マンション生活で知り得た社会問題を考える(17)  ― 「管理会社マンション」管理規約改正の動き(第2報)

(13)報(https://chikyuza.net/archives/63792)で当マンションの理事会による管理規約・細則改正の動きを羽田の目で見て批判的に伝えた。その後、理事会は規約改正専門委員会の名前で出された改正原案の説明会(3月19日)の結果を基に、住民から出された意見に対する回答を8,9月と2回に分けて文書の形で全戸に配布した。この動きは異論を唱える住民への「管理会社マンション」での管理規約改正の方法など重要な要素を含んでおり、直接マンション生活に関わる人々への示唆となる課題と考えて報告する。たかが一マンションの問題に留まらず、日本社会の抱える身近な集団統治(管理)の在り方に敷衍できると考えている。
 最近、榊淳司著「マンション格差」(講談社現代新書)が出版され、徐々にマンション問題が認識されつつあると実感している。そこではマンション管理と資産価値を結びつける要素として、①管理規約、②管理会社、③管理費・修繕積立金,④長期修繕計画を挙げており、羽田が訴えている「管理会社マンション」における管理改革に参考となる記述がある。横浜の二つの杭打ち偽装マンションの問題は社会にマンション管理問題を提起したが、まだその事の本質まで踏み込んで追及されていない。マンション管理も社会問題として、その仕組みが解明され対策が検討され実行されてこそ解決の道が開けるとみている。

1. なぜ今、管理規約改正か――隠された意図を探る
 当マンションの管理規約は分譲開始時(1980年)の管理会社お仕着せの管理規約をマイナーチェンジしながら、1997年~1999年に大改正している。この時丁度、管理員が交代し新しくM管理員が雇用され、(エセ)自主管理体制導入を検討した時期に当たる。組合の管理費・役員選任法・役員報酬規定・専門委細則・組合運営/長期修繕計画委託・管理員委託規定など管理中枢支配の根幹をなす管理規約が改正制定されている。当時も今も、住民に「管理会社マンション」を可能とする規約の骨格ができたという問題意識がどれだけあったであろうか。この改正で肝心の組合会計処理が管理会社と管理会社代理役のM管理員に独占されることとなった。その後、管理運営マニュアルも発行され、問題のM管理員の小口会計処理を補完し、管理組合の会計管理を組み込んだ統治機構を完成させている。専門委が規約を逸脱して実質理事会の上にのさばり、数年ごとに大規模修繕(アルミサッシ交換・2回目大規模修繕(外壁塗装など)・給排水管交換工事など)を実施してきた。工事費用の詳細はいつも総括報告されないまま大工事が繰り返されてきた。だから羽田は過去の組合会計報告を信用せず問題にしてきた。情報を封じ込め密閉会計で帳尻さえ合えば、当マンションでは管理中枢の中でやりたい放題ができる(過去、住民には形骸化した監事の監査と実証性のない総会決算報告で騙されてきたが、誰も文句を言わない不思議さがある)。
 2011年羽田の理事長就任で旧管理中枢(管理会社・コンサルタント・管理員・専門委)の横暴に異を唱えると、理事会を使って羽田を辞任させ(規約にない)、彼らで管理会社直轄管理を復活させて今日に至っている。この間、国交省の標準管理規約の改正もあり、彼らの支配に管理規約違反が目につくようになってきていた。大多数による強大な権力(会議体・管理費・法知識等)を行使して、文句も言わない(言わせない)住民を従えて強引な運営を強いてきた。コンサルタント紹介のマンション管理士に主導作成させた上記回答書を読めば、ここで弁護士の力を借りて管理規約を強化し、黙らぬ羽田をより一層排除しやすい法的締め付けをやろうとの現管理中枢側(管理会社・コンサルタント・旧専門委・理事会の有力者など)の魂胆が見えてくる。自由な社会人としての精神・思考に基づいて、以下に彼らの企図を批判したい。外部との情報接触を極度に嫌がり、マンションを閉空間として自分たちの利権を守ろうとする管理中枢の存在は、インターネットなどを通じて外に開かれ、種々の情報を共有できる社会から見れば、やがては社会から淘汰されるべき有害な時代遅れの支配システムである。

