ムハンマド諷刺画を掲載したパリの新聞社「シャルリエブド」襲撃事件がヨーロッパを震撼させている。しかしテロリストの武器 は誰が提供したのか?リビアで、イラクで、シリアで、反政府テロリスト集団に武器と資金と訓練を提供してきたのは誰か?フランス、 NATO,ヨーロッパ、米国ではなかったのか?テロと戦争を招いているのは誰か?言論表現の自由だけで論じるのは片手落ちである。
さらに、「9・11以降世界がパレスチナ化した」と言われてきた。テロと戦争にわれわれ市民が巻き込まれる時代になった。パ リの新聞社襲撃事件だけでなく、度重なるイスラエルのガザ襲撃、リビア、イラク、シリアの主権国家解体劇で犠牲になる何百万人ものイス ラーム民衆の難民化。そこではパリのようなテロが日常茶飯に行われている。この何十年ものあいだ、パレスチナ民衆は日常的にイスラエルの 国家テロに晒され放置されている。こうしたイスラーム民衆の非人間的な処遇とムハンマドを貶めるようなイスラモフォビアとが、西洋世界で はどのように共存しているのだろうか。
テロと戦争はじつは1948年から「継続する戦争」の現われだ。イス ラエルを存続、管理する米欧の覇権戦争がじつはずっと前から継続中なのだ。テロ国家イスラエルと急接近し、TPP,秘密保護法、集団的自 衛権を準備し、米-イスラエル主導の「継続する戦争」に自ら参入しようとする日本 は、明らかにテロと戦争を生み出す側に立とうとしている。
ここに紹介するのは、世銀に30年も勤めたドイツ系のエコノミスト、 地政学アナリストのペーター・ケーニッヒ氏によるヨーロッパへの警告である。表題の論考は12月30日に投稿されたものだが、12月2日には欧州版TTIPをめぐって『「米国植民地」になるEU?TTIPはヨーロッパの主 権を撤廃するだろう』というきびしい論考を発しており、この2篇が2014年末の彼のヨーロッパへの警告文となっている。ここでは拙訳の前者だけを紹介する が、外交戦争はもとより、通貨戦争、貿易戦争、軍備覇権戦争等々の地政学上の戦線に、日本のTPP,秘密保護法、集団的自衛権、そして沖 縄の民意無視とが重ね合っている。「ヨーロッパよ、目を覚ませ!」という呼びかけが、そのまま「日本人よ、目を覚ませ!」と聞こえてく る。(2015年1月9日記)
【参考】The EU to Become a “U.S. Colony”? The Transatlantic Trade and Investment Partnership (TTIP) would Abolish Europe’s Sovereignty. (December 02, 2014)
Europe Beware! – World War III Could Destroy Europe for the Third Time in a Century
ヨーロッパよ、気をつけよ!第三次世界大戦、一世紀3度目のヨーロッパ破壊の可能性
ペーター・ケーニッヒ(Peter Koenig)(松元保昭訳)
グローバル・リサーチ誌
2014年12月30日
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http://www.globalresearch.ca/europe-beware-world-war-iii-could-destroy-europe-for-the-third-time-in-a-century/5421998
ワシントンはロシアとの戦争を決意した。軍産複合体はそれを要求している。その金融シ ステムFED(連邦準備制度)とウォールストリートがそれを要求している。戦争は債務マシーンだ。戦争は狂気の莫大な利益を生み出 す。ヨーロッパの家臣たちが追随している。PNAC(アメリカ新世紀プロジェクト=ラムズフェルド、ウォルフォウィッツ、チェイニー らのネオコン・シンクタンク=訳注)の役割は世界を乗っ取ることだ。
