ミャンマー、著名な活動家が警鐘 NUG(国民統一政府)には人民革命を勝利に導くために必要な指導力が欠けている、手遅れになる前に行動を!

<はじめに>

 2021年2月1日のクーデタの直後、ミャンマー全土は凍り付いたように沈黙が支配した。民主的な政治指導者の多くが囚われ、町々にはためらいが支配していた。しかし恐怖に金縛りになっていたのではない、誰かが鬨(とき)の声を上げるのを待っていたのだ。その声は、クーデタから3日後、ミャンマー第二の都市・古都マンダレーから上がった。医学博士のタイザールサンなる若者が、すぐさま決起せよと呼びかけたのだ。そして呼びかけに応え、抵抗運動は燎原の火の如くまたたく間に全土に広がった。

 それから丸4年、医者から民主化活動家に転じた35歳のタイザールサン博士は、突如、YouTubeに投稿を行なって、抵抗運動の自己刷新を訴えた。2年ほど前から、NUGのリーダーシップの弱さが指摘されており、内部改革の必要性は共有されていた。昨年、NUGのドゥワラシラ総裁は改革の必要性を認め、改革を約束してはいたのであるが、実際には遅々として進んではいなかった。その原因のひとつは、非暴力抵抗運動で30年間進んできた民主化運動の指導層が、武装闘争への転換についていけていないことにある。政治闘争(民主化)と軍事闘争とを理論的実際的に統一して指導できる人材が不在といってもいいのであろう。また抵抗勢力の支配地域における行政管理の不具合も指摘されている。厳しい武装闘争を闘い抜くためには、ルーズな平和的組織とちがって、ある種、鉄の規律――たとえば、八路軍の「三大規律八項注意」――が不可欠である。そのことと、人権や民主主義を重視する規範意識とはすぐにはなかなか折り合えないのかもしれない。さらに重要なことであるが、NUGは、ビルマ族の諸武装組織を大部隊に編成して統一的な指揮系統を構築したり、親NUGの少数民族武装勢力との軍事的政治的連携を進めることにもうまくいっていない。これでは、中国の物心両面での全面支援を得て力を盛り返してきた軍事政権に勝つことはおぼつかない。その一方、抵抗勢力は、トランプによる人道支援や報道機関(VOA,RFA)への財政支出打ち切りで甚大な被害を蒙っている――ミャンマー国民の耳や目となってきたのは、自前のポータルサイトのほか、BBCやVOA,RFAなどの英米系メディアだったのだ。トランプの措置にミンアウンフライは欣喜雀躍、トランプに感謝の意を表した!

しかし本年12月の総選挙に向け、雨季明けの軍事的政治的大攻勢のためにも、タイザールサン博士の問題提起に応え、抵抗勢力はしっかりと準備していってほしいと熱く願うところである。

軍事政権の最大の標的のひとり、タイザールサン医学博士。2021年、マンダレーで
博士は軍事政権への闘争を呼びかけ、運動を全国民的決起へと加速させた。 イラワジ

<インタビュー>

 ▼どうしてNUGには改革が必要だとおっしゃるのですか?

――我々の人民革命は、5年目に入りました。この間ずっと、一般の人々は、革命政府であり、運動の前衛であるNUG(統一政府)の実績と能力にいらいらしたものを感じていました。こうした批判は、今突然出てきたものではありません。この2,3年、我々は折りにふれて我々の懸念を表明し、建設的な提案もし、NUGの高官に直接的なフィードバックを提供もしました。その高官には公私の会合で最高位の人物も含まれていました。

 我々の最終目的は、NUGがより効果的に働き、より強いリーダーシップを発揮するよう後押して、革命がより大きな力を蓄えるよう常に力添えすることです。

 ▼どうしてですか?

――我々の人民革命の成功のために必要な資源を動員する能力と機会は、結局のところ統一政府という革命政府の傍らにあるからです。だからこそ我々は革命についての建設的な批判を行なう際は、まずはNUGを相手にするのです。

▼NUGはどのような変革をするべきだとお考えですか?

