ユンギャン河合隼雄氏の限界

作家横田喬氏の『私が会った忘れ得ぬ人々(5) 河合隼雄さん ――人間の心の中の自然を守れ』(2019年 1月 30日カルチャー)を拝読した。(ちきゅう座)

ユンギャン河合隼雄の経歴が良く分かった。横田氏にはじめに感謝申し上げたい。良く分からないまま『母性社会日本の病理』を読んだことがある。またこれまた良く分からなかったのだが,大佛次郎賞を受けた本がある。なぜアドラ-でなかったのかは良く分からないが,小生の知り合いはアドラ-心理学を勉強した後,英語塾などを開き多くの小中学生を相手に指導してきている。

ところで河合氏は文化庁長官になってから間違った。京都の小学校で授業をして道徳本らしきものを作成したのだが,これが非公開の授業だということで教育関係者から批判を受けた。学校では公開授業は当たり前だそうだ。PTAに道案内や昼食用のお汁を配膳させたりして公開授業を盛り立てた学校もあったという。おそらく現在もあるのだろうけれど,彼の考えが道徳教育の中に反映しているのだろう。しかし彼の道徳心は,日本会議と密接に関係する教育再生会議の道徳観に共通するだろう。例えば今学校で孫娘たちが受けている「江戸のしぐさ」などはデタラメである。考証に耐えない。

作家の野坂昭如氏はTVコマ-シャルで「ソクラテスもプラトンもみんな悩んで大きくなった」と唱っていた。その意味するところは何であったのであろうか。

若者の自殺が増えている原因はたくさんあるが,主たる原因は貧困と貧困による倫理観の未熟であろう。日本のユング派心理学が貧困を解決できない以上,現代の学校教育には有効ではないことを示している。

日本の国会に嘘が充満し,政治が貧困を退治するのでなく,生み出している状況においてもし宗教や心理学が何もできないとすれば,それらは一種の麻薬に過ぎない。

例えばボルトン補佐官の「コロンビアへ5,000人の兵士派遣」という記事(rt.com 1.30.2019)をみれば,コロンビアの原住民を皆殺しにしたスペイン時代を思い出す。これらの兵士がべネスエラに襲い掛かれば侵略戦争が始まる。それでなくても物資が不足しているこの国がさらに貧困状態に置かれる状況は目に見えているが,心理学や宗教がこれを救うことはできない。ますます政治難民が発生するだろう。そのときロ-マ・カトリック教会は何らかの「声明」を出すだろう。しかしユンギャン(ユング派)もアドリアン(アドラ-派)も声明を出さない。フロイディアンはもっとだめだ。戦争は起こるものだとしているからである(軍隊は敵を人間未満(以下)だと教える。そうでなければ人は殺せない。何の恨みもない人を殺すためには相当な倫理観の,道徳観の崩壊が必要である。上官は部下に相手を人間でないと徹底的に叩き込む)。ユンギャン河合隼雄氏は立派な人であろう。しかし彼を悪用する政治が悪いのかもしれない。