2. 理事会(ともに管理会社)のやり方は正しいか
 理事会は昨期(2015年)からそれまで手を付けなかった管理規約改正に急に力を入れ始めた。羽田は管理規約の重要性から、それを住民本位の規約とするため、住民の意見を採り入れる仕組みのある改正活動に、また、十分な時間を懸けて逐条的に検討してくれと要望してきた。[自分たちの生活は自分たちの意思活動で守る意識を]と願っているからである。しかし、住民本位の組合になることを防ぐため、理事会はリード役に当のマン管士を委託し、理事8名で規約改正専門委員会を設置して進めてきた。彼らは順番クジ引きで選任され、一般住民の意見を汲み上げる仕組みなどなく、重要事はすべてその理事会で審議決議し住民に押し付けてきた。年一度の定期総会も総会資料(管理会社の承認を経た)に基づいてお座なりの理事長説明と僅かの質問で承認される儀式に過ぎなく、住民の意見はいつも封じ込められてきた。その結果、今回の「改正原案」も従来の規約(管理中枢本位)の延長上で既に理事会が承認したものとして公表している。社会の強い風潮として、昨今のマンション住民の無関心が言われるが、それをよいことに管理中枢にある者が自分たちに都合の良い改訂を進めることは許されることではない。以下、今回の改正の主な重要項目について、回答書に見える理事会側の改正案に羽田の意見を対比し見解を述べる。
 下手をすると意見は伺ったが決めるのは理事会として、僅かの修正の後、多数の委任状を盾に臨時総会を開いて議論もなく承認する可能性が濃厚である(過去の重要案件が示している)。改正原案は多くを標準管理規約や関連団体のモデルに則っているとしているが、いざとなれば経験豊富な管理中枢は違反すれすれの(これ以下なら司法機関は動かないという)、[悪意の管理精神]で管理規約を使い対処してくる。例は理事会の羽田刑事告訴の動きである。文書配布で理事会の会計不正・規約違反(会計帳簿の閲覧阻止など)を訴える羽田を区分所有者の共同の利益を損ねる悪人に仕立て上げ、管理中枢の力で裁判(脅しと情報遮断)に訴えようとしている。自分たちの規約違反には目をつぶり、敵対者には平気で規約違反をする。多くの改正意見には「ご理解願います」、「検討します(やらないということ)」、「それは理事会の問題」と逃げる。説明会は理事会側の一方的回答で住民との意見交換などやっていない。

3. 主な規約改正事例への批判
[Qは原案への羽田の提起意見、Aは委員会の回答要旨、Cは羽田のコメント]。
Q 諸細則制度の制定への要望
現状は不十分だから会計処理、広報活動、書類閲覧公開、理事会傍聴、住民要望書、苦情処理委員会、監視委員会等の設置制定を提案する。
A 基本姿勢は現状通りの運営でいきたい。会計処理細則は検討する。掲示板・回覧使用は現状通り。書類公開は既存規約通りで運用。苦情処理委員会は困難。監視委員会は理事会に監事がいるから不要。管理運営マニュアルは廃止する。
C 会計処理はすでに原案があるのになぜか制定を避ける。広報は情報統制して恣意的に運用されているから運用細則が必要。理事会は苦情処理を逃げている。監事は全く機能せず理事会の追認だけ。管理運営マニュアル(改訂が必要)は実例多く分かりやすく、理事会運営への住民の判断基準に有益で継続を。

Q 管理事務所(管理員室)の無償提供を有償にと提案する
A 有償の事例はない。現状のままでよいと考える。
C 無償が当たり前と考えるのは石頭。住民のものとして理事長席を設け、オープンにすれば情報交流の場となり、住民の意思疎通に有益と考える。他に「管理刷新委員会」や住民自由参加の「自由な意見交換会」を設けよ(出された意見は理事会に反映)。現管理規約の1/5賛同でしか集会を開けない条項が住民個人の発意発案の機会を妨げている。

