何だこの安倍晋三政権の税制政策は!? 社会保障関連の改悪政策とセットで見れば、これは「口先やるやる詐欺」民主党政権を上回る悪質な「政治詐欺」だぜ

まずは、昨年末の新聞報道をいくつか見ていただきましょう。

 

<税制関連>

1.法人減税、2年で3.29% 税制大綱きょう決定(朝日新聞 2014.12.30)

http://digital.asahi.com/articles/DA3S11530806.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11530806

 

(エッセンスは)

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(1)法人税率1%分が4700億円の税収 ⇒ 4700×3.29%=約1兆6千億円の税収減。しかし、この法人税減税の恩恵にあずかる黒字企業は日本全体の約3割の75万社。しかも、その金額の大半は、ほんの一握りの特権的大企業など数千社。まさに「1%」のための減税だ。

 

(2)これを「赤字の企業でも事業規模などに応じてかかる「外形標準課税」を強化するなどして、段階的に穴埋めする。外形標準課税は税率を15年度は1・5倍、16年度は2倍にするが、来年度からの2年は減税が増税を上回る「先行減税」となる。」

 

が、しかし、「外形標準課税」は、採算の厳しい中小企業泣かせの税金で、収支の厳しい中小企業は、一方で法人税減税の恩恵にあずかれないまま(赤字か収支トントンだから)、この「外形標準課税」によって、更に税金をまきあげられることになる。(往復ビンタ)

 

(3)法人税を減税して一握りの特権企業に「つかみ金」をつかませても、その金は、①内部留保、②配当金(この配当金には幹部役職員が投資する投資ファンド向けがかなりある)、③幹部役職員の特権的報酬 となるだけで、一般職員はもちろん、非正規職員や下請け業者などにはビタ一文回らないどころか、引き続き「搾りとられる」だけである。これは、2001年の小泉政権以降の市場原理主義政策下での日本経済が実証してしまっている(経済統計に露骨に表れている)。しかし、資本主義とはそういうものだ。景気のいい悪いは、もはや貧乏人庶民にはほとんど関係がない(あるとすれば悪い影響だけ)。

 

(4)タクス・ヘイブンを使った国際節税・脱税など、大企業を中心に広がっている租税回避行為に対する政府・国税当局の断固たる対応が全然見られない。いまや、インターナショナルな巨大企業は、法人税を含めてほとんど税金を納付していないことが知られているが、これに対して「指をくわえて眺めている」のが日本の政府・税務当局である。(武富士の息子の相続税裁判の結果を見てみよ。日本では裁判所までが富裕層・資産家の国際的租税回避行為を追認している始末である。情けねえったらありゃしねえ。バカバカしくて税金など払っておれるか、と怒鳴りたくなる)

 

(5)いわば、強きを助け弱きをくじく、任侠「森の石松」が激怒しそうな税制改悪だ。しかも、法人税減税の原資が「外形標準課税」増税だけでは足りないので、下記でご紹介するロクでもない減税のための原資を含めて、おのずと消費税の増税分が回されることになる。つまり、税と社会保障の一体改革のための消費税というのは嘘八百であって、その実態は、特権的大企業や富裕層・資産家向け減税原資確保のための消費税増税ということである。屁理屈よりも金の出入りの数字を見れば、一目瞭然だ。

 

2.相続税増税・贈与税大幅減税

(1)一人親から相続 負担増、非課税枠 新年から縮小(東京 2014.12.29)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2014122902000120.html

 

(2)結婚・育児も贈与税非課税、来年度、子・孫1人に1000万円(朝日新聞 2014.12.28)

http://www.asahi.com/articles/DA3S11528563.html

 

(3)住宅贈与 非課税3000万円(日経 2014.12.27)

http://www.nikkei.com/article/DGKKZO81411580X21C14A2MM8000/

 

(エッセンスは)

