マンション生活で知り得た社会問題を考える(23) 「不起訴」は不起訴、「起訴」ではありません

「人間の歴史は、侮辱された人間が勝利する日を辛抱強く待っている」(タゴール)
司法の結果が出たにも関わらず、権力を持つ管理側の大勢の力で「文書配布止めろ」の大合唱。それが数百人規模のマンションで組合が起こした刑事告訴問題の現実である。高邁な社会理論による識者の理屈よりも、現実に軸足を置いた真実の積み重ねにこそ、身近な社会問題の解決の糸口があるだろう。      

1.管理組合総会の実況中継
 昨年の大半を司法の捜査に翻弄され、5月管理組合定期総会を迎えた。検察による年末の「不起訴」判定を受けて、告訴側住民の反応を知りたく、また、判定が下ったにも関わらず、F担当が総会資料に「総会でそれを報告する」とだけ書いて、何ら説明なく5か月過ぎた。彼の考えを直接聞く機会と見て敢えてのこのこと出かけた。過去数回の総会では、懇談会で集団による羽田とっちめを味わわされた。分っていながら過酷な刑事の取り調べよりましと腹を括って席に着いた。総会を利用した「不起訴」報告の設定は、羽田を誘い出す巧みな罠であったようだ。素人個人と見て、法を知り経験と悪知恵に長けた管理側集団(管理会社・コンサル・理事会・OB・弁護士など)の合作であろう。不起訴は不起訴で事実なのに、謝罪なく仲間を使って攻めてくる担当F氏の強気の背後に何があるのだろう。正面には今期理事会幹部、右側に管理会社マネージャーやコンサルタント(組合運営補助委託)、他業者が座っており、左側には新旧理事たち、対面する一般組合員席もほぼ埋まっていた。出席者54(分った顔見知りは20名弱)、委任状・議決権143、計197(全243)で総会成立の報告で始まった。この数字は監事はいるが監視機能に疑問で確かめようがない。「管理規約にないから違反にならない」、この組合によく見られる遵法精神は何とかならないか。 
 羽田が考える今総会の中心議題としては、
・羽田刑事告訴の経過・結果の報告 (臨時総会級の重要議題と思うが)
・過去の組合会計不正疑惑への対処 (見せかけの閲覧で徹底して核心逃れ)
・最近の複数役員の理事会ボイコット問題 (組合崩壊の兆候か)
・次期大規模修繕工事への人的準備対策 (コンサルタント差配体制の強化) 
当理事会は管理業者(実質2社)への依存性が極めて強く、明らかに彼らの意向に沿った運営をやっている。一般住民からの不都合な意見は無視し(例、昨期の管理規約改正)、上意下達の「管理会社マンション」体制を維持し、実質事後承諾の運営である。羽田文書の根本精神、住民の「自主・自由・自立」精神に立つ管理に[管理費]*を納める住民が目覚めたら彼らの支配が吹っ飛び兼ねないからであろう。それが羽田の文書配布を警察や総会まで使って執拗に止めさせようとする彼らの動機であろう。
*[管理費]=管理費+修繕積立金+各種専用使用料=計 当所では約6500万円/年
総会は昨年度の事業活動報告から始まった。報告は上述の羽田関連の議題に絞りたい。全体的に組合運営の根本を問う意見など殆どなく、問題を問題としない、予め用意された話題逸らしの議案承認の場という組立てである。怖いのは巧妙な彼らの手口に気付かず議案に賛成し、議論無くいつの間にか承認されてしまうことである。

