテレビコマーシャル、億単位のお金を湯水のごとく使っているようにしか見えない。
マイナンバーカードを持つ、持たないが、今の私たちの暮らしに、どれほどのメリットがあるのだろうか。一番関係ありそうなのが、マイナポイント事業によるマイナンバーカード普及と消費の活性化をうたったのだが、笛吹けど踊らず、マイナポイント普及のために、表に見るように、別に260億円以上計上しているのである。
ところが、以上は、あくまでも補正予算、令和二年度の本予算では、「総務省所管予算概要」の主要事項として「Ⅰ 東京一極集中の是正と地域の活性化」と並んで「Ⅱsociety5.0時代の社会」とある。その中で
・マイナンバーカードの普及とマイナンバー制度の利活用の促進:1,664.4憶
・マイナンバーカードを活用した消費活性化と官民共同利用型キャッシュレス結成基盤の構築:2,457.6憶
以上が、すでに計上されているのである。この予算で、何がどう使われて、どれほどの残っているのか、足りないのか。わけが分からないまま、また次年度の予算が組まれていくではないか。「society5.0時代の社会」ってなに?
「「society5.0」とは」「内閣府のホームページより
https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/society5_0.pdf
マイナポイント事業の失敗
ちなみに、新聞報道によれば、マイナポイント事業は当初4000万人にマイナポイントの付与(2万円の前払いに対して5千円のポイントを付ける)の実施を予定していたが、ことしの8月末現在でマイナポイントに登録したのは2250万人に過ぎなかった。財務省によれば、マイナポイント事業の予算は3000億円で、5000万人分が確保されているがこのままだと大半を使い残す可能性がある(「マイナポイント登録対象半数以下」『東京新聞』2021年10月12日)。
マイナポイントの2万円で2万5000円の買い物ができるからとマイナンバーカード取得の促進をはかった。目の前にニンジンをぶら下げれば何とかなるとでも思ったのか、消費者はそう簡単には動かなかった、というわけである。上記の総務省所管予算の数字と上記の報道の財務省の数字とは若干異なるが、本予算、補正とをあわせれば、それに近い数字となるのだが(2457.6憶プラス264.7憶)。
ところで、マイナポイント事業の前提となるマイナンバーカードの取得率といえば、総務省から毎月1日現在のデータが発表になる。10月1日現在の詳細は以下のサイトで見られる。交付枚数として全国人口1億2665万4244分の4867万2550で、38.4%になったそうである。都市部は40%をわずかに超えるが、町村部が34.7%であった。都道府県別、市町村別の取得率、取得率のベスト10まで発表されている。ちなみに、ベスト1は石川県加賀市で70.0%、私の住む千葉県佐倉市は32.8%で、先月は31.6%であった。9月の全国の取得率は37.6%であったから、それぞれのアップ分が、今回の異様なほどの「広報活動」の成果とでもいうのだろうか。
マイナンバーカードの市区町村別交付枚数等について(令和3年10月1日現在)https://www.soumu.go.jp/main_content/000773377.pdf
マイナンバーカードは、行政手続きがラクになる、保険証にもなる、運転免許証にもなる、キャッシュレス決済にもなる、スマホにも搭載するというのだが、それだけ情報が集中しているカードがあるということは、個人情報の漏洩や悪用のリスクが高まることであり、システム整備などによるコスパは、低下するばかりであるのは、上述の通りである。億単位の税金が、どこでどう使われているのかを知ることは、まず、国民にとっては至難の業なのである。一度でも知りたいことを国や自治体に尋ねてみると、回される、待たされる、はっきりしない、あきらめさせる・・・。情報提供や情報公開を試みてみるとイヤというほどわかる。
初出:「内野光子のブログ」2021.10.15より許可を得て転載
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2021/10/post-8b9bd0.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
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