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相続税が増税されるのは、一部の例外を除けば(たとえば居住用住宅とか、小規模家業用資産など)、当然のことであるが、それではお金持ち・資産家の皆様には申し訳がないと、今般、贈与税制を使って大盤振る舞いをおやりになるようだ。そもそも贈与税とは、相続税が脱税されないための「抜け道封じ」のための税制なのに、その贈与税に「大穴」を開けて、裏口から納付されるべき税金がジャジャ漏れになる仕組みをつくってしまったというわけである。ふざけんなよ、こちとら、子どもや孫に贈与するお金どころか、自分の老後の生活費で汲々としているのだ。自分にはカンケーネーなどとは言ってられないのは、この贈与税減税の原資も消費税だからだ。

 

今回の贈与税で非課税となる金額の合計は

(1)一般基礎控除 110万円/年

(2)結婚・妊娠・出産・子育てのための贈与 1000万円

(3)教育資金の贈与 1500万円 (贈与者は親や祖父母でなくても、アカの他人でもいい ⇒ なんじゃらほい=何か裏があるぞ!)

(4)住宅購入資金の贈与 3000万円

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合 計  5610万円

 

これじゃ、相続税を増税したことにはならんで。(4)は住宅業界へのテコ入れ政策と兼務、また、(2)~(4)は信託銀行が事務取り扱いとなるので、銀行業界も万歳三唱だ。そして、やっぱりこれも、我々貧乏人には無関係の減税にすぎない。

 

3.車減税、低燃費に重点、エコカー基準引き上げ(日経 2014.12.27)

http://www.nikkei.com/article/DGKKZO81412820X21C14A2EA2000/

 

(上記ではわかりにくいので、こっちを見て下さい)

(1)http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141231-00000001-rps-soci

(2)http://news.yahoo.co.jp/pickup/6143617

 

(エッセンスは)

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石油を燃やして走る車を、日本列島のような狭苦しいところにうんざりするほど走らせておいて、更に、車の売り上げを伸ばしたいからと、これまで「走る公害」の車に課せられていた税金まではずして、車を買う人の負担軽減をして、車の売り上げを伸ばす「政策支援」をしている。要するに、自動車メーカー・自動車業界へのゴマすり以外の何物でもない。それを「エコ」とはよく言ったものだ。こんなものは、やめちまうのが最も「エコ」であり、また、車に対して更に税金を掛け、その税金で公共交通を拡充したり、買い物弱者対策に充てる方が、よほど社会的に公正で効用も高い。

 

おまけにけしからんのは、TPP交渉でアメリカの言い分を受け入れるために、公共交通が衰退した地方の「足」になってしまっている軽自動車の課税を強化し、返す刀で、その軽自動車に燃費基準の減税を入れるということは、地方の人々に向かって、新車に買い替えろ、と強要するようなものである。(スズキの社長の怒りを鎮めるには役に立ったかもしれない)

 

そして、こうした自動車業界のためだけの、エコでもない、ロクでもない、自動車減税に対しても、その原資は消費税増税が使われる。本来は自動車関係税は増税をして、(似非民営化の)道路公団の借金返済に使うべきところである。

 

4.その他

(1)賃上げ減税 要件緩和(朝日新聞 2014.12.29)

http://www.asahi.com/articles/ASGDX5H94GDXULFA004.html

 

(あほらしい。全国一律最低賃金1000円を制度化すればいいだけの話:田中一郎)

 

(2)たばこ税特例廃止(読売新聞 2014.12.30)

http://www.yomiuri.co.jp/economy/feature/CO012591/20141230-OYT8T50002.html

 

(たばこはやめた方がよろしいから増税してもいいと思うが、庶民が愛用している低額タバコが狙い撃ちで増税されている:田中一郎)

 

(3)自社株買い減税に制限(日経 2014.12.27)

http://www.nikkei.com/article/DGKKASFS26H07_W4A221C1PP8000/

 

(そもそも、なんで自社株買いをしたら減税できるのや、こんな制度はさっさと全廃にしろ:田中一郎)

 

<社会保障関連>

1.介護保険料軽減 大幅に圧縮(朝日新聞 2014.12.30)

http://www.asahi.com/articles/ASGDY4DBDGDYUTFL001.html

 

