(2022年3月2日)
2月24日以来、一刻も心穏やかではいられない。今も、キエフで、ハリコフで、市民が砲撃に曝されている。ロシア兵の命も無駄に失われている。両国民の血が無意味に流され続けている。何という、愚かしい悲惨な事態であろうか。
ロシアのウクライナに対する軍事侵攻という深刻な現実から、何を学ぶべきであろうか。世界の人々が、それぞれに真剣に考えなければならない。そして、声を上げなくてはならない。この事態を繰り返さないために。
真摯にこの事態に向き合い考えるべきは全世界の人々ではあるが、国家の枢要な地位にある人にはその責務は重い、大国の関係者であれば、なおさらである。さらに、ロシアの轍を踏む危険をもつ超大国と言えば、アメリカと中国の名を挙げざるを得ない。とりわけ、我が国との関係で考えるならば、中国こそ最も真摯に国際法を蹂躙したロシアを批判しなければならない。
ところが、こともあろうに、中国大阪総領事館の薛剣総領事のツィッターでの冷酷な発言が波紋を呼んでいる。これまでも、数々の物議を醸してきた人物。中国の本音をチラつかせていると見ざるを得ない。
この人、日本語で「ウクライナ問題から学ぶべき教訓」と題して、「弱い人は絶対に強い人に喧嘩を売る様な愚かをしては行けない」(原文のママ)と言ったのだ。軍事侵攻したロシアではなく、明らかに被害を受けたウクライナに矛先を向けた批判である。
しかも、このツィッター、彼の地に引き起こされた市民の悲劇に関心を寄せた形跡はカケラもない。この人の頭の中には、人が傷を負い、血を流し、命を失うという惨劇に対する憐憫の情がない。こういう人物を人非人とか、冷血漢という。
この人の頭の中では、戦争もゲーム感覚でしか理解できていない。しかも、正義も法もない強者絶対のルールに基づくゲームである。「弱い人は宿命的に、強い人に従順でなければならない」という、傲慢な強者の理論が大上段に語られている。恥ずかしくないか。
中国を代表する総領事がこう述べれば、強者とは強国である中国のことである。結局彼はこう言っているのだ。
「ロシアのウクライナ侵略の事態とは、弱いウクライナが強いロシアにケンカを売って報復を受けたということである」「だから、この事態の最大の教訓は、弱い国が強い国にケンカを売っては悲惨なことになるということなのだ」「もちろん、中国は強大国である。中小の諸国は中国にケンカを売るような愚を犯してはならない」
さらに、「台湾も日本も韓国もベトナムもフィピンも、中国に従順にしなければ、明日はウクライナのごとくなるぞ」とも響くのだ。野蛮な超大国の無法ぶりが垣間見える。
この中国総領事の投稿をめぐって、中国政府投稿をめぐり中国政府が釈明をしたようだ。「中国外交は国の大きさを問わずすべて平等だと一貫して主張している」「中国は強さと大きさを利用した弱い者いじめを行わない」と、報道されている。この釈明にも、芬々たる大国意識が透けて見える。。
問われているのは、外交官薛剣の品位ではなく、今や大国意識丸出し中国の品格ではないか。
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2022.3.2より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=18657
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
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