公文書管理法と情報公開:今やアジアで最も遅れた「国民・市民そっちのけ政府」の情報独占・囲い込みと公文書管理の状況(瀬畑源・久保亨著 『国家と秘密:隠される公文書』(集英社新書)より)

日本という国が近代国家として歴史に登場した明治以降、いや、アジア太平洋戦争の

大きな犠牲の上に築かれた日本国憲法体制という、曲りなりにも近代民主主義を国家

原理とする体制ができて以降70年の今日まで、残念ながら、この日本では、政治や

行政が有権者・国民のためにあるためには絶対に欠かすことのできない(政治及び行

政の)情報の公開と公文書の適正管理という「2本の表裏一体の大黒柱」が有効に機

能したことがありません。

 

理不尽な政治・行政情報の非公開、あるいは不適切極まりない文書管理の事例は、み

なさまのご記憶に訴えても、たとえば、沖縄返還時における対米沖縄密約や核兵器密

約の問題があり、これは少し前の民主党政権の時代に問題化されて、ある程度明らか

になりました。あの時に、核兵器密約文書が佐藤栄作元総理の自宅の机の引き出しか

ら出てきたことは、まことに驚きの至りでした。あるいはまた、2009年の政権交

代期に話題となった「官房機密費」の資金使途の公開問題というのもありました。政

権交代が行われた時こそ、この「官房機密費」の不適切と思われる資金使途を政権を

引き継いだ内閣が公開するとか、あるいは裁判所のようなところや有権者・国民・市

民の代表組織のようなところがその資金使途をチェックするとか、何らかのメスが入

れられるべきでしたが、それも未実現のままです(だから今も、その資金使途は、お

そらくでたらめ状態でしょう)。また昨今では、九州電力川内原発の再稼働にかかる

工事計画認可書が、黒枠シロ塗り(マスキング)だらけの実質非公開文書として原子

力規制委員会・規制庁によって公表され、その工事計画認可が本当に妥当なものかど

うかが、日本の専門家を含む部外者には検証できない状態に放置されたまま、原発が

再稼働されたのです。許されないことです。

 

更には、3.11福島第1原発事故直後の原子力災害対策本部における会議の議事録

未作成、あるいは、安倍晋三・自公政権による戦争法案策定過程における内閣法制局

の集団的自衛権行使の是非をめぐる検討過程の記録の不存在(40年間以上続いた日本

国憲法第9条解釈の変更をめぐる議論)、あるいは、3.11福島第1原発事故時に

おける東京電力本社と福島第1原発現場などを結ぶTV会議録画のしぶしぶの限定・

制約付き公開と3/15午前など、肝心な部分の録画非公開、あるいは、政府事故調

の秘密調査・調書非公開とその後の部分公開(東京電力幹部らの調書は依然非公

開)、そして国会事故調の膨大な資料の未整理と非公開・利用拒否などなど、枚挙に

いとまがないほどに、日本における公文書・公開されるべき文書類の非公開ないしは

未整理の現状は目に余ります。

 

思い起こせば、今から15~20年前、日本の多くのニセモノ政治家どもは、時の政

治課題の優先事項に、国レベルの情報公開制度の確立を挙げて、ピーチクパーチク、

どこまでやる気があるのかわからないような美辞麗句を繰り返し繰り返しわめいてい

たことを覚えています(その筆頭格が現在の民主党の政治家たちです)。欧米諸国で

は、少なくとも1970~80年代までには、国や自治体レベルでの情報公開制度や

公文書管理体制は確立され、それに日本を除くアジア諸国が続いていきました。しか

し、日本では、神奈川県庁や山形県金山町など、国などに比べて住民に近い存在で

あった自治体での情報公開が先行する形で制度化が進んでいきましたが、肝心の国=

つまり霞が関諸官庁とその外郭団体の情報公開は遅々として進みませんでした。

 

