(2020年7月1日)
本日・7月1日は、香港がイギリスから中国に返還された日。アヘン戦争で中国から割譲された香港は、1997年の今日、今度は強引に中国に戻された。50年間(2047年まで)は、一国二制度で高度の自治を約束されてのことである。しかし、以来23年にして、この約束は蹂躙されている。高度の自治は潰え、中国のイメージは地に落ちている。
香港の「民間人権陣線(民陣)」という民主派団体が、2003年以降、毎年7月1日の返還記念日には大規模なデモを継続して主催してきた。昨年(2019年)のデモは、「逃亡犯条例」改正案に反対する100万とも55万人とも言われた規模となったが、今年は香港警察当局がデモを禁止している。北京の指示があってのことか、香港政府当局の忖度によるものか、どちらでも「差不多(チャープトウ)」だ。当局は新型コロナ対策を口実にしているが、信じる者はない。香港のコロナ感染者数は既に大幅に減っているという。
6月28日から開かれていた中国全国人民代表大会(全人代)常務委員会はは、最終日の30日夕刻に、香港への統制を強化する「香港国家安全維持法案」を可決成立させ深夜に公布した。そして、本日7月1日からの施行だという。「国家安全維持法案」とは、香港の自由圧殺法案であり、民主主義封じ込めの法案であり、政治的活動に対する弾圧法案にほかならない。なんという性急で乱暴なやり口。なんという苛酷な圧制。
報道によれば、今回成立した国家安全維持法によって、香港に中国政府の出先機関「国家安全維持公署」が新設され、香港での治安維持を担う。香港政府がつくる「国家安全維持委員会」は中国政府の「監督と問責」を受け、中国政府の顧問を受け入れる。香港政府は中央政府の監督下に置かれ、国家分裂や政権転覆、外国勢力と結託して国家の安全に危害を加える行為を処罰対象とする。中国、香港への制裁を外国に要求することも処罰対象となる、という。
この中国の、つまりは中国共産党の度量のなさは、いったいどうしたことか。何を焦っているのだ。チベットやウィグルで何が行われているか。断片的な報道では事態がよく分からない。しかし、香港の事情を見ていると、もっと酷いことが各地で強権的に行われているのであろうと推量せざるを得ない。
もともとは、鄧小平が言い出した一国二制度ではないか。世界に約束された「高度な自治」のはずではないか。それが、いま強権的に蹂躙されようとしている。事態はきわめて深刻である。
今や中国は、恐るべき人権侵害大国である。国際世論の厳しい批判を、全て「内政干渉」と切り捨て、陰謀論さえ口にする。このなりふり構わぬ様は異様としか評しようがない。
香港の著名な民主派団体「香港衆志」は30日、解散を発表した。香港民主派の活動家に「逮捕情報」の恐怖が広がっているという。
その標的のひとりとみなされている周庭(英名 Agnes Chow Ting、アグネス・チョウ)のツィッターが痛ましい。
2020年6月28日
今日の香港での報道によると、香港版国家安全法は火曜日(30日)に可決される可能性が高い、そして「国家分裂罪」と「政権転覆罪」の最高刑罰は無期懲役という。日本の皆さん、自由を持っている皆さんがどれくらい幸せなのかをわかってほしい。本当にわかってほしい…?
2020年6月30日
私、周庭は、本日をもって、政治団体デモシストから脱退致します。これは重く、しかし、もう避けることができない決定です。
絶望の中にあっても、いつもお互いのことを想い、私たちはもっと強く生きなければなりません。
生きてさえいれば、希望があります。周庭
「生きてさえいれば、希望があります。」という言葉の中に、切実さと絶望の深さが見える。「自由を持っている、幸せな日本の私たち」が代わって声を上げなければならないと思う。
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2020.7.1より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=15176
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion9899:200702〕