ロシアの後を中国が追いかけるだろう。それが計画だ。皆 が言うところでは、中国は現に取り囲まれている。すでに米海軍全艦隊の50%が、 日本からフィリピン、オーストラリアまでの太平洋で待機している。2016年まで には、とオバマは約束した。太平洋における海軍戦時艦隊を三分の二近く増大させるだろうと。
2014年半ばに、中国は経済力で米国を上回った。可能などんな 方法でも中国に大打撃を与えなければならない。最近、ロシアと中国がほとんど失敗不可能な緊密な金融・軍事同盟、協定を締結したことなど 気にするな。
地球上くまなくその触手でむやみに襲いかかる瀕死の巨獣、ワシントンが自らを含む惑星を破壊する全面核戦争―真っ先にヨーロッパが破壊されることになるのだが―を開始しない限り、ここに問題の核心がある。ともかく、アメリカ合衆国は遠く離れている。二つの大洋に保護されて、海外の軍事基地から戦争を始めることはずっと安全なのだ。
NATO加盟国28か 国のうち26か国がヨーロッパで、そのほぼ半分の12か国は東欧にあり旧ソヴィエト連邦の一部または属国であった国々である。ベルリンの壁崩壊の時に、NATOは東方に拡大することはないというワシントンの請け合いにもかかわらず、ご覧のとおりだ。ロシアに対する嘘と公然たる侮辱。
この挑発は、ポーランドとラトビアのNATO軍基地をさらなる戦闘準備態勢にさせるペンタゴンによって悪化している。またウクライナの執拗な要求を認めたNATOによって、というよりむしろ NATO援護と出来るだけ早くNATO加盟国にさせるためにワシントンがインストールしたキエフのナチ暴力団の要求によってもまた、今日さらに悪化している。ポロシェンコは、ソヴィエト連邦崩壊時に創設されていた非同盟中立(中立政策)の地位を放棄することを含め、彼の政府(原文のママ)はネオリベのNATO改革条件を実行するために必要なことなら何でもやるだろうと宣言した。IMF大ハンマーと同質のネオリベ改革は、ウクライナの社会的セーフティ・システムを盗みさらに民営化することを意味しており、給与、年金、健康や教育の特典を縮減 させた。徹底的な窮乏の悪循環に落とし込むいわば民衆の大惨事だ。
NATOがモスクワを訪問したときを想像してみよ。クレ ムリンは挨拶したり受け入れたりするだろうか?どうみてもありえない。ヨーロッパ26か 国にあるNATO軍基地を抱えていて、次の交戦圏の必然的な中心をどこだと推測するだろうか?
オバマの手先たちはこれを理解しないのか?臣下たちは頭が悪いのか?あるいは彼らの民衆がゴミにまみれてくすぶっているというのに、臆病な指導者たち(原文ママ)はフロリダに逃げ出すのか?目を覚ませ、ヨーロッパ!目を覚ませ!ヨーロッパの民衆よ、ネオリベの操り人形から、あなた方の気骨から、頭の悪い臆病な指導者から、あなた方の国を取り戻せ。
事実、裸の皇帝に率いられた欧米は、いくつもの戦線でロシアに対し戦争を仕掛けている。/2014年2月の血まみれのウクライナ・クーデターとマイダーンの虐殺/その大部分が民間人、女性、 子どもたちで、少なくとも5000人のドンバス住民の残忍な殺害を率いたキエフ (政府)の戦争犯罪の装備また武装化/さらに家を失いロシアへ逃れた100万人以 上の難民/シオニスト-アングロ-サクソンが支配する主流メディア(MSM:Mainstream Media)による情け容赦のない反ロシア・反プーチンのプロパガンダ/キエフ空軍がマレーシア航空MH17を 撃墜し298人を殺害したようなCIAの偽旗作戦の開始/ロシア以上にヨーロッパ に打撃を与えるにもかかわらず、数えきれない経済制裁の一斉射撃/また、炭化水素(を中心とした石油化学製品=訳注)の生産過剰でサウジの道化者どもと共謀して操作された原油価格の下落と同時に起こったや はり操作されたルーブル下落による通貨戦争/ロシアを突き刺すだけでなく、ワシントンの命令に屈することをきっぱりと拒絶する他の国々の 経済をも突き刺すことになる、イランやヴェネズエラのように。
