人生百年も金次第

著者: 熊王信之 くまおうのぶゆき : ちきゅう座会員
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老後に年金以外で2000万円が要る、との金融庁の報告に衝撃が広がっています。

国民の大多数が薄々感づいていたことが金融庁の報告で事実の裏付けが出来た、と言うことなのです。 金額に相違はありますが、金融機関の広報には過去から老後資金の蓄えが必要、と謳われ、投資についても税制面でNISA等の裏付けが出来たので若くても月々貯蓄や投資に金銭を託す方々がおられます。

誰も今のこの国の年金が百年安心とは思っていなかったのですが、金融庁の報告で明々白々の事実と改めて知らされ、衝撃を受けたのです。 百年安心なのは、「年金制度」であり、国民の老後が安心なのでは無い、と。

そこで肝心要の国民の老後の備えですが、現在では、凡そ、半数以上が金融庁の報告にある2000万円には届きません。

単身者の調査が無いので不完全なのですが、総務省の資料に依れば、所帯主の年齢が60歳以上の所帯(単身所帯は対象外)の保有金融資産の調査では、2000万円以上の保有者は、40.8パーセントになっています。 調査対象の半数以上の所帯が金融資産2000万円以下の保有者なのです。

図1-2-5 貯蓄現在高階級別所帯分布

出所:平成30年版高齢社会白書(概要版) 平成29年度 高齢化の状況及び高齢社会対策の実施状況 第1章 高齢化の状況(第2節 1) 第2節 高齢期の暮らしの動向(1) 1 就業・所得    内閣府

https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/html/gaiyou/s1_2_1.html

単純に言えば、単身所帯は除くものの、50パーセント以上の所帯で老後資金不足なのです。 これでは、生活保護制度の対象も増加する一方になるのが自明です。 或いは、生活保護も切り捨てられるのでしょうか。

金融庁が焦るのも無理からぬものがありそうです。

さて話題が逸れますが、その金融庁の報告についてです。 端的に言って、金融庁の報告について必読の義務があるのは、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)とアベ政権の方々、と思われます。 加えて、彼等が金融庁に教えを乞うべき内容は、投資の基本である資産分散の初歩的知識と金融経済の現状を知るための基礎を理解する能力、と思われます。

例えば、株式投資、中でも日本株投資の基本ですが、簡単に言えば、高騰した頃、買ってどうするの、とお聞きしたいのです。 日経平均が一万円を切っていた時期に買って、昨年来の株安時期前に売るのが当然の処、高騰した時期に買っていれば損するのは当然で、従って、年金基金を十数兆円も棄損する結末になるのです。

アベノミクスのためのギャンブル運用で年金15兆円が溶けた! 女性自身 記事投稿日:2019/02/21 06:00 最終更新日:2019/02/21 06:00 https://jisin.jp/domestic/1713526/

その原因は、現在のGPIFが、投資の基本に忠実な売買が不可能だからです。 理由は、アベの何たらの成功を表面的に「見える化」するために日本株を買うことを義務づけられているからです。 日銀と同じく、です。 これは、証券界の関係者ならば常識でしょう?  今や、日本株は、官製相場になってしまっていることを。

上記の事実も、証券界の方々は、重々、承知しつつも、自らは口に蓋をしつつ知らぬ振りですので、上記のように女性自身等の場違いな媒体しか事実を報じません。 日経等は、報じてもその他の報道に交じり大々的には報じないか、素知らぬ振りです。 でも彼等は、仲間内や友人、知人には、日本株は止めておけ、と言います。

市場で午前中に売りが膨らみ暴落した午後には、大口の買いが入り、結果的に暴落が落ち着く、と。 個別株の買いでは無く、ETF(上場投資信託)なので、幅広く値動きする、と。 さて何時まで持つのか、と心配だ、と。

債権投資についても、外国債券投資では、利回りと外貨の値動きの両者で損得が出来るので、外貨に換えるタイミングが難しいのです。 簡単に言えば、リーマンショック時には円が対ドルで100円を割ったことがありますが、その時に外貨に換えておけば今でも利益が出る訳です。 GPIFにそのような機動力があるのでしょうか? 純粋に利益のみを追求するだけの投資に徹することが可能か否か、です。

今や、金縛り、では無くて、アベ縛りになってしまった可哀そうなGPIF。 これで基金を損じるな、と言われても、ね~。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion8726:190616〕