やっと最終校正が終わりました。何しろ、こちらの手元にあったのは中国語版のマルエン全集・レーニン全集・ヘーゲル『大論理学』『小論理学』で、日本語訳と言えば大月版レーニン全集38巻(『哲学ノート』部分)のデジタルファイルしかありませんでした。これらの中国語版と日本語版との対照にたいへん時間がかかったわけです。この作業については、『情況』編集部にお手を煩わしました。本当に感謝しております。
さて、読者にとってはどうでもいい苦労話はここまで。この『レーニンへ帰れ』のもう一つの読み方をご紹介しましょう。それは、レーニンとその周囲にいた人物との思想的な関わりを読み取ることです。師「プレハーノフ」、論敵「ボグダーノフ」、『ノート』の重要性を紹介した「デボーリン」、党内随一の理論家「ブハーリン」とレーニンとの知的交流の事実には実に興味深いものがあります。
とくに、プレハーノフとボグダーノフ。プレハーノフは、当初「哲学上の師で政治上の敵」で、ボグダーノフは「哲学上の敵で政治上の同志」だったが、哲学研究を深めることにより「政治と哲学的立場は切り離すことができない」との認識を得て、両者を同時に理論上も政治上も批判し得る地平をレーニンが切り開いていった―この過程には知的刺激を覚えると思います。そして、直接には登場しないが、この『哲学ノート』の解釈について影のようにまとわりつく、かの「鋼鉄の人」も忘れてはならないでしょう。
後は出版を待つだけです。