マンション生活で知り得た社会問題を考える(19) ――マンション管理で蟻が巨象に踏み潰されないために

 ここまで来てマンション管理の問題が上は国政とも繋がり、十分社会問題たりうると確信するようになった。それほどことは重要な意義を持つ課題である。
 自主管理とは文字通り管理組合をその住民の自由自主意志で運営することだと考える。ところが現住マンションでは似て非なる「似非自主管理」がつい最近まで行われていた。今も管理会社直轄管理と言われるが状況は何ら変わっていない。5年前の羽田の理事長役中断に端を発して元の管理会社直轄の「管理会社マンション」に戻ったに過ぎない。その経緯は当事者である羽田でもその本質を理解するのに数年の時間を要したことを告白する。多分、一般の住民は羽田の文書配布を受けても、意識を持たない限り他人事のごとく受け流しているのではないか。管理中枢からは、折角の平穏無事な(大手N不動産関係という変な優越感)マンション暮らしに、要らんちょっかいを出して資産価値を下げた張本人が羽田だと日頃の情報操作で信じ込まされている。
 しかし、マンションの管理組合の管理体制が及ぼす、住民の日常生活への影響は限りなく大きい。未だに続く理事会(後ろに強大なN管理会社とBコンサルタント社の2社体制の操り人形)とそれに支配された住民連合と、それに抗う個人羽田の紛争は組合内部で見る限り勝負にならない、巨象と蟻の違いである。この蟻(羽田)が踏み潰されずに生き延びているのは、マンションを取り巻く外部社会の良識の助けがあり、その正義を信じて活動を続けているからである。この社会問題がいつかは大きなマグマとなって、正しいと信じる方向に爆発的に噴き出すと密かな希望を持っている。

1. 組合への自主管理導入の動機を考える
 残念ながら、2010年に管理組合の理事になるまで全く組合活動に無関心であったので、その当時の関係資料を殆ど持ち合わせておらず推察するしかない。当時の議事録など閲覧して確かめたいが、罰則付きの閲覧細則(違法)なるものを振りかざされて体よく断られるのがオチである。自分の頭で事実を推察して結論を引き出す方が面白いと考えている。最近、その推察がますます正しいという確信を持つに至った。
 1996年(16期)に初めのK管理員(N社関係の定年退職者)が高齢となってM管理員に交代した。これが自主管理導入の大きな動機となったと考える。M氏が管理会社雇用で管理人となったその10月から2年半をかけて「管理運営業務見直しプロジェクトチーム」を6名で発足させている(このメンバーは羽田には不明、現在の管理中枢グループの一部であろう)。
 もう一つの重要な動機は管理体制の[見せかけの修正]が必要であったと考える。このプロジェクトの課題に管理費目の分析検討が上がっており、それは一部住民組合員から高額な[管理費]*見直しの声が上がっていたのであろう。具体的に数字で検証する,交代前の1996年の管理会社委託料は約1,037 +清掃費約459 =計1,496万円(ともにN社委託)が、5年後の自主管理下で2001年にN社委託料約235 +組合雇用管理員委託料約466=計701万円と外部委託清掃費約235万円を加えても計936万円となり、△560万円(37.4%)と大幅な減額を示していることから、上記費目の管理費計を1,000万円以下にする狙いがあったのであろう。N社直轄管理であまりにも高額になっていた管理費目を下げたという[見せかけの修正]であったと考えられる。その証拠に住民一人当たりが納める[管理費]*は月平均約2万円/戸と据え置きである。M管理人は組合雇用となったが管理会社代理人として会計実務を任され、相場が30~25万円/月の報酬(夫婦住み込み、ハローワーク調べ)に対し38万円+α(水道・光熱費・健診費)の好待遇は誰が提案したのか。肝心の組合会計管理はそのままN社に継続されて実質変わりなく、M管理員の小口会計口座など彼の会計処理自由度が増しただけ不正疑惑は高まったと言える。*[管理費]=管理費+修繕積立金+各種専用利用料

