新着情報 No.25 2017年4月18日 2016年12月16日に公表された,JST宛て研究不正告発に対する東北大学の調査報告書は,依拠すべきガイドラインに従わず,しかも3編の告発対象論文を全く断りなく調査対象から外している。このような不当な報告書は撤回して再審議すべきである 昨年末(2016年12月16日),東北大学は,大学の公式HPに「研究不正疑義の告発に関する調査結果について」という記事をリリースして,本フォーラムの日野秀逸代表世話人らが告発者の一人となった井上明久東北大前総長の研究不正疑惑に関する調査結果を公表した*。代表世話人らの前告発は,科学技術振興機構(JST)と東北大学に宛てた2件で,総計11編の論文に関連していた。JST宛告発では,原点(応力=0,ひずみ=0%)を起点としない応力–ひずみ曲線を用いて,圧縮弾性ひずみや圧縮破断強度に相当する数値が明記されている論文があるが,これは測定不可能な数値を測定していることになり,捏造が疑われる,また論文中に掲載された応力–ひずみ曲線から算出される機械的性質の数値から,本文テキストの数値が大きく乖離している,後者を根拠に製作試料の機械的性質の優位さを主張するのは,データ改ざんではないのか,等々の疑惑である。東北大学宛て告発で取り上げられたのは,Nd基バルク金属アモルファス合金(以下,BA合金)の試料外観写真をZr基BA合金写真の写真だと2度にわたって掲載し続けたデータの捏造疑惑であった。 *2つの調査報告書URL:https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2016/12/news20161216.html 2つの報告書は共に,井上氏らには「不正は無かった」と結論した。東北大学は,上記リリース記事で,本調査委員会の審議は「研究活動における不正行為への対応ガイドライン(2007年(=平成19年)3月1日 研究推進審議会研究倫理専門委員会)」に基づくと強弁するが,その論拠は正当化されるものでは全くない。フォーラムは,東北大学宛ての日野氏らの告発に対する調査委報告書の批判と里見進同大学総長宛の質問を,日野氏らの許しを得て新着情報No.24で公開質問1*として公表した。この新着情報No.25では公開質問2として,日野氏らのJST宛て告発に対する調査報告書への批判と,里見総長及び濵口道成JST理事長宛の質問を公開する。 *日野氏ら公開質問1 URL: 公開質問状1.PDF (1086K) 日野氏らによれば,この調査報告書には,内容以前に,公式の調査報告書の体をなさない根本的な問題があるという。日野氏らがJSTに研究不正告発したのは井上氏らの9編の論文であったが,報告書で言及されているのは,そのうち6編であって,3編の論文が全く何の理由もなく,告発対象論文から外されていた,というのである。フォーラムはこの問題を重視し,日野氏らの許しを得て,日野氏らが2012年7月12日付けでJSTに対して行った告発原本の写しを同時に公開する。 日野氏らの2012年7月12日付け,JST宛て研究不正告発別紙 URL: Ċ 内容上の問題で日野氏らが最も重視するのは,この調査報告書もまた,東北大学宛ての告発に関する報告書(新着情報24,参照)同様,依拠すべきガイドライン(「研究活動における不正行為への対応ガイドライン(2007年(=平成19年)3月1日 研究推進審議会研究倫理専門委員会)」)に基づいて措置されていないことである。日野氏らによれば,この告発は,本調査委員会の発足(2013年11月1日)と本調査委員会の第1回会合(2013年12月4日)の間の、2013年11月26日付けで,急遽制定されたガイドラインの「対象とする不正行為」からの「除外条項」を,本調査委員会が適用することによって措置されたと見られる。これは,運動競技で負けそうになった贔屓のチームを勝たそうとして,試合の真っ最中に判定ルールを変更したり,負けそうになった贔屓の力士のために,徳俵をどんどん追加したために,土俵が円から球体に変わってしまったようなものである。詳細は下記の公開質問状2,「JST宛て研究不正告発に対する東北大学調査報告書は依拠すべきガイドラインに従わず,しかも3編の告発対象論文を全く断りなく調査対象から外している。この報告書は撤回して再審議すべきである」,を参照されたい。 日野氏らの公開質問状2 URL: Ċ なお,公開質問状2の理解の一助として,「金属の変形状態と強さとの関係」に関する図解を添付する。この図解は,徳田昌則,片桐望,山田勝利著『図解雑学 金属の科学』,ナツメ社,2005年,p.97から取ったものである。 参考資料 金属の変形状態と強さとの関係 URL: Ċ 2013年11月26日付けのガイドラインは,現行の2015年3月23日付けガイドラインの先取りというべきだが,この2つのガイドラインは,文科省のガイドライン(2014年8月26日付け)から逸脱し,東北大学の研究不正対応への信頼を大きく損なうものとなっている。日野氏らは,これについては公開質問状3を予定するという。 |