不気味な原子炉データの上昇

著者: 近藤邦明 こんどうくにあき : 「『環境問題』を考える」管理者
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(2011/04/15)

 この所、原子炉そのものに関する情報がとても分かり難くなっています。大きな記事として扱われるのは避難地域設定の問題や、復興計画(時期尚早だと思いますが・・・、菅直人のスタンドプレーで実効性には疑問が残ります。)の問題です。確かにこれらの問題も大事ではありますが、皆さん何か勘違いしていないでしょうか?
 福島第一原発事故は未だ核燃料や原子炉の状態を制御できる状態にはなく、最悪のケースでは今後更に莫大な放射性物質が環境中に放出される可能性も否定できないのです。状況はまったく改善されていないことを認識し、原子炉本体の事故状況を注視していかなければならない状況です。
 昨日はまた原子炉の状況について非常に気になるデータが公表されました(蛇足ですが、原子炉に関するデータについて東電や原子力安全・保安院の会見では“パラメータ”という言葉を使っていますがとても違和感を感じているのですが、私だけでしょうか?
 まず、3号機の圧力容器の上蓋の接合部付近の温度が、フランジで144℃(12日)から165℃(14日)、シールで170℃(12日)から250℃(14日)に急上昇したが原因不明ということです。炉内の発熱反応に何らかの変化があったことを予想させます。
 そして、1、2号機建屋下の地下水に含まれるヨウ素131とセシウム137、134の濃度が1週間前の数倍から数十倍に上昇しているということが明らかになりました。
 
http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu11_j/images/110414t.pdf 

 上図の縦軸の放射能レベル(Bq/cm3)は対数目盛りなので、判りにくいですが、一目盛りで10倍になります。数値データが示されていないので、グラフからの大まかな読みですが、1号機のヨウ素131は、先週は60(Bq/cm3)程度であったのが今週は400(Bq/cm3)程度に上昇しています。セシウム137は、先週は1.05(Bq/cm3)程度であったのが今週は50(Bq/cm3)程度に上昇しています。
 2号機のヨウ素131は、先週は30(Bq/cm3)程度であったのが今週は600(Bq/cm3)程度に上昇しています。セシウム137は、先週は1(Bq/cm3)程度であったのが今週は9(Bq/cm3)程度に上昇しています。 
 これまで低下傾向にあったヨウ素131やセシウム137の濃度が再び上昇に転じたことは、どういうことが考えられるでしょうか?一つには、度重なる大きな余震によって原子炉内の劣化していた燃料棒が崩落するなどして、冷却水の中により多くの放射性物質が混入した可能性があります。そしてもう一つは崩落して圧力容器の底に溜まっているウラン燃料が部分的に核分裂反応を起こし、新たに核分裂生成物としてヨウ素131などが生成されている可能性も否定できません。
 いずれにしても報告されたデータは原子炉の状態がむしろ悪化している可能性を示唆するものばかりです。このような状況を考えれば、国の退避指示は、現状で観測されている土壌の放射能汚染状況や空間放射線レベルで判断するのではなく、更に重大な事態が生じる可能性を考慮して、より広い範囲に対して出されるべきでしょう。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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