2.負け惜しみF専門委の報告
(以下F氏の談)「2014年12月24日臨時総会で羽田親子の刑事告訴を決議した。今日
その後の経緯を理事長あてに報告書として提出するが、[配布せず事務所で閲覧可能とする。羽田家族には閲覧を禁止する]。マンション内外に個人攻撃の怪文書を多数配布され、共同の利益を損ねる行為があった。訴状を地元の警察署に2015年2月17日に提出、次いで5月1日再提出し受理された(但し、発表は翌2016年の総会)。周辺外部の証人3名+Fの4名と(昨2017年4月28日から)羽田親子も事情聴取を受けた。その後、11月に地方検察庁に書類送検され、羽田やFも検事の事情聴取を受けた。12月28日「不起訴」の決定が郵送されてきた。結果は全く不本意であるが、それでこの刑事告訴は終了した。不起訴の理由は問い合わせていない*。自分の力不足の結果であり、私見では、検察官の総合的な事情勘案で起訴にならなかっただけで、羽田に罪ありと思っている。皆が迷惑しており、羽田に賛成する人は少ない。再び怪文書が多く出れば、刑事訴訟か民事訴訟を再考してもよいと考えている。」
*羽田が関連する刑事訴訟法を調べた結果をまとめる。要約すれば、検察からの告知は告訴人(代表専門委F)には不起訴処分を速やかに伝える。公訴事実や不起訴の理由を通知する必要はない。方法は規定なく口頭か書面でよい。告訴人の請求があればその理由を告げなければならない。被疑者(羽田)にはその処分を請求があればそれを告知する。その理由の開示は請求できない。方法は定められていない。  
会場からは、羽田に向かって以下の出席者の発言があった。主なものは、
A.不起訴ということは検事にも嫌疑を立証できなかったということではないか。 
B.不起訴になったからと言って無罪と思うな。皆が迷惑をしており、証拠不十分で不起訴になっただけだ。 
C.これは理事会の問題であり、専門委は理事会の諮問機関にすぎず任せきりは問題である。理事会の対応が見えてこない[他の理事:理事会で協議し総会で発表と決めた]。 
D.配布文書の内容は正しい。しかし、方法が間違っている。文書配布は止めてくれ。 
E. 行為は家宅侵入になる、民事訴訟の対象になる。配布は止めてくれ。 
F.コンサルタント:羽田の文書により3マンションで契約を切られた。羽田が文書配布を止めると約束すれば、辞めてもよいが。[羽田:配布を止めると約束はできない。] 
他に、過去の理事長の中で途中で辞めたのは羽田だけ、自分の意志で辞めたのか。隣の階段で勝手にアンケートした、独裁者だ。草むしりに出ていないだろう。[羽田:何の意図で]

3.羽田の主張
A.刑事告訴結果について
 この刑事告訴への動きの根源は7年前の羽田の組合理事長就任にある(過去の本シリーズ報告を参照下さい)。その時に組合統治体制と運営に問題がありと気付き、内部告発的に調査し、羽田が最適と考えて内外に文書配布を実行した。その過程で羽田が辞め、管理人(管理会社代理人)が退き、13年続いたエセ自主管理から管理会社直轄体制が復活した。そして多数の専門委が理由も言わず役を退いた。しばらくしてF氏(過去、理事長・専門委として億円単位の複数の修繕工事を主導)が役員に浮上してきて、この刑事告訴を主導した。訴状で[羽田の文書配布は怪文書、名誉棄損、皆が迷惑し、共同生活の利益を損なう行為]と決めつけ、「文書配布差止め」を要求して警察捜査を進めた。それに対して、羽田は捜査の段階で組合の管理運営に問題があり、その結果として過去の会計不正疑惑がある、と体制批判と(管理規約にある)会計の閲覧公開を求めて文書配布を行ってきたと主張した。F氏は文書配布を悪と決めつけ、訴状に羽田の「過去の要望書(2015年3月2日配布)」を提出していた。しかし、中身は羽田の言う会計不正疑惑項目ばかり(前報)であり、羽田は刑事の求めに応じてその根拠書類を含む反論資料を提出し、調書が作成されたが、警察は不正会計疑惑には突っ込まなかった(訴状に会計疑惑がないからか?)。刑事告訴とは彼らの意図に関わらず、結果が検察の判断に委ねられる(羽田の起訴・有罪までを視野に入れた)訴えのはずである。法的により高度な検察段階で「不起訴」判断がなされたことは事実である。悔しい心情を述べるのは自由であるが、羽田も訴状の勝手な決めつけに全く納得できないでいる。初めのF氏と組んだ(有罪・逮捕の)強権的な警察の取り調べの段階で強い恐怖を感じながらも、信念に基づき「納得のいかない理由で文書配布は止めない」と回答した。その後も8月に2度も警察を通じて告訴側から「文書配布を止めるなら告訴を取り下げる」を迫られたが辛うじて断って切り抜けた。文書配布がもたらす内外への影響が許せないのであろう。それがF氏を中心とした総会会場での検察判定への不服大合唱の統制演出であろう。羽田は納得できる理由で合意すれば文書配布を止めてもよいと言っている。不合理な管理がなされる限り、社会人としての自由な言論活動は公正な社会の実現に必要と思っている。

