2024年11月28日に行われたオックスフォード・ユニオン・ディベートにおけるパレスチナ人スーザン・アブルハワさんの鋭く感動的なスピーチです。
https://x.com/mariyatomoko/status/1871732118092738675
【この土地の先住民への対応という難題について】Susan Abulhawa
ロシア人系ユダヤ人のハイム・ヴァイツマンは、1921年の世界シオニスト会議で、次のように述べた。パレスチナ人は「ユダの地の岩であり、困難な道を進むために取り除くべき障壁である」と。
ポーランド系ユダヤ人のダヴィド・グリューンは、彼はユダヤ風の響きにするためダヴィド・ベン=グリオンに改名したが、次のように語った。「我々はアラブ人を追い出して土地を手に入れる必要がある」。
初期のシオニストたちは同様の発言を数多く残している。暴力的な植民地主義を計画実行した人々であり、先住民の絶滅を画策した人々である。
その試みは完遂されなかった。パレスチナ人の8割を虐殺し、民族浄化したが、残りの2割は留まった。植民地の完成という邪悪な野望にとって、その後の数十年にわたり、その2割が障壁となった。
1967年にパレスチナ全土を征服した後は、さらに邪魔になった。シオニストは、私たちが存在することを悔いている。彼らはさまざまな場面で公に議論した。パレスチナ人やその出生率にどう対処すべきか。彼らは赤子を人口動態の脅威と呼んだ。
ベニー・モーリスはこう語った。ダヴィド・ベン=グリオンは公の場でこう悔やんだと。「パレスチナ人を追放しきれなかった。もし完遂していたら”アラブ問題”は存在しなかった」。
ベンヤミン・ネタニヤフはポーランド系ユダヤ人で、本当の名字をミレイコフスキーと言い、1989年の天安門事件の好機を逃したと悔やんだ。この機にパレスチナ住民を一掃できたはずだったと。「世界が中国に目を向けている間が好機だった」と。
疎ましい存在の私たちをイスラエルは解決しようとした。80年代と90年代に行われた「骨を折れ」作戦も、その一つである。
指示したのはイツハク・ルビツォフ、ウクライナ系ユダヤ人で同じ理由からイツハク・ラビンに改名した。恐ろしいこの方針により、私たちの多くが手足を失ったが、私たちを追い出すことはできなかった。
私たちの不屈の精神に苛立ち、新たな言説が生まれた。ガザ北部の海上に莫大な金銭的価値をもたらす大規模な天然ガスが見つかった後に、特に顕著になった言説だ。エフライト・エイタン大佐の発言が基になっている。2004年の彼の発言は「皆殺しにすべきだ」。
同国で知性と政治について助言するアーロン・ソファーは、2018年にこのように述べた。「殺して、殺して、殺し続ける必要があるが、一日中、毎日続けるのだ」。
私が今年ガザに入ったとき、9歳にも満たない男の子がいた。彼の両手と顔が吹き飛ばされていた。イスラエル軍は空腹の子どもたちを狙い、爆発物を仕掛けた缶詰を置いた。
後で知ったことだが、シュジャイヤ地区では毒入りの食料が使われた。1980年代と90年代には、イスラエル軍は南レバノンで罠を仕掛けたおもちゃを残した。子どもたちが持ち上げると爆発した。彼らの攻撃は悪魔的である。
しかし、彼らの主張によれば、彼らは被害者なのだそうだ。欧州のホロコーストや反ユダヤ主義を持ち出すことで、皆さんの基本的な理性を麻痺させようとしている。毎日のように子どもたちを狙撃する「キル・ショット」も、地区ごとに爆撃して家族全員を生き埋めにし、血統を絶やすことも自衛なのだとか。
イスラエルの主張によれば、ある男が72時間なにも食べずに片腕だけで最後まで闘った理由は、彼の残虐な性格だと言う。ユダヤ人への理不尽な憎悪や嫉妬心が原因だと言う。祖国の人々が解放されるのを見たいという願いではないと言う。
私にとっての論点は、イスラエルがアパルトヘイトやジェノサイドに該当するかではない。パレスチナの命の価値についてだ。私たちの学校の価値についてであり、私たちの研究所、書籍、芸術の価値について。私たちの暮らしてきた先祖代々の記憶が詰まった家のその価値について。私たちの人間性と主体性の価値について。身体や将来の夢の価値についてだ。
立場を変えてみよう。
パレスチナ人がこの80年間でユダヤ人の家を奪い続けていたら。
追放し、抑圧し、投獄し、毒を盛り、拷問し、レイプして殺していたら。
もしパレスチナ人が1年で30万人のユダヤ人を殺していたら。
