日本の現政治状況は、正しく危機的です。 これは、政治に止まらず、経済でも、また司法の分野に於いても、その他思いつく限りの分野でも。
何が横行していて危機になっているのかと考えますと、複雑系の問題に単純極まる論理(?)で以て望み、全てを解決出来る万能薬が出現したかの如く説き廻る宣教師若しくは手品師を中心に、彼らに盲目的に従う集団が出来上がるのです。
アベノミクスがそうです。 アベ・クロコンビの金融・経済の常識を無視した財政ファイナンス丸出しの異次元金融緩和と、国家財政の現状を考えれば正気の沙汰では無いバラマキに依って何が起こるのかを冷静に考えず、これしか無いとばかりに実行する権力者と、彼らに追随する人達を観ていますと、ヒトラーにナチ式敬礼を捧げた人々のモノクロの映像が眼前を過ぎります。
また、ナチ突撃隊、若しくは、ナチ親衛隊の如く、反対派を攻撃し、あらゆる手法に依って排除しようとする輩が主没するのも同様です。 試みに、アマゾンでリフレ批判書物のレビュー欄を御覧下さい。 書評をするのに読みもせずに罵詈雑言で満ちた非難合戦がされています。 最近まで金融・経済関係の書物とは関係も無かった人々が、下品な言葉で著者を攻撃し、仲間内で盛り上がっています。 ナチに似た仕業としか言いようがありません。 ナチも焚書坑儒をしましたが、現代にも同様な行いをする勢力があるのでしょう。
憲法学者の水島朝穂教授は、こうした状況を催眠術に準えられます。 教授曰く「催眠術の手法は政治の世界にも浸透している。『SF政治』(催眠政治)である。時には甘言を弄し、時には脅迫的言辞を伴い、表に裏に、陰に日向に、人々に特定の政策を刷り込んでいく。なぜ、人々の生活にとって有益なのか。それが問題解決にとって有効なのかといった検討は脇に追いやられる。とりわけ『バスに乗り遅れるな』は、『SF政治』(催眠政治)の常套句である。それを無批判に垂れ流すメディアの責任は重い。 」
SF政治(催眠政治)にご用心――「アベノミクス」とTPP 2013年5月20日
早稲田大学 水島朝穂教授のブログ
国政レベルに止まらず、地方政治でもこうした現象は顕著です。 東京に比べて地盤沈下が著しい経済その他の面で、威信回復の特効薬で或るかの如くに売りだされた「大阪都構想」等はその典型です。 「改革」、「改革」と叫ぶスローガンと併せると、如何にもナチと似通った政治手法であることでしょうか。 こんな手法は古典的な地方首長の「実績作り」で、制度の改変を自身の政治実績と呼ばわる一種の詐欺です。 ほら、貴方のお住まいの自治体でもしているでしょう。 「機構改革で市民本位の○○(市町村)の実現と行政改革」とか何とか云っているのがそれです。 実は何もしていません。 看板の架け替えをしただけです。
新条例作りゴッコもそうです。 「○○(市町村)安心安全条例」とか「○○(市町村)市民なんとか憲章」とか色々ありますが、そんなものあっても無くても市民生活には何の関係もありません。 如何にも仕事しているように観えますけれど、実態は空中楼閣。 言葉の遊びです。 そんなものを作成するのに時間を空費して、地方公務員の給料無駄使いです。 今は絶版かも知れませんが、その昔に「自治体珍条例集」とかと云う書物がありましたが、「痴呆自治体」のレベルが分かり面白かったです。
その昔に公害が市民の生活と健康を害するために何とか規制の手法を探り、法律の下位にある条例では根拠を欠き規制が出来ないので、苦肉の策で民法上の「契約」を企業と交わして「公害防止協定」として公害規制に寄与して来られた地方自治体の公害防止行政の任にあった先駆者達と比較して、何と程度の低いことでしょうか。 或いは、街づくりのために「開発指導要綱」等の法令では無い「要綱」を作成し、行政指導に依り法令の間欠を縫った開発を規制して来られた土木・建設行政の公務労働者達の苦労と比べて、何とあさましいことでしょうか。