――私の考えでは、任務についている諸個人と実行されつつある諸政策は、手遅れになる前に調整と改善を必要としています。

 ▼あなたはメッセージの中で、3Pとして知られている人民防衛隊、人民防衛機構、人民治安部隊について懸念を表明しておられます。

――革命から5年が過ぎようとしています。我々は現地で革命組織の何らかのふるまいや声明や行動を目にし始めています。現地というのは、郡区であり村であり地区であり、そこでの人民防衛隊、人民防衛機構、人民治安部隊、人民防衛大隊が、一般の人々の支持を損ないつつあるのではないかということです。

 我々はつねに 行動規範の重要性を強調してきました。人民防衛隊のメンバーは、自らの軍事的行動規範を遵守しなければなりません。行政機関も自らの行動規範や規制を遵守しなければなりません。

 同様に、財政業務に責任を負う人々は、関連の政策や手続きに従わなければなりません。もしそうでなければ、一般の人々は、革命組織や革命家を自称する人々への信頼を失い始めるでしょう。もし信頼が揺らげば、我々の革命は弱体化し始めるでしょう。ミンアウンフライン軍事政権に対する我々の第一の優位性は、人民の信頼であり、支持であり、積極的な参加です。それらを我々が失なったり、弱まったりしたならば、それは解体の始まりでしょう。それだからこそ、革命的な観点から、我々は人民から切り離されてはならなのです。人民の支持は堅固でなければならず、この運動に自分たちが全面的に関与していると感じなければなりません。軍事政権は、人民を受動的な傍観者に変えようとしているのです。 もしわれわれが人民と連携できなければ、彼らは我々の側にいる理由はなくなります。

 NUGは、さまざまなレベルでのその武装部隊と行政機関に対して責任を追及しなければならません。ベルを鳴らして、NUGが武装部隊と行政機関におけるという二つのCOCs―一連の命令と行動規範――を効果的に執行するもうその時期が来たと言いたい。

▼抵抗勢力が支配する地域で、NUGはどのように資源を分配すべきと思いますか?

――今日、NUGはある程度支配地域を確保し、この地域から天然資源や人々から税を徴収しています。NUG政府は、革命のために最も効果的で人の役に立つ方法でこれらの歳入を管理するのは、非常に重要です。私の理解する範囲では、郡区や地域レベルにおいて、また区や村においてさえ現地の権威筋が、財政資源についてかなりの権限を有しています。彼らは予算の大部分を管理しています。ところが

これらの資金は、国全体の観点から考える必要のある連邦政府という中央レベルにはほとんど届いていません。私がここで強調したいことは、資金の多くは、草の根レベルで散財されているということです。そして国家的レベルで革命を推進するために、資金はその可能性を十分に発揮して活用されていないのです。NUGは検証し、必要であればその政策を変更しなければなりません。

 結局のところ、政策は人民によってつくられるものであり、それらは革命の必要に一致しなければなりません。同時にもし政策よりも人に問題があるのであれば、 それにもまた対処しなければならない。倫理や規則が侵されるのであれば、その個人の行動の責任を追及しなければなりません。

 革命期においては、革命がすべてに優先されるべきです。

 ▼行政機関に対して、どのようなご提案がありますか?

――統治に責任ある公的な行政機関は、人民と一体となって機能すべきですし、行動の関連規範を厳格に守るべきです。

▼なぜでしょう?

――なぜならば、人々は日常生活において大臣や大統領や首相と接触するわけではないからです。もし地域にいる革命勢力が、正しいふるまいをしなければ、一般の人はそれをNUGの欠陥と受けとめるでしょう。NUGや革命勢力に対し、否定的な見方をするでしょう。だからこそ、地域の統治は、決定的に重大なのです。地元で人民の最も身近にいる組織と個人は、重大な役割を果たすのです。我々はみな協働して、行動規範に従い正しく実行していると確信をあたえなければなりません。

▼革命を指導し続けるという点で、NUGの能力をどう評価しますか?