Q 管理組合会議や役員等の在り方への要求
現状の役員選出法:順番クジ引き中心(推薦も含む)から、住民間の自他推薦立候補の住民投票制選挙にする。候補資格制限をできるだけ撤廃する(例えば70歳以上でも健康で意欲あれば立候補可)。選挙の公正保障のため選挙管理委員会監視を実施する。理事長1期1年は短か過ぎる。監事の独立性を保障する条項を入れる。理事会・総会に区分所有者でない管理会社・コンサルタント・管理員の出席は申請許可制とする(審議決議に影響する可能性あり)。
A 監視は監事の業務監査権で対応可。自薦立候補は問題あり、現行の5人賛同他薦ならよい。選出制限、役員の任期は現状通りとする。
C 現状の選出方法では意欲ある役員が出ない。候補選び・抽選方法に疑問の余地あり(なぜか辞めた専門委が連続して役員に就く)。理事会は日頃の住民自治意識喚起の努力と議論で、立候補選挙を実現すべき。改革実行のため理事長は2期継続3期まで可とする。歯止めは住民投票によるリコール制度で対応。監事の独立と権限付与が極めて重要(現状は機能なし)。管理会社・コンサルタント・管理員・大口契約業者は過去の実績に関わらず連続委託年数を制限する(例、5年・10年とか、健全な運営と癒着防止のため)。

Q 専門委員会の在り方(過去の反省に立つ必要あり)[短期の委員会と工事関係委員会]
大規模修繕工事推進の役目を逸脱した組合支配が管理会社マンションに繋がり今に至っている。正常な機能を持つ委員会の在り方を規定する必要がある。具体的に設置時、テーマ名・目的目標・責任者とメンバー名・活動期間・費用予算等を書類で具申し総会の承認を得る。同一人は専門委員1テーマ限りで連続就任不可とする。テーマが終了したら結果を総括し、算定根拠を記した会計報告し、理事会・総会の承認を得る。
A 設置は理事会の承認でよい。任期は現行(1年以内、再任を妨げない)のままでよい。委員会にかかった費用は管理組合が負担する。基本は現行のまま。
C 理事会承認のみでは悪用の恐れあり(メンバー人選や後出しの悪用ができる)。
任期は現行の再任可で大ボスが誕生し、組合を永続支配して管理会社マンション運営を助けた過去がある。かかった費用は全く公開されていない(リベートやコンサルタントとの癒着の疑いもある。それ故、上記の要望提案になる[巨額修繕積立金の一部が食い物にされる素地となっている]。

Q 組合関係書類の住民への閲覧公開
現行規約に則って理事会関係の会議議事録、会計資料、工事関係書類等の公開閲覧を常時可能なシステムとして再構築すること。健全な組合として、管理費を納めている住民の要求に応えるのは当然の義務である。
A 規約に明記されているが、口座通帳は個人情報等もあり監事による監査権で対応したい(個人に見せる例を知らない)。監事の1/5招集権での対応でよいのでは。理事会議事録の閲覧については現行の「必要あると認める場合に限り閲覧させることができる」を外している。
C 組合活動は住民には原則機密秘密であってはならないと考える。理事会は種々の制限条件を付けて住民に自由な閲覧公開をしていない。閲覧には個人情報保護を持ち出したり、誓約書を要求したり、罰則付き細則案を持ち出して制限している。会計帳簿類特に口座通帳は閲覧実行不可の状態にある。今回さらに上記のような規約違反の考えを持ち出してきた[現行規約はあくまで住民個人の閲覧要求への対応の条文であり、会計公開による不正監視機能]。

4. まとめ
 マンション管理不正問題は隠れた社会問題である。それだけに管理規制の規約等は現状では不十分である。今回の当マンションでの管理規約改正の動きの答えは近いうちに出るであろう。見せかけだけの住民参加で形を装い、強大な権力に任せて組合中枢を形成し組合を支配してしまえば、全体主義的「管理会社マンション」ができてしまう。マンション管理の根本精神は「主役は管理費を納めている区分所有者住民であり、管理会社等は委託されそれを補助する立場である」でなければならない。逆に巧妙に条文を強化して異分子の行動を抑え込む方向で進んでいる。しかし、悪意の管理強化はいずれ住民の暮らしを息苦しいものにし、マンション生活全体の崩壊に繋がるだろう。自分たちの利権確保のために、住民の自由を認めない管理会社マンションの管理中枢は組織の刷新か解体が必要である。弱者の立場にある個人の訴えを尊重する、強力かつ公正なワンストップ機能を持つ独立裁定機関の出現を願うのはないものねだりの夢であろうか。(17報)終り

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