人の噂も60日?!ー日本の雑種文化

昔々,TV番組で俳優高島忠夫氏が出演していたと思うが「人の噂も()日」の括弧に入る数字を知らない若者が増えたことを知った。ところが自民党情宣局だったと思うが,「人の噂も60日」だという。現代日本人は60日間の間隔で事件を忘れあるいは覚えるらしい。したがって例えば,森友学園激安土地払い下げ事件、俳優の麻薬事件や日大・相撲界の暴力事件,東京医大の不正入試などなど次から次へ,60日間をめどに,事件を報道し,森友問題を国民の頭から消し去ろうとしたのが情宣局であり,〇痴メディアの援護であった(しかし醍醐聡先生をはじめ澤藤統一郎弁護士らは,そうは問屋が卸さない)。

そこで今,歌人内野光子氏の『新元号発表狂騒でシャッフルされてはならないこと(4月3日)』を読んで,その通りだと思った。同様なことは政治経済学者植草一秀氏が『知られざる真実』で書いておられる:「元号騒ぎで統一地方選忘れさせる狙いが明白」。

ところで日本国現首相を内乱予備罪乃至内乱罪で最高検に告発した平野貞夫氏があらっしゃられる。その平野氏が憲法調査会で知り合いになった文芸評論家加藤周一(故人)の著書『日本文学史序説』(筑摩書房または平凡社)を読んでいたのには驚いたことがある。それはさておき,加藤の『序説』は,中国から輸入された仏教思想でさえ日本人の土着思想によって日本化されていることを指摘した。すなわち日本文化の雑種性を説いている。

またその『序説』の中で加藤は「新旧が交代するのではなく,新が旧に付け加えられる」と書いている。つまり文学であれ仏教思想であれ外来思想は日本の土着思想に付け加えられてきた(西洋思想も同じ)という。そうして成ったのが例えば万葉集。万葉仮名で書かれているが内容は日本の土着思想でいっぱい。中国の漢詩は政治を扱うが,万葉集にはそれが見られない,と断じる。仏教思想の影響もないという。すなわち日本文化の特徴は,その雑種性である。そうした観点から見ると,「純粋な」国書というのはあり得ない。みな中国(や後の西洋)の影響を受けた,借り物の文物・思想である(だからダメだということにはならない。加藤は日本語が素晴らしい言語の一つだと誇っている)。

これは考えてみれば明らかである。縄文時代の昔から文字がなかった日本。中国語やオランダ語や英語を翻訳して日本語を作り上げて今日に至ったのである。すなわち日本国に,他国の文化・思想を取り入れなかった,純粋な国書というのはない。

同じ4月1日、日銀短観が発表された。6年ぶりに大幅マイナスだという。国書に振り回されず,経済の失敗にも目を向けるべきだろう。