B.会計不正疑惑について
今回もまた総会前に一方的に組合ニュースで「会計帳簿閲覧を実施する」と掲示した。最近の羽田の要求にいつもの「見せると言ったのに、見に来ない奴が悪い」のアリバイ工作である。過去6年前の簡易裁判所での調停で「見せる。方法はお互いが話し合って実施する」と結論同意したのだが(調停員は提案した。羽田から取り下げたとウソ)、その後の理事会はそれまでの閲覧要求無視の態度から、あの手この手(罰則・制限付き閲覧細則案の提出審議や勝手に委員会で保管文書リストを改廃など)で閲覧実施を阻止する手に変えてきた。この組合は不都合ごとは規約違反ですり抜け、ウソも使う狡猾さを見せる。一方的閲覧公開の報に応じて実行したら対象書類が無くても「閲覧を実行したが、不正はなかった」とされかねず、過去の不信感からそのまま応じる訳にいかない。[管理費]*を納めている住民の権利として会計帳簿を確かめたい(管理規約71条)と要求しているが実現しない。 
 [羽田の提案]として
1) 会計帳簿閲覧には双方で文書を交わして、お互いが納得合意したうえで閲覧を実施
(すでに提案したが無視された)
2) 費用はかかるが(裁判より少ない)、公平公正な公認会計士による過去の会計監査実施
3) 前述の羽田の「要望書」に挙げた会計疑惑項目について、管理側が有する関係資料(実物)をもって反論説明する。(例、総会資料での役員報酬の矛盾、利息不記載、大規模修繕工事費用の明細、内科診療所開設と組合の関わりなど)
結果はきちんと公表する。

C.理事会役員の欠席多数問題
F氏は捜査時に刑事の目の前で、「羽田の文書配布の影響で理事会役員の成り手に支障が出ている」と文書配布の有害性を訴えた。理事会内部の情報は5年前にF氏が羽田の理事会傍聴・資料提供を禁止しており(個人攻撃に使うからと、組合員の羽田に適用)。回覧される中身の薄い議事録しかなく、情報難民の状況に置かれている。その乏しい情報でも羽田の頭で考察すると、彼らが隠している不都合ごとが見えてくる。
確かに2016年度副理事長(次年度の理事長候補)が理事会大半を欠席し、年度末には引っ越したため補欠で補っているが、他の理事もかなり連続欠席の現象が現れていた。
次2017年度もまた副理事長が全欠席を続け、他にも多数理事の欠席が増えていた(半数欠席もある)。理事会が当の副理事長就任時に文書で問い合わせたが回答がなく、内部処理で副会計理事を理事長にし、7月に当の副理事長に退任要請が出たが、彼の退任理由を認めず引き続き副理事長に留任させ、次の総会を機に彼を退けた。問題は ①なぜ理事会が彼の退任理由を認めず隠すのか、本人の意思に反してまで役員をやらねばならないのか。また、②なぜ近時多くの役員・理事の理事会欠席があるのか。その件については議事録や総会資料は全く触れていない。羽田は管理組合の存続に関わる重要問題と捉えているが、理由を明かさないで[羽田の文書配布のせい]と決めつけ、議論も避けるやり方は真の解決にならない。
羽田は順番くじ引きを主とした現行の役員選出方法に問題ありと訴え続けてきたが、無視されている。選挙方法の改善は現状では遠い道のりと思われるが、管理組合の将来に関わる、組合員全体で考えるべき重要課題であると思っている。真面目に提案する組合住民を刑事告訴に訴えて排除するやり方が影を落としていないだろうか。管理組合の崩壊の兆しは長年の強権的管理組合体制の綻びが現れてきたと考えるべきである。管理業者が主役で一般住民が物言えぬ管理の結果、上意下達と事後承諾ばかりの当マンションに魅力があるはずがない。

