中国のバブル崩壊は、対岸の火事ではない

安倍政権の米国追随新安保法案成立は、確かに国民にとって脅威であるが、その企みの陰にあるもう一つの脅威にも眼を向ける必要があるのではないだろうか。 勿論、その余裕が無いのは事実であろう。 しかし、ことは、国民の生活が懸かっているのである。

その脅威とは、官製相場である。 只今は、中国のバブル・官製相場が崩壊過程にあるが、日本のそれも同様の構図、と言うことに思い至ると戦慄してしまう。

 

日本株市場の官製相場とは、何を指して言うのか。 それは、一つには、日銀の金融緩和マネーである。 金融緩和で買われているのは国債のみではない。 ETF(上場投資信託)をも買い進めている日銀である。 しかも買値は、2008年や2009年のことではなく、ここ数年のことなので、割高である。 日銀に追随したのは、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)である。 更には、共済年金もこれに追随している。

 

日銀の金融緩和マネーでの官製相場も問題であるが、国民の年金基金での相場操縦は、更に問題である。 これについては、政権のゴリ押しでGPIFのポートフォリオを改編されてしまった経緯が問題であり、その中身が更に問題である。

GPIFが運用する、国民の年金積立金は、約130兆円である。 これを「当てと褌は向こうから外れる」式の好い加減なポートフォリオ(資金を運用するマニュアル)を作成し、ユーロ危機を一先ずは回避した後の株価上昇局面で買う(即ち高掴み)するのである。 いや目下は、しているのである。 更には、共済年金も。

 

私は、そのGPIFのポートフォリオを観て呆れて物が言えなくなった。 只の数字の辻褄合わせであったからである。 日本に良くある、株屋の回転売買の種、金儲けの種とも言うべき、恐ろしく出来の悪い投資信託の目論見書と同等であったからである。 こんなものは、誰も読まない、と適当に数字合わせした代物で、少しでも金融の知識があれば、失笑してしまう程度のものである。 本当にこれで運用するのか。 いや、出来る、と思うのか。 阿保にも程がある。

 

GPIFの「株式50%」新運用計画は素人でも許されない無責任な代物である 山崎 元 現代ビジネス 2014年11月13日(木)

 

大体が、バブルの頂点附近では、日本に沢山いる安物の株屋が騒ぎ、株価の高騰を合理化する。 己が素人を騙して儲けるために、である。 彼等には、世界共通の金融知識と経験が無いので、神がかりに傾く。 それに加えて市場の原理に反する。

その例が、バブル崩壊で消え去った三大証券会社の一つである。 私は、この会社自体もそうだが、その会社が、大口投資家に対して行っていた「損失補填」を忘れることが出来ない。 不平等である。 不公平である。 更に、この会社の幹部社員が、自己資金の全てで自社株買いを行っていたことにも呆れたことがある。 リスク分散の基礎も知らずに証券会社の幹部になっていたのだから。

前世紀のこと、と済ます訳には行かない。 我々の年金積立金を、むざむざと、バブル崩壊後にも公的資金で生き残るゾンビ企業が蔓延る市場に使われては堪らない。 無能な株屋にあぶく銭を貢ぐのも噴飯ものである。

 

ところで、此処に面白い指摘がある。 「安倍政権の支持率と株価は、これまで逆行してきた。」と云うのである。 即ち、支持率が低下すれば、株価が上がる」と云うのである。

これは、株価を、アベノミクスの成功を寓意するものとして使う政権が、官製相場で高騰を演出したもの、と観察する他はないもの、と思われる。 ただし、記事に依れば、その構図が危ない、と云うのである。

「安倍内閣が、支持率低下に対応して株高を支援する政策を打ち出したとしても、日本企業の『稼ぐ力』(今年の通商白書)につながらなければ、いずれ市場の見方も変化する。『官製相場』と批判される東京市場の歪みが大きくなれば、将来の禍根を大きくすることになりかねない。」と。

 

焦点:安倍内閣の支持率低下、政策期待で株価逆行 ロイター Business | 2015年 08月 12日 16:03 JST

 

下がりゆく株価のボードを茫然と見つめる中国国民の姿が、明日の我が身と重なるようである。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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