――今日、NUGが結成された2021年の時点とは、状況は異なっています。あの当時は、軍の正統性を打破することが、第一の課題でした。我々は、正統性(正当性)をめぐる闘いに身を投じていたのです。

  軍部は残忍な暴力により不法に権力を奪い取り、我々はそれを受け入れることを拒否しました。そして2020年の選挙で選ばれた国会議員、主要な少数民族のリーダー、名のあるインテリ、不服従運動(CDM)のリーダー、活動家、市民社会のメンバーたちを糾合したのです。この広範で包括的な参加や強力な公的な支持、正当な権限を得て、我々はNUG(国民統一政府)を結成したのです。

  当時の状況に鑑みて、これは正しい行動だったと思います。我々は正統性(正当性)をかけて軍事政権と戦わなければなりませんでした。しかし革命はその時から進化しました。5年経過した今、正統性(正当性)だけでは十分ではありません。今問題なのは、真の能力、統治し実行し効果的に指導する能力です。

 我々は今全面戦争に突入しています。この変化が意味するのは、軍事的指導力や作戦能力が以前よりもっと重要になっているということです。

 NUGは現在領地を支配しており、それには責任が伴います。NUGは行政機構を管理しなければならないだけではなく、教育やヘルスケアなどの公共サービス、安全や社会福祉も提供しなけれななりません。統治にはまた財政運営が伴います。・・・これらの属性は、現在革命政府にとっては死活的に重要なのです。もちろん、正統性(正当性)と大衆的支持は、依然として重要ではあります。私の思うところ、NUGは人民の支持を依然として享受しているが、しかし5年前ほどではないのです。かの正統性(正当性)は、人民の支持に根差すものです。しかしその正統性(正当性)において、成果や実効性が問題という段になると、欠点が多く現れるのです。だからこそ私は、行政能力、軍事的能力、財政運営、公共サービスを改善することが、NUGにとって重要であると考えるのです。

▼NUG以外に、革命の指導に責任の持てるどんなグループがありますか?
――NUGだけでは、この革命の勝利はおぼつかないでしょう。主要な少数民族勢力も、勝利に責任があります。国民統一諮問評議会(NUCC)―革命の最中にあって連邦民主主義憲章の礎を築いた組織―は、決定的に重要であり、それもまた重要な役割を果たします。同様に、国民によって選挙で選ばれた国会議員たち―人民代表も院と民族院―代表する委員会(CRPH)―も、決定的な役割を果たしますし、国民民主連盟(NLD)もそうでしょう。これらすべての組織は、可能な限り速やかに決定的に革命を成功させる

責任を負っています。今こそ、それらの組織は自分たちの責任を全面的に引き受けなければなりません。我々の革命は5年目に入りました。諸組織間のより大きな統一と協力が必要なのです。

▼NUGにはどのような改革が必要だと思われますか?

――そのリーダーシップを強化するために、NUGは人と政策の面からみて必要な変化を遂げるべきです。国民統一諮問評議会(NUCC)少数民族武装組織(EAO/ERO)、人民議会代表委員会(CRPH)、NLDらは、彼らの間でより大きな調整を行ない、革命とより結合すべく試みるべきである。

 試みるべきは、NUGをもっと包括的な革命のフロントに格上げすることである。もしNUGと少数民族武装組織とがより効果的に実績を上げ、より緊密に提携し努力すれば、このことは達成できるのである。・・・

▼NUGが自己改革に踏み出せないのはなぜだとお考えでしょうか?

――意義のある改革をNUGがするにあたって障害となる要因が多くあるでしょう。最初の問題は、改革の意志がどれほど本物で、どれほど断固としているのかということである。しかしその意志があったとしても、いかなる内的な課題と外的な制約に直面しているのか、という別の問題は残っている。それら問題は彼らだけが十分に答えうるものである。革命政府というかたちで仕えるのは、容易な仕事ではないことは分かっている。しかしこれは人民革命であり、その運命は国民全体の未来と絡み合っているのである。だから革命のために、NUGは怖れることなく、偏ることなく大胆で決定的で原則的な手段を講じなければならないのです。   

  〈記事出典コード〉サイトちきゅう座  https://chikyuza.net/
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