その上、シリア政権転覆のために、ISカリフ制国家を創り出し武装させ、中東の前線を間接的に攻撃する。過去十年のあいだ国務省のアジェンダとなっていた目標=レジーム・チェンジ(体制転換)のためにロシアの緊密な同盟国シリアを爆撃する偽装で IS部隊を攻撃するという見せかけの出し物。次は、ロシアと中国のもう一方の同盟国イランだろう。そのようにPNACには明記されていた。帝国(PNACの大部分を書いた)を揺り動かすシオニストのプードルの尻尾には、慈悲なんぞない。
ロシアは、平穏を装っている。ウラジミール・プーチンは 一段とすぐれたチェス・プレイヤーだ。あらゆる動きで欧米の裏をかいている。ロシア中央銀行総裁のエルヴィラ・ナビュリーナ女史が一兆5千億ドル相当と評価したロシアの巨額の外貨準備金に加えて、欧米の経済攻撃に対して世界GDP(2014年 評価で85兆USドル)の約27% を構成する彼らの団結した経済で対抗するため中国との通貨交換協定を結んだ。
2,3日 前、ロシア中央銀行は下落したルーブルを過剰外貨準備金で安く買い戻し始めた。12月17日、ロシア通貨は週末前の最終取引で単独で10% 上昇した。ルーブルの下落にともないロシア企業の海外株主とくにヨーロッパと米国の株主は、ルーブル暴落で損をすることを恐れていた。ロ シアが素早く買って送り返したそれらの株式を彼らはストックしたので、ロシア株式の海外持ち株をロシアの財源に戻しただけでなく、これら の株式の配当で儲けることになった。一部のアカウント(シュピーゲル・オンライン)によれば、この動きだけでロシアは約200億ドルを稼いだのだった。
経済とプロパガンダの戦争は、徐々にロシアが制している ように見える。欧米の政治的な最前線の形勢もまた徐々に崩れている。EUとNATOのメンバーであるハンガリー政府はワシントンに対抗してロシアとの同盟をちょうど宣言したばかりだ。かりにもEU加盟を争ったトルコはヨーロッパに愛想を尽かし、代わりにSCO(上海協力機構)のメンバーを目指している。トルコはNATOメンバーの戦略的な中核である。ますます皇帝の裸と巨大な悪性腫瘍を見せられているとき、他の者たちが先例に従うだろうか?
ベールは剥がれている。徐々に。世に言う帝国の同盟国は、久しい間から用心深くなっている。無慈悲な殺人マシーンによる起こりうる乗っ取り(政権奪取)という制裁あるいはもっとひどいことを惧れて、彼らはなびいて協力するふりをしてきた。これまではいい。しかし、彼らが獣のうなり声を聞いたとき、彼らは一目散に逃げるだけだ。
ヨーロッパよ、気をつけよ!次の戦争の中心は、再びヨー ロッパかもしれない。瀕死の獣に慈悲なんぞない。生存者を残しておくより、むしろ自らと全世界を破壊する。経済的な孤立によって、その通貨ドル相場の崩壊によって、この無価値のカネを時代遅れにし、お払い箱にすることで、その有害な殺人触手(巧妙な支配力)を最終的に無力にできないならば…。これを最後に。
ヨーロッパよ、遅くはない!あなたがたの未来の経済はあなたがたの自治の中にある。前途有望な新経済シルクロードによる東側の同盟と共にヨーロッパの主権国家の連合の中にある。今春の習近平氏のマダ ム・メルケルへの誘いは、まだ開かれている。ネオリベの思考はいつも短期的判断だ。即席の債務に即席の利益。
ヨーロッパよ、指揮をとれ!腐敗し債務づけとなったドル・カジノ・プランから脱出せよ。新たなルーブル・元を基軸とした通貨システムが進行中だ。バスケットは他のBRICS通貨ですぐにも拡大するかもしれない。知る人ぞ知る、ひょっとするとユーロが加わるかもしれない?われらの子どもたち、孫たち、さらに彼らの子どもたちに は、平和と調和と幸福な未来がふさわしい。
(以上、翻訳終わり)
Copyright © 2014 Global Research
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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