日本という国の政治や行政が、有司専制と言われた明治政府以来、有権者・国民・市

民のためにあるのではなく、一部の特権的な政治家や幹部官僚たちのためにあるの

だ、ということを見事なまでに証明する事態であったと言えるでしょう。それは言い

換えますと、日本の政治や行政が、多様な有権者・国民・市民の意見や要望を反映し

た民主主義・立憲主義に基づく有権者・国民・市民のための政治や行政ではなく、一

握りの勘違いした特権的政治家や幹部官僚たちによる有権者・国民・市民の(上から

目線での)「統治」=政治的支配の永続的有効性や効率性を主眼とするものであるこ

とを、いみじくも表しているのだと思います。つまり、政治や行政が持つ情報が、も

ともとは有権者・国民・市民の共有財産であるのだという認識に基づいて「情報公

開」されるのではなく、有権者・国民・市民を「支配する対象」とみて、その「世

論」を巧みに操作・誘導するためにする(支配する側の恣意と都合に基づいて取捨選

択された)「情報の提供」がなされているということです(よく言われる「由らしむ

べし、知らしむべからず」です)。昨今、安倍晋三自公政権が日本国憲法破壊の立憲

主義の否定に突き進んでいるのも、日本の政治のこうした後進性・前近代性を反映す

るものにほかなりません。

 

●日本で最初に情報公開制度をつくった自治体    山形県金山(かねやま)町の

ユニークな挑戦 ≫ bunanomori

http://www.bunanomori.org/NucleusCMS_3.41Release/?itemid=325

 

●asahi.com(朝日新聞社):原発事故対応、議事録なし 政府対策本部、認識後も

放置 – 東日本大震災

http://www.asahi.com/special/10005/TKY201201240551.html

 

●民は之に由らしむべし、之を知らしむべからず – 故事ことわざ辞典

http://kotowaza-allguide.com/ta/yorashimubeshi.html

 

結局、すったもんだの上、日本の歴史上初の国の情報公開法は1999年制定・20

01年施行となりました。しかし、みなさまご承知の通り、この現情報公開法は、そ

の法律の抽象的な美辞麗句とは真逆に、実質的には「情報非公開法」といわれるほ

ど、情報の非公開を合法化・合理化する法律にすぎず、その後、多くの有識者より、

その抜本改正が提唱され続けてきましたが、変わることなく今日に至っています。そ

れどころか、実は、この2001年の情報公開法施行時に、多くの霞が関官庁とその

外郭団体において、重要と思われる行政文書が有権者・国民・市民に知らされぬまま

大量に破棄(または隠蔽・隠匿)されており、更には、情報公開法施行以降は、そも

そも日常的に行政文書を作らないで「文書不存在」状態を意図的に作り上げてしまう

という、反有権者・国民・市民的な態度が体に染みついている霞が関官僚どもの悪行

が目立ち始めたのです。これでは、つまでたっても国や行政機関の有権者・国民・市

民に対する説明責任は果たされることはありません。公文書管理法は、こうした永田

町と霞が関の一部特権政治家や幹部官僚たちの「後ろ向き」の姿勢を、改めさせる一

つの技術的な手段として、また、情報公開法の主旨を文字通り実現していくためのス

テップとして新たに検討の課題となり、具体的には福田康夫総理の時に、その英断を

もって制定の道筋がつけられ、その後の麻生太郎内閣の時代に制定運びとなったと言

われています(2009年6月制定、2011年4月施行)。

 

●総務省 *情報公開法の制定・施行に係る主な経緯

http://www.soumu.go.jp/main_content/000121080.pdf

 

しかし、その後の事態の進展も思わしくありませんでした。その一つは、この公文書

を保管する国立公文書館の問題があります。しかし、何といっても2013年12月

6日に安倍晋三・自公政権によって圧倒的な有権者・国民・市民の反対を退けて強行

採決で可決成立させられた特定秘密保護法が大問題です。この特定秘密保護法です

が、そもそもこれが、つい15~20年ほど前には「情報公開の重要性・必要性」だ

の「ガラス張りの政治の実現こそ政治改革の事始め」だのと、口先三寸でピーチク・

パーチクわめいていた民主党議員たちが政権の座にあった時に、その骨格づくりの画

策が進められたのでした(これを担当した審議会のロクでもない委員たちを選んだの

は民主党政権です)。そして、その後の安倍晋三政権において、法案とされ可決成立

させられたのです。

 

この特定秘密保護法は、まさに政府のご都合主義的情報隠蔽永久化法であり、支配権

力が自分たちのために政治や行政を私物化していくためには必要不可欠な「政治・行

政不透明化法」そのものです。それが民主党と自民党との「合作」でつくられたこと

は、しっかり記憶にとどめておかなければなりません。この2つの政党は、有権者・

国民・市民が政治や行政の主役であり、また最優先の受益者であるとは考えていない

=すなわち、自分たち政治