記者、知識人、医療関係者、スポーツ選手、アーティストを狙い撃ちしていたら。
イスラエル国内のすべての病院や大学を、図書館、文化施設、シナカーゴを爆撃していたら。虐殺の様子を見物できる場所を用意し、観光スポットとして市民が集まっていたとしたら。
もしパレスチナ人が大量のイスラエル人を粗末なテントに押しやり、「安全地帯」と呼ぶ場所で爆撃し、生きたまま人を焼き、水、食料、医療品が届くのを阻止したら。
もしパレスチナ人によって、ユダヤ人の子どもたちが空の鍋を手にして裸足でさまよい歩き、両親の肉片をビニール袋に集めなければならないとしたら。
肉親や友人を埋葬することになったら。
子どもが真夜中にテントを出て、親の墓の上で眠るようなことがあったら。
死を願うしかなく孤独で、ひどい現世を終わらせて家族の元へ行きたいと祈るとしたら。
パレスチナ人が非道なテロを仕掛けて、ユダヤ人の子どもたちの髪が抜け、記憶が消えて、心が壊れ、5歳にもならない小さな子どもが心臓発作で死んだら。
もし私たちがユダヤ人の未熟児を死に追いやり、その泣き声が尽きるまで病院のベッドに放置したら。保育器の中で死に絶え、体が腐乱していたら。
もし私たちが、小麦粉を載せたトラックでユダヤ人の子どもをおびき寄せ、食事を得ようと群がる人々を撃ち殺したとしたら。
もしパレスチナ人が、飢えたユダヤ人の避難場所に食料の搬入を許可し、その後、避難場所と支援トラックに火を放ち、空腹のユダヤ人を殺したとしたら。
もしパレスチナ人のスナイパーが、1日に42人のユダヤ人の膝を撃ち抜いたと自慢したら。2019年にイスラエル兵がやったように。
もしパレスチナ人がCNNのインタビューで、戦車で数百人のユダヤ人を轢いたと証言し、キャタピラに肉片が絡まっていたと語ったら。
もしパレスチナ人が、ユダヤ人の医師や患者や拘束者を組織的にレイプしていたら。
熱した鉄の棒、電流を流した器具や消火器を使ってレイプしていたら。
レイプの末に殺していたら。アドナン・アル=ブルシュ医師やほかの被害者のように。
もしユダヤ人の女性が汚物の中で出産を強いられたら。
麻酔なしで帝王切開や足の切断手術強いられたら。
もし私たちがユダヤ人の子どもたちを殺戮し、そのおもちゃを戦車に飾ったら。
ユダヤ人の女性を追い出して殺し、その下着を着けて記念撮影したら。
もし世界中の人々がネットの中継で、ユダヤ人の絶滅をリアルタイムで見ていたら。
それがテロやジェノサイドなのかという議論など起こらない。
それなのに2人のパレスチナ人、つまり私とムハンマド・エル・クルドは、その議論のためにここに来た。彼らとの屈辱な議論に耐えながら。
パレスチナ人に故郷を捨てるか、彼らの優越性にひれ伏すか、お行儀よく黙って死ぬことを迫る彼らとの議論に耐えながら。
私がここに来た目的を何かの説得と思うなら、間違いです。
この動議は善意に基づくもので、その点は評価するが、現代のホロコーストのただ中ではあまり意味をなさない。
マルコム・Xとジミー・ボールドウィンの精神を受け継ぎここに来た。2人は私が生まれる前にケンブリッジとこの場所に立ち、上品な身なりの怪物たちと対峙した。
シオニズムと同じ優越主義を持つ人たちだ。神に選ばれた特別な祝福を受けていると。特権を持ちその資格があると考えている人たちだ。
私は歴史のためにここに来た。未来の世代に言葉を残すため、この異常な時代の年代記のために。無抵抗の先住民への絨毯爆撃が正当化される時代の年代記のため、この場所や各地にいるシオニストに直接語りかけるために来た。
私たちはユダヤ人を招いた。あなた方の母国では迫害が起きていた。ほかに助ける人はいなかった。食べる物を、着る物を、住まいを用意した。私たちの土地の恵みを分かち合った。
そして機が熟すと、あなた方はパレスチナ人を追い出した。
殺し、盗み、火を放ち私たちの生活を奪った。
私たちはひどく傷つけられた。
あなた方は他者を支配する以外に生きる方法を知らないからだ。
あなた方は一線を越えた。人間の最も下劣な衝動を育んできた。
世界はついにイスラエルによる長年の蛮行を目にした。
あなた方の正体が明らかになった。
その過去も暴かれた。
世界は驚愕して見ている。
痛めつけることに楽しみと悦びを見い出だし、私たちの身体、心、未来、過去を日常的に破壊して、それを見て喜ぶあなた方を目撃している。
