『街と犬たち』を執筆したマリオ・バルガス・リョサ(ペルー)の人となり
1936年、ペルー南部の町アレキバに生まれる。生活のために様々な職業に就きながら、リマの国立サンマルコス大学で法律・文学を学ぶ。1958年よりスペインのマドリード・コンプルテンセ大学に入学。同大で博士号を取得した後、パリに渡り、AFP通信社などで働いた。また19歳の折、十以上歳上の義理の叔母と結婚、1964年に彼女と離婚した後、翌年に従姉妹に当たる女性と再婚している。
1959年、短編集『ボスたち』でデビュー。1963年に初長編『街と犬たち』を発表。同作で有力出版社の文学賞ビブリオテーカ・ブレーベ賞を受ける。軍人学校での体験を基に社会の欺瞞と腐敗を告発。将校らが反発して本を焼却するなどし、国際的注目を浴びた。
1966年、ペルーのアマゾン地域などを舞台に娼婦や原住民、軍、僧院などなど五つの物語が同時進行するスケールの大きな作品『緑の家』を発表し、作家的地位を確立する。70年代に入ってからは、それまでのリアリズムによる全体小説的な作風が幾分変化し、軍隊社会を風刺したユーモラスな作品『パンタレオン大尉と女たち』(1973年)、どたばた喜劇を思わせる半自伝的青春小説『フリアとシナリオライター』(1977年)などを発表。この二作は後に映画化もされた。
1974年、ペルーに帰国。翌々年に40歳の若さで国際ペンクラブ会長に就任し、1979年まで務めた。1981年、ブラジルの19世紀末のカヌードスの乱を題材にした『エウクリデス・ダ・クーニャ(『奥地』)』をリライトした『世界終末戦争』を発表。この作品で85年に文学賞(リッツ・パリ・ヘミングウェー賞)を受けた。
以後は民話の要素を作品に採り入れた『密林の語り部』(1987年)、ポルノグラフィックな『継母礼賛』などを発表。1994年に『アンデスのリトゥーマ』などの作品でスペイン語圏最大の文学賞・セルバンテス賞を受賞した。
他の多くのラテンアメリカ作家と同様に、バルガス・リョサもまた社会・政治に対する発言を積極的に行ない、その政治思想は当初の左翼的なものから次第に保守的・自由主義的に移行。1990年には新自由主義的な改革を唱道する考えから、中道右派連合「民主戦線」よりペルーの大統領選に出馬。決戦投票でアルベルト・フジモリに敗れた。後にバルガス・リョサは穏健的保守政党の支持に回っており、2021年の大統領選挙では中道右派のケイコ・フジモリ支持を表明した。2010年、「権力構造の地図と個人の抵抗と反抗、そしてその敗北を鮮烈なイメージで描いた」としてノーベル文学賞を受賞。2025年4月13日、リマで死去。89歳だった。
「リベラル21」2025.12.29より許可を得て転載
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