何の変哲もない日常から少しだけずれて出現する世界

2011年10月19日 連帯・共同ニュース第173号

■ 経産省前のテントには座り込みをはじめてからの日数が書き込まれている。誰が始めたのかは分からない。でもここにはテントに関わる人たちの思いが込められている。一日でも長くテントが存続することである。ここにはさしあたって次の週末に予定されている「原発いらない福島の女たち」の経産省前座り込み(10月27日~29日)をこのまま迎えたいということがある。さらに10月30日~11月5日までの「原発いらない全国の女たち」の座り込みもある。もう一つ付け加えれば11月11日17時30分からの再度の経産省を人間の鎖で包囲する闘争予定もある。3月11日以降、各方面で裾野が広げられている脱原発の動きであるが、他方で集中点は拡散しているようにも見える。次の週末から展開される経産省まえの女性たちによる座り込み闘争は脱原発の当面の課題を浮き彫りにして行くと思える。それは経産省が原発推進の奥の院として原発再稼働→原発保持という戦略で動いていることに対し再稼働阻止→原発廃炉という戦略が対峙するからだ。野田内閣は原発に関する話題を避けながら、このまま行けば来年の春には全原発が稼働停止にいたる事態を危惧している(現在稼働している原発は54基中の10基である。この10基も来年の春までに稼働停止になる)。経産省がこの事態に危機感を抱き早くから原発再稼働を画策してきたことはよく知られている。菅内閣時代の原発再開をめぐる騒動を思い浮かべて欲しい。話題から避けるという権力の戦略に対して、問題を鮮明化することがこちらの戦略だ。再稼働阻止である。

■ 10月27日から女性が中心となった経済省前の座り込み闘争は脱原発運動の当面の焦点を浮かび上がらせる。と、同時に脱原発の運動に新しいエナジーを吹き込む。まず、原発の存続に子どもたちの未来も含めて鋭敏に反応する女性たちの行動はそれだけ大きな影響がある。これは運動の裾野の広がりに寄与する。そして、また、この座り込みという運動(意思表示)形態は期間的な座り込み闘争に終わらないで、持続的な意志表示として発展して可能性もある。現在、世界的に展開されている占拠のような形態へ発展するか、どうかはわからないがその道もある。現在の脱原発運動は可視的な形態の、しかも持続的な運動形態が要請されている。例えば、脱原発のテントが全国で立ち、脱原発のテント村が風景となって原発再稼働と対峙しているようなである。脱原発の共同広場では祝祭も必然的に生まれ精神的にも豊かになる。座り込みはこんな運動への発展の可能性を秘めている。『ウォール街』の占拠もあまり違わないはずである 。(文責 三上治)