メモ:2023年統一地方選挙(前半戦)の結果について

Ⅰ 日本維新の会の躍進をどう見るか

1 維新の躍進

(1)奈良県知事の獲得/大阪・兵庫・奈良の3府県の知事の掌握

(2)大阪府知事と大阪市長のダブル選挙の勝利、4期連続。

*大阪市議会(81議席)の過半数を初めて超える46議席を獲得(前回39議席)/自民11(同16)、公明16(同16)、共産2(同4)無所属4(同3)

(4)全国18道府県で県議124名(前回67、選挙前57、16→69名プラス大阪維新55)が当選/ほぼ倍増。北海道、神奈川(6)、千葉、埼玉、栃木、滋賀(3)、徳島、香川、愛媛、福岡(3)、熊本の13道県で初議席

*奈良県議選では、当選者3→14名と大躍進(自民党は23→17名と後退)

*大阪府議選(79議席)では過半数を大きく超える55議席(前回46)を獲得/自民7(前回16)、公明14(同15)、立憲1(同1)、共産1(同2)

(5)政令市議選で136名を獲得(前回73)

 

2 維新への支持の要因は何か

(1)地域の衰退・没落の危機感を新たな「成長・拡大」への幻想に誘導(地盤沈下する関西5府県をはじめ、人口減少が進む四国3県、栃木、大分、熊本など)。

(2)「成長・拡大」の内実

*行政改革(公務員削減)・「身を切る改革」(議員の定数と歳費の削減)、規制緩和=公共サービスの削減(公立高校への支出削減と塾通いへの補助金)。

*大阪万博(2025年)、カジノ誘致など巨大開発/朝日の世論調査では、カジノ誘致に反対が43%:賛成が37%(府民)、反対が47%:賛成37%(大阪市民)と、反対が多数を占めている。しかし、カジノ誘致反対の人は大阪市長選では反対派の候補に投票すると答えた人が多かったが、知事選では吉村に投票するという人が多かった(朝日4月3日)。

*新産業の創出・誘致といったビジョンは欠落(‟規制緩和による成長”論の限界)

(3)ネオリベラリズムは、日本では終わらないのか

*ネオリべ(減税、緊縮財政、民営化)の流れも期待も、世界的には終わった。しかし、日本では、租税抵抗感の異常な強さによってネオリベ改革(減税と行政改革)への支持や幻想が続いている。減税ポピュリズムは、左派ポピュリズム(れいわ)とも相互にささえあっている。

*‟増税による公共サービスの抜本的拡大”を明確に主張する政治勢力の不在は、ネオリベ改革派をのさばらせている。

*なお、右翼ポピュリズムの参政党は県議選で3議席増の4議席を獲得(青森、石川、福井、熊本)。政令市議選で3議席(福岡1、熊本2)を獲得。

(4)ネオリベ改革を掲げたミュニシパリズムの実践

*地域から自治体の首長を獲得し、「改革」実績をモデルにしてその首長を政党の代表にしながら支持と勢力を拡大していく戦略/ヨーロッパの緑がとった下からの改革戦略=ミュニシパリズムの採用

*1960年代後半から1970年代前半にかけて、社共両党が反公害や公共サービス充実要求の市民運動・住民運動を基盤に革新自治体を全国で誕生させ、自民党を追い詰めた歴史的経験を想起させる。

*地域に根を下ろせない立憲民主党とは対照的。

 

(4)新しい政治的リーダーの登場/世代交代に成功

*維新の吉村府知事(47歳)、横山大阪市長(41歳)/松井代表からのイメージ・チェンジに成功。ただし、女性のリーダー不在で、男性優位のイメージ

*公明党の山口代表、共産党の志位委員長/世代交代ができない古い男性指導者の政党を象徴

*自民党は小泉や河野が表に出ていない。

*立憲は辻本の影が薄い

*山本太郎は、左派・リベラルの中心に座ろうとしない。

 

Ⅱ 政治の構図はどう変わるか

1 低投票率がさらに低下

(1)9知事選:46.78%(前回51.76%)

(2)41道府県議選:41.85%(同44.02%)

(3)6政令市長選:46.61%(同50.86%)

(4)17政令市議選:41.77%(同43.28%)

 

