クリントン国務長官が、訪米中の岸田外相と会談した後の発言に、これまでの見解を一歩進めたものがあるのは事実であると、私には思われます。 であるからこそ、中国外務省の秦報道局長が20日に、「米国の発言は事実を無視し、物事の是非をわきまえていない」と抗議したのでしょう。
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887324439704578254563076900542.html
中国、米国の尖閣問題へのスタンスを強く非難 The Wall Street Journal 1/21 2013
では、発言の何処に中国を刺激するものがあったのでしょうか。 クリントン氏は、“As I’ve said many times before, although the United States does not take a position on the ultimate sovereignty of the islands, ”と主権問題には介入しないと述べ、“we acknowledge they are under the administration of Japan”(我々は、尖閣諸島が日本の施政下にあると認める)と明言したのです。
更に、“and we oppose any unilateral actions that would seek to undermine Japanese administration”(我々は、日本の施政を侵そうとする如何なる一方的な行動にも反対する。)と、暗に中国を指して述べたのです。 勿論、“and we urge all parties to take steps to prevent incidents and manage”と述べ衝突防止策を講じ、平和的な手段を通じて対処するよう求めることも忘れることはありませんでしたが。
ここで、クリントン氏は、日米安全保障条約第5条に依り、米国が行動する用意があることを念頭に置き発言されています。 此処に中国を大きく刺戟するものがあったと言わねばならない、と思います。 それは、同条約第5条前段で「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」とあるからです。 英文は、“Each Party recognizes that an armed attack against either Party in the territories under the administration of Japan would be dangerous to its own peace and safety and declares that it would act to meet the common danger in accordance with its constitutional provisions and processes.”とあります。 the territories under the administration of Japan に注目していただきますと、クリントン氏の発言と見事に整合していることにお気づきでしょう。 日米安全保障条約は、当然のことですが、国際紛争が生じることを念頭に置いた条約です。 今回のように、日本の領海、或いは、領土であっても、他国が自国の主権を主張することは有り得ることですので、日本が統治している領域に武力攻撃が有る場合には、集団的自衛権の発動が有る、と云う事を条約で定めているのです。
勿論のことですが、だと云って、虎の威をかる狐になってはなりません。 しかしながら、中国は、日本国憲法前文に云うところの「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会」の一員であるかが疑われる存在でしょう。 この国は、建国以来、周辺諸国への侵略・侵攻の事例が多数あり、国防力を見縊られれば、侵攻されることは承知しておいた方が良いでしょう。 チベットのダライラマのように、国を捨てねばならない破目になった人々も多数あるのが事実ですから。 近年では、東南アジアの新興国が周辺海域の資源を狙われています。 彼らは、巨大な独裁国家中国の圧力と脅迫を受けている日本の対応を注視しているでしょう。 日本人が、自分の国を守れるかどうかを。