2. 自主管理は巧妙に仕組まれた罠
 この自主管理が意図的に導入され管理会社ビジネスの道具に使われたのは、このプロジェクトが管理運営の何を変えたかを顧みると明白となる[(18)報等参照]。
① 管理人にM氏の採用。彼の履歴は住民には不明。履歴書を要求したが不思議に理事会が拒否した。正体不明の人物に10数年も会計他全ての実務を任せていたことになる。羽田には管理人としての彼の表の顔と、用心棒としての裏の顔を経験している。
② 建築コンサルタントを組合の管理運営の相談役として業務委託している。前K管理人時代にどのようなきっかけで当マンションに入り込んだか不明。この承認によって理事会運営だけでなく、殆ど全ての修繕積立金工事が彼の指定席となった。長期修繕計画の見直し維持も受託し、当マンションの寿命は彼に託されたも同然となった。
③ 既存の管理規約に大幅な改正と重要な条文の追加 (役員選出規定、役員報酬、管理員業務委託、管理費等)がなされ、管理会社に有利な管理規約体系が出来上がった。それに気付いた良識ある多くの住民が退去する事態を招いた原因であろう。
④ 管理員交代前の第1回大規模修繕工事(1994年)を機に、理事長経験者を中心にした有力
者数名からなる専門委員会が形成され、短期交代の理事会よりのさばり始めた。M管理人が管理会社の意向を受けて専門委を常任理事の扱いで優遇し、両者で組合を支配した。
 これらの巧妙なシステムを作り上げて1999年に「エセ自主管理」体制を発足させた。一般住民は理事会や総会の決定を事後承諾させられるだけの「管理会社マンション」とされてしまった。基本的には年一度の総会で管理会社の提案する案件(活動計画・予算案等)が特に反対もなく承認執行される。これが「エセ自主管理」の実態であった。

3. エセ自主管理から再び直轄管理へのまやかし
 エセ自主管理はM前管理人が扇の要の役割を演じた。苦情を申し立てたり、管理方法に文句を言おうものなら、彼が裏で専門委や老人会や自治会に手を回し、声をかけ集団リンチまがいの脅しで黙らせる(用心棒の役割)。それが怖いので物言わぬ住民が出来上がる。N社関係の弁護士などの法務知識を悪用して巧妙にムラ八分や排除をやってのけた。
 エセ自主管理体制12年目の2011年総会で羽田が理事長に承認された。羽田は初めから管理体制を改革しようなど考えもしなかった。次期運営計画を立てるのが副理事長の役目とあったのでメモを作成して理事会に提出した。それがM管理人の気に触れたようで、彼の嫌がらせに現れてきた。理事会一同とか[匿名]を使って、訴訟をちらつかせた資産価値下落補償脅し・N社関係弁護士を利用した退去勧奨・騒音音源調査名目で専門委集団の深夜上がり込み等脅しの数々、総会懇談会等会議での羽田への集中攻撃・集団ボイコット、理事会活動では羽田提案の悉くを否定するだけでなく、多数回の非通知・無言電話、宛名を破った封筒での文書返し、玄関ドア叩きでの羽田誘い出し、議事録等広報の統制等々。羽田は相手が卑怯にも実名を出さず[匿名]で全ての嫌がらせをやってくる時点で、相手が「不正であり勝負あった」と見なすことにしている。いつも自分たちが正しいと思うなら正々堂々と名前を名乗り主張せよと言っている。彼らの言う「プライバシー保護のため」不必要な実名隠しは彼らの悪事の隠れ蓑と考えている。
 2011年7月の羽田の文書配布の始まり(M管理人告発の手紙)はこのエセ自主管理体制改革のきっかけとなったが、如何せん完璧に近い「管理会社マンション」相手では歯が立たなかった。あるまじきM管理人の支配に異を唱え、羽田が8月に理事会に[決別宣言]を出してボイコットしたところで、専門委ボスどもが理事会に乗り出してきて(規約違反)副理事長を理事長代理に就かせて、管理人を管理会社雇用に戻し元のN社直轄管理体制を復活させ,翌年3月に臨時総会を招集して承認させた (その前に2度の辞任勧告書郵送で羽田に辞任を強要し、辞表提出直後にM管理人を逃亡退職させた)。誰も指摘しないが、そのような場合の管理規約は全くなく、N社主導で組合管理中枢の筋書き通りに事を進めた。羽田にはM管理人時代の会計不正疑惑が目について、理事会にいくらそれを訴えてもいまだ無回答を貫いている。N社はM管理人に丸投げしていた組合運営の真相を隠したまま闇に葬り去ろうとしている。次のY新管理人はN社子会社派遣であり実質直轄管理に戻った。旧専門委たちは羽田に修繕工事でのリベート関与を指摘報告されて形だけ退任したが、未だ管理中枢の役目は放棄せず組合の運営に影響を及ぼしている。