この先に何が起きても、あなた方がどんな空想を自身と世界に語ろうとも、あなた方はあの土地の民にはなれない。
オリーブの木がいかに神聖か分からないだろう。あなた方は何十年も切り倒し、燃やしている。単に私たちに嫌がらせをしたいという理由で。
本当の先住民ならオリーブにそんなことはできない。
この土地の民であればバールベックやバティールなど古代遺跡の爆撃や破壊などできない。エルサレムにある英国国教会墓地を破壊したりしない。
マーマニアにある古代のイスラム学者や戦士の墓を破壊しない。
この土地の者であれば死者を冒涜しない。
だから私たちの一族は何世紀にもわたり、オリーブ山にあるユダヤ教徒の墓守りをしてきた。私たちの歴史や物語の一部を織りなす人々への奉仕や敬意の実践として、あなた方の祖先は代々、本当の故郷に埋葬されていた。
ポーランドやウクライナ、一族が住んできたどこかの国で。
この土地の神話や伝承は、あなた方になじみがない。
あなた方には読み解けない。私たちの服が意味するものを。
女たちが何百年と伝えてきた土地の言葉である。
モチーフ、デザイン、模様の一つひとつが土地の言い伝え、植物、鳥、川、野生動物の秘密を語っている。
イスラエルの不動産業者が掲載する高額物件に「アラブの古い家」があるが、その家を建てた祖先の物語と記憶は石に刻まれている。
この土地の大昔の絵画や写真にあなた方は見当たらない。
何も得られないばかりか失うかもしれないのに、
愛情と支持が寄せられる人の気持ちは理解できないだろう。
世界中で通りやスタジアムに押しかけて、他者のために歌う民衆の気持ちは分からないだろう。
それはあなた方がユダヤ人だからではない。
そう主張したとしても、あなた方が暴力的な植民地主義者だからだ。
ユダヤ人であることが……(一時中断)
あなた方が暴力的な植民地主義者だからだ。
ユダヤ人だから家を奪う資格があると。
私たちの祖先が建てた家を横取りできると。
その土地で一族が数百年も受け継いできた家を。
なぜなら、シオニストはユダヤ教にとって害悪で、人道における汚点であるからだ。
その土地になじむよう名前を変えるがいい。
ファラフェルやホンモスやザアタルなどの料理を、ユダヤの伝統料理だと吹聴するがいい。しかし心の奥底では、この壮大な改ざんと盗用が心にトゲを残している。
だからこそ、たとえ子どもが描いた絵が国連や病院の壁に飾られているだけで、イスラエルの指導者や法律家が発狂してしまうのだ。
私たちは消滅しない。
あなた方がパレスチナ人を何人殺そうと、毎日ずっと殺し続けようと。
私たちはヴァイツマンが言う「取り除くべき岩」ではない。
私たちは大地そのものだ。この土地の川や木々、そして物語だからだ。
私たちの肉体と生活は、そのすべてに根を張っている。
私たちの一族は千年以上もこの土地に住み続けている。ヨルダン川と地中海に挟まれたこの土地で。
カナン人、ヘブライ人、ペリシテ人、フェニキア人を祖先に持ち、征服者や巡礼者が行き来し、結婚やレイプがあり、恋愛や奴隷の関係もなり、改宗があり、この土地で祈りを捧げてきた。
私たちはその一つひとつを受け継ぎ、肉体に宿している。
この土地に根付く激動の物語は、文字通り私たちのDNAに刻まれている。
あなた方は、それを殺したり偽ったりではない。
どんな死の技術を使っても、ハリウッドやメディア兵器を投入しても。
いつの日かイスラエルの不処罰と傲慢には終わりが来る。
そしてパレスチナは自由になる。
複数の宗教と民族が集う多元主義の栄光が復活する。
かつての列車も復活させよう。
カイロからガザ、エルサレム、ハイファ、トリポリを経て、ベイルート、ダマスカス、クウェート、サナアまで延伸しよう。
シオニストによる米国の戦争マシンに終止符を打とう。
支配、侵略、搾取、汚染、略奪を終わらせよう。
あなた方はこの地を去るか、ようやく他者との対等な共生の道を知ることになるだろう。
~~~~~~~~~
以上、18分の字幕スーパー翻訳者は毯谷友子さん。字幕スーパーを上記のように文字化したのは、「戦争をさせない市民の風」のパレスタ(パレスチナ連帯スタンディング)チームの影山さんで、沓沢さんから送られてきました。人名などカタカナ表記を一般的呼称に改めたものもあります。(松元)
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye5884:250118〕