2.住宅扶助 引き下げへ 生活保護、厚労省が方針(朝日新聞 2014.12.27)

http://www.asahi.com/articles/ASGDV5GMYGDVUTFL004.html

 

3.東京新聞 与党、派遣法の修正提出を要求へ 労組に配慮、骨格は維持政治(2014.12.29)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014122801001545.html

 

4.年金抑制、来年から マクロ経済スライド(読売新聞 2014.12.27)

http://www.yomiuri.co.jp/politics/20141226-OYT1T50134.html

 

(エッセンスは)

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消費税は既に5%から8%に増税されておりますが、その増税分の税収=7兆5千億円は、どこへ行ったのでしょうか? 税と社会保障の一体改革で増税された消費税の使い道は、上記で見られるように、ビタ1文、社会保障に使われている様子はありません。社会的経済的弱者には、まだまだ、どんどん、泣いていただきます、それがいやなら、選挙で自民党を落として下さい、安倍晋三はそのように申しております。

 

<結局の結論>

安倍晋三・自民党政権の税と社会保障の政策は上記で見たようなことです。まさに政治的詐欺です。これから、この上に「アベノミクス」と「地方創生戦略」と「成長戦略」という、ウソ団子3兄弟が乗っかります。喜ぶのは「1%」の特権的大企業・外国資本と、その幹部役職員、富裕層・資産家たちです。その踏み台になるのは「99%」の一般人、つまり私たちだということです。これは今回の衆議院総選挙の大きな「成果」です(・・・・誰の?)。

草々

 

(追)覚え書:「2014衆院選:税に思想はあるか 諸富徹さん」、『朝日新聞』2014年11月29日(土)付。 – Essais d’herméneutique

http://d.hatena.ne.jp/ujikenorio/20141204/p5

http://www.asahi.com/articles/DA3S11480602.html

 

この京都大学の若手経済学者は、世の中ではリベラルで通っている人間のハズ。しかし、この朝日新聞記事に掲載されたこの若い学者の税制論議は「消費税ありき」「消費税以外には増税は考えられない」イデオロギーに執着した、お粗末極まりないもの。そもそも、自分の発言の最初と最後で、その食い違い=矛盾に気が付いていないのかもしれない。あなたの言っていることは、全然違いますよ。京都大学の教授なのだから、もっとしっかりしなはれや。

 

(最初の部分での発言)

「経済のグローバル化によって、お金は容易に国境を越えてしまいます。国家が個人の所得や企業の利益に税財源を求めていくことは、ますます難しくなります。その結果、国家という閉じられた空間で課税できる消費税などの間接税に、比重を移さざるを得ない。それが、いまの先進各国の潮流です」

 

「しかし、国民が等しく負担する消費税には、貧しい人ほど負担の度合いが高まるという逆進性の問題がある。票を持っているたくさんの普通の人に、負担をお願いしなければいけない時代になってきたのです」

 

「一方、歳出で最も大きいのは社会保障費で、その比率はさらに高まっていきます。そこで忘れてはならないのは、払ったお金の大きな部分が国民自身に戻ってくる構造が強まるということです。私が強調したいのは、消費税は単に分配や救済の財源ではなく、人に対して投資をしていく元手だということです。社会保障と聞けば、お金は使い尽くされてしまう、というのが多くの人の認識でしょう。けれども、病に倒れた人がきちんと手術を受け、能力も意欲もまだある人が命を失わずに済み、社会に復帰して働けるというのは、大切なことです。消えてしまうお金ではありません」

 

(最後の方の発言)

「確かに格差拡大は問題ですが、短期間でピケティ氏のプランが実現することはないでしょう。私は二段構えでいくべきだと考えています。まずは、国内の税制を極力公平なものにする努力をし、税収はきちんと人への投資と再配分に充てる。その上で、グローバルに活動する企業や金融所得に対して、グローバルな課税の枠組みをつくっていくのです」

 

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(田中一郎コメント)

ひょっとして、最後の部分は、申し訳なさを隠すための美辞麗句なのかな。ならば、巧言令色少なし仁だ。