4. その後の管理会社直轄管理マンションの現実
 再び直轄管理復活で、以前にも増して当「管理会社マンション」の運営はより悪質的に強化されてきている。管理中枢はN社関係のお抱え弁護士を使って、羽田の経験進化を先回りして封じ込めようとしている。専門委グループは代わりの仲間を理事会役員等に送り込み、理事会・総会・修繕工事などを牛耳って、法に触れない範囲の規約違反の横暴をより巧妙にして悪事を重ねている。実態を伝える羽田の文書配布の結果、総会で羽田の意見に同調した質問が僅か出るようになっただけ前進したか、という程度で今のところ管理中枢の支配が弱まった気配はなく、管理中枢に利する一般住民の沈黙は殆ど変わらない。
 羽田の願いは住民本位の正常な管理組合である。管理会社はその支配力で住民を巻き込み、管理費ビジネスの手段として管理組合を利用し、常に住民から不当な利益を得ようと画策している。彼らに不都合な過去の会計公開の要求は依然無視し続けている。羽田のマンション内外への文書配布が余程N社にダメージを与えると見えて、当時のF理事長(現専門委)は工事中に文書配布差止め請求書を羽田に送り付け、臨時総会を使って羽田への刑事告訴手続きを承認させた(しかし、2年が経った今に至るまで警察からは何の音沙汰もなく、騙し芝居を仕組んだ可能性が大きい)。それで昨年始めに2度にわたる公開質問(①羽田への不当な刑事告訴工作と②組合会計不正疑惑への帳簿閲覧公開阻止)を提出したが無視無回答である。彼らは正面から答えられない事実を抱えているとしか考えられない。
 理事会は半年を掛けた2014年度の給排水管工事が終わった今、羽田封じ込め・排除のために、理不尽な管理規約改正(悪)を集中的に進めている。刑事告訴問題を警察が捜査中として情報をシャットアウトしておいて、管理規約・細則の改正を持ち出して組合会計不正疑惑問題の回避を狙って動いている。マンションという私的密閉空間では、社会の上位にある法律に照らして違反すれすれの条文の制定が許される事態が起ころうとしている。前報にも書いたが、改正を請け負ったマンション管理士は、管理規約に住民の[管理費]*で賄われている「管理組合の会計帳簿は住民の要求により閲覧できる」とあるのに反して監事が見ればよいのだとか、理事会傍聴は住民の権利ではないなど常識外れの回答を通そうとしている。管理会社のために魂まで売るような人間に管理規約を扱わせるのは御免である。まやかしの手段を使ってでも住民全体を間違った方向に導くからである。
 経験からマンション管理問題で素人個人が(司法中心の)公的機関やマスコミに直接的に訴えても、まともに採り上げられる事態にはならないことを知った。社会には未だに組織(企業や組合)が個人の上にある意識が根強い。[企業は強者であり個人は弱者である]、この思考の下で個人が守られる社会制度が根付かない限り、個人はいつも切り捨てられる。労働組合があり労働基準監督署があっても未だ過労死がなくならないのは、制度適用以前の社会の人権思想が未発達状態であることを示している。個人が企業と対等の関係で対抗できないということを前提に、個人を援護する制度が不可欠である。以前にも提案したが、既存の組織に寄りかからず、経験と知識を持ち寄り情報交換共有し、互いに助け合い学習して英知を働かせる一歩から始めようではないか。個々のマンションとして分断されている状態から抜け出して管理会社に勝る住民パワーを作り出そう。蟻が巨象に踏み潰されないために知恵を絞りだす1年にしたい。 [(19)報終り]

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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