2 自公は現状維持

(1)自民は、県議選で3減にとどめて1153議席を確保。政令市議選で35減であったが292議席を確保。

(2)公明は、県議選で3増の169議席を確保。政令市議選で∓0で171議席を確保。

 

3 立憲は微減

(1)県議選では、見かけ上は前回の118から185議席に伸ばした。しかし、118は国民の多くが合流する前の議席で、改選前は200だった(日経4月11日)から、やや減らした。とりあえず、野党第1党を確保。

(2)政令市議選では、前回の99から112議席に伸ばしたが、選挙直前の117議席から僅かに減らした。

(3)国民は、県議選では前回の83議席から52議席減らして31議席になったが、改選前は34であったから、3議席減にとどまった。

 

4 共産党は大敗

(1)同府県議選で24議席減の75議席(プラス推薦3)、政令市議選で22議席減の9議席に大きく後退/新潟・福井・静岡・福岡・熊本で議席ゼロに。

*象徴的には、京都府議選で3議席減の9議席に、京都市議選で4議席減の14議席に

(2)社民は、県議選では3議席に落ち込み、前回から19議席減、改選前からも12議席減らした。政令市議選では±ゼロで4議席を確保。

(3)れいわは、県議選では2名立候補で当選ゼロ、政令市議選で6名立候補で当選ゼロ。立候補者の少なさもあって、まったく存在感を発揮できなかった。

 

5 「3:2:1」構図の変化

(1)‟保守3割:リベラル2割:ネオリベ改革1割”の政治的構図(2010年代に定着)は、維新の伸長と左派・リベラルの衰退(とくに共産党の衰退)によって、‟保守3割:リベラル1.5割、ネオリベ改革派1.5割”に移りつつある。

(2)左派・リベラルが、自民・公明と互角に対抗できるだけの力を失いつつある

*北海道知事選で3倍以上の大差で敗北/鈴木(現、自・公・大地)169万VS池田(立・共・ネット)48万票

*大分知事選では、佐藤(新、自・公)27万VS安達(新、無、19年参院選で野党共闘の支援で当選)20万

 

6 小さな希望の芽――市民派・グリーン派の健闘

(1)岡山県議選(岡山市北区・加賀郡区、定数8)で、無所属市民派(みどり岡山)の大塚愛(現)が14,619票を獲得して、トップ当選。岡山市議選(岡山市北区、定数20)で、同じく鬼木のぞみが5,112票を獲得し、2位当選。大塚は、投票率が下がったなかで前回から2,200票増やした。

(2)横浜市議選(港北区、定数8)では、無所属の大野トモイ(現)が9,691票を獲得し、8位で当選した。大野は、総支部長の中谷一馬によるマタハラのために立憲の公認を得られず無所属で立候補したが、無党派市民の支持を集めることができた(立憲の公認2人は22,762票を獲得して当選したが、これは22年参院選比例での得票とほぼ同じであったから、大野は立憲支持者以外の広い層から支持を得たと推測される)。

(3)新潟市議選(西区、定数10)では、緑の党の中山均(現)が3,966票を獲得し、6位で当選した。

 

[補足]

神奈川の知事選・県議選・政令市議選

1 知事選/投票率:40.35%(前回より0.07%アップ)

*黒岩(無、現):1,933,753 得票率67.60%     前回:2,251,289   76.28%

*岸 (無、新): 651,473     22.77%         700,091 23.72%

 

2 県議選

自民48(前回47)、公明8(8)、維新6(0)、立憲26(23)、国民0(5)、共産2(5)

ネット1(1)、無所属14(16)

 

3 政令市議選

(1)横浜市議選(定数86)

自民34(前回33)、公明15(16)、維新8(0)、立憲15(16)、国民3(2)、

共産5(9)、ネット0(1)、れいわ0(0)、社民0(0)、無所属6(9)

 

(2)川崎市議選(定数60)

自民17(前回19)、公明11(11)、維新7(0)、立憲12(8)、国民1(2)、

共産8(11)、ネット0(1)、無所属4(8)

 

(3)相模原市議選(定数46)

自民12(前回15)、公明8(8)、維新4(0)、立憲8(6)、国民0(4)、

共産2(4)、社民0(1)、ネット0(0)、地域政党さがみはら2,無所属10(8)

                         2023年4月15日

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion12971:230419〕