世界資本主義フォーラム「東欧体制の崩壊と市場経済化」に参加して

 報告は、ソ連・東欧体制の崩壊を、「市民革命と性格規定することの誤りが明白」としています。「政治革命とは、新しく誕生しつつある正統性の社会的担い手集団と古いが未だ余力を保っている正統性の社会的担い手階層が正面衝突して、新集団が旧階層を政治的に打倒する事を意味する。」「前者の社会集団も後者の社会階層も存在していなかった。」
 ソ連・東欧体制の崩壊の世界史的にどう見るかは重要です。ブルジョア革命である、それがロシアと東ヨーロッパは20世紀になった、この論点で私の意見を言います。
①ソ連・東欧体制の崩壊は民族革命
 ソ連は、対内的には大民族のロシアが少数諸民族を抑圧し、対外的には東ヨーロッパ諸国を従属させ、帝国主義でした(基礎は官僚制国家資本主義)。崩壊した要因は、1.「計画経済」=統制経済が桎梏となった経済停滞、2.東ヨーロッパおよび国内の少数諸民族と人民の民族闘争と民主化闘争、3.アメリカとの世界覇権争闘=冷戦の過重負担、でしょう。だから、ソ連の崩壊は、社会主義の崩壊ではなく、帝国主義の崩壊でした。
 東ヨーロッパとバルトや中央アジアの諸国は、国家的独立を実現し、民族革命でした。すでに独立していたユーゴなどもソ連の脅威からは最終的に解放されました。
 階級対立に基づく社会革命ではなく、帝国主義・抑圧民族と従属国・被抑圧民族の民族対立に基づく革命でした。確かに「下から」の人民闘争はあったが、基本は官僚ブルジョア階級が主導し「上から」「なし崩し的」でした。だから、「正面衝突」「打倒」にはなりません。
②ソ連・東欧体制の崩壊はブルジョア革命
 ロシア革命は、ブルジョア革命で終わりました。工業化と機械制大工業を管理・運営する必要から官僚と官僚主義が登場し、官僚が国有の生産手段を独占して労働者階級を搾取・支配し、官僚制国家資本主義と官僚ブルジョア階級の独裁へ変質・転化した(農業集団化は農民収奪と資本の原始蓄積)。スターリン主義体制です。東ヨーロッパも、官僚制国家資本主義でした(ユーゴも産業と国の全体は官僚が管理)。
 官僚制国家資本主義は、20世紀の後発資本主義が通る道と言えます。「計画経済」=統制経済が発展のテコから桎梏となった時点で市場経済への移行が必然です。ソ連・東欧は、そこで体制崩壊し、私的資本主義(報告にある「略奪的私有化」と「買弁的売却」)とブルジョア民主主義(これは「下から」の人民闘争の結果だが現在は権威主義が顕著)となりました。中国・ベトナムなどアジアでは、体制を維持した市場経済への移行に成功し(その根拠は報告にある「近代主権国家の確立」の「正統性」)、現在、経済発展しています。
 ソ連・東欧体制の崩壊は、ロシアと東ヨーロッパにおける二度、三度と連続するブルジョア革命と見るべきでしょう。西ヨーロッパのブルジョア革命もそうでした。
③20世紀のブルジョア革命と資本主義化の先に21世紀の社会主義革命を見るべき
 韓国・台湾やASEANは開発独裁で新植民地主義的従属から脱却しました。これに対して、先発のアメリカ・西ヨーロッパ・日本は金融資本主義化しました。20世紀はブルジョア革命と資本主義化の時代、ソ連・東欧体制の崩壊はその一環と見るべきです。
 現在のグローバリズム、つまり資本主義の世界化を見ると、資本主義は社会発展の必然であり、資本主義の矛盾が発展して社会主義革命を必然化する、このマルクス主義の原理は21世紀において、依然として有効である、と考えます。(おわり) 19.12.10
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/ 
〔opinion9250:191210〕