世界資本主義フォーラム「一帯一路とアジア経済」に参加して

参加者からの提起に対する私の考えと私自身の問題意識を書きます。

①参加者からの提起 なぜ資本主義化を問題とするのか?

資本主義化が社会主義革命の条件だからである、と私は考えます。

マルクス主義に基づくと、プロレタリア階級を解放する社会主義革命の根拠は、プロレタリア階級を支配している資本主義そのものの中にある。機械制大工業(生産の社会化)が物質的基礎で、プロレタリア階級の階級闘争が原動力である。

もちろん受動的革命論ではない。ロシアや中国・ベトナムなどは、資本主義が未発達であった。プロレタリア階級=共産党は、人民とりわけ農民を指導して民主主義革命を主導し、国家権力を握り(プロレタリアートと農民の革命的民主主義的独裁=人民民主主義独裁)、それを使って機械制大工業化(生産の社会化)して、社会主義革命へ前進(国家はプロレタリア階級独裁へ転化)しようとした。弁証法的唯物論の主観的能動性を追求した。

しかし、資本主義化の唯物論的必然性が貫徹した。機械制大工業の、プロレタリア階級による自主的大衆的な管理・運営ができなかった。党が官僚化し、管理・運営を独占し、官僚制国家資本主義化した(国家はブルジョア階級独裁)。中国やベトナムは市場経済だが、朝鮮やかってのソ連は統制経済であるため、歪である。

中国を中心としたアジア、さらにユーラシアの資本主義化は人口と面積で人類と世界の過半を占める。そこが社会主義革命に直面する。これには世界史的意義がある。

②参加者からの提起 アジアの資本主義化は内発的発展か?

内発的発展である、平川報告が論証している、と私は考えます。要約します。

①1950~60年代の新興独立期発展段階(輸入代替工業化段階)→②1960年代後半~90年代のNIEs発展段階(輸出志向工業化段階)→③2000年代のPoBMEs発展段階。③は潜在的大市場経済(Potentially Bigger Market Economies)。特にBRICs。

「世界の工場」から「世界の市場」へ。中国では今世紀に入って「2重の自立化」が認められる。中国経済は今日、貿易への依存度を減らすと同時に外資企業への依存度も減らしている。同じパターンは1980年代のNIEsでも起こっていた。

①②③は後発国の工業化・資本主義化のパターン。③は輸出志向を超える国内市場志向。この③に、超巨大人口の中国が到達し、インドが到達する。それが重要だろう。

内発的発展に、新植民地主義からの脱却、民族の解放と国家の独立が対応する。ブルジョア革命の達成は、官僚制国家資本主義の中国・ベトナムだけではない。韓国・台湾とASEANも、開発独裁によって、上からなし崩し的に遂行されて資本主義化した。

国家の強権による資本主義化。富国強兵と殖産興業。これが両者は共通する。20世紀における後発国の資本主義化の典型をなしている。19世紀における後発国の資本主義化の典型であるドイツと日本の専制君主制=ボナパルティズムを引き継いでいる。

20世紀の現実は、ブルジョア革命と資本主義化であった。21世紀は、アジアが資本主義化し、社会主義革命に直面する時代になるだろう。

③私の問題意識 米中の帝国主義覇権争闘はどうなる?

平川報告が「一帯一路」をどう見ているかを要約します。

①資本財・中間財を輸出→②低賃金労働力で最終財を生産→③輸入。

この「東アジア成長のトライアングル」で、1990年代までは①日本、②NIEs、③アメリカであった。それが2000年代に入ると①日本+NIEs、②中国+ASEAN、③アメリカ+ヨーロッパとなり、今後は中国が①に上がり、②がアジアからユーラシア、さらにはアフリカに拡大する(日本は③に移る?)。

これは帝国主義の経済圏である。レーニンは帝国主義を、1:独占資本 2:金融資本 3:資本の輸出 4:国際独占資本による世界の経済的分割 5:帝国主義国による世界の政治的分割 と特徴づけている。その3:と4:に当たる。日本の経済圏に、はるかに巨大な中国の経済圏が取って代る。間違いなくアメリカの世界覇権への挑戦になる。

報告は「一帯一路」に「覇権と公共財」の両面を見、「国際的ルール」の下、平和的に「アフロ・ユーラシアに新たな成長のフロンティアが誕生する」と見ているようである。しかし、アメリカの覇権も公共財と一体である。アメリカが世界覇権を平和的に譲るとは思えない。

現代の帝国主義は、5:が植民地領有から国家間の経済的・政治的・軍事的な国際関係における指導権=ヘゲモニーへ変化している(実は植民地の独立に対応)。かって同じ植民地型で、ドイツがイギリスに挑戦し、第一次大戦・第二次大戦が勃発した。その間に、旧い植民地型のイギリスから新しい国家間関係型のアメリカへ世界覇権が移行した。そのアメリカに、同じ国家間関係型のソ連が挑戦して脆くも瓦解した(冷戦とその終了)。今、中国が、これも同じ国家間関係型で(それが「一帯一路」)、アメリカに挑戦している。どうなるか?

6:寄生的な腐朽しつつある資本主義 7:死滅しつつある資本主義 というレーニンの帝国主義規定がある。人民=プロレタリア階級の立場は、平和でも戦争でも、対立と闘争を利用して、社会主義革命で帝国主義を打倒し廃止することである、と思う。(おわり)

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/

〔opinion8748:190623〕