D.次期大規模修繕工事の行方
2年後に大規模修繕工事が予定されている。理事会弱体化の中で20数年続くコンサルタント差配の大規模工事の実行が目論まれているようだ。当のコンサルタントはエセ自主管理体制導入時(1999年前頃)に組合運営補佐の役目を請負い、長期修繕計画の見直しを全面的に任されるようになり、第二管理会社の地位を占めている。現状の関係専門委がいない理事会の状況では調査・計画・設計・施工監理の公正な工事手続きが難しいと思われる。当時の専門委有力者は居住しているから、公募形式を取りながら、管理側の意向を受けて彼らが復活してくる可能性が大きいと睨んでいる。工事資金計画の見直しも見込み進んでいる。もうそろそろ次世代への「建て替え」への準備も現実になりつつある。これも彼らにとっては復活へのグッドチャンスであろう。
発注元の理事会を表に立てて工事を差配できれば、後は業界リベートの世界であり組合会計の範疇を逃れるから、実質余計な高額工事費を負わされるのは一般住民である。素人住民には工事関係の知識は乏しく、それを見破る力を持ち合わせていない。できる限り力を集め、インターネットを活用し、経験者に耳を傾け、外部の相談機関を活用するだけのオーソドックスな努力が少しでも正しい解に近づく道であろう。監視機能を作ること。超長期契約継続の管理会社やコンサルタントとの契約は、業者と管理組合幹部が癒着状態を生み、マインドコントロールされている意識もない残念な状況を生むと考えるのが、当り前との意識を持ってもらいたい。一般住民の意見も聴かず、実質住民の代表で無い理事会が、当管理組合の管理業者2社との契約継続を問題ないと総会前に早々と決議し議論がないことを問題視しなければならない。住民が賢くならねばならない。

4.まとめ
羽田への刑事告訴に検察司法の「不起訴」判定が出たにも関わらず、今総会では「管理会社マンション」体制の下で住民を使っての「迷惑な文書配布を止めろ」の合唱である。主導したF氏の羽田非難の「怪文書、名誉棄損、迷惑、共同の利益に反する」の訴状は十分反論する余地のあるものである。従って、彼らの念願である執拗な「文書配布禁止」作戦捜査の結果は「不起訴」が当然と思っている。「正しいことは正しい」という信念を貫き、この管理組合の過去の会計不正疑惑が住民の力で解明されるまで言論活動は止めないと考えている。総会の場では腹を括って断片的ではあるが予定の意見は述べたつもりである(上述の主張の中に入れてある)。「不起訴」は「起訴」ではない。自分たちに都合のよい理由付けで、反省・謝罪なく突き進むなら、この管理組合に未来の展望は拓けないであろう。羽田はやっと組合に綻びの兆しを見ている。このマンション管理組合の現実課題に個人として向き合うことによって、世の中に社会問題が山とあることに目覚めさせてもらったのは最大の収穫である。支えていただいた方々にお礼申し上げる。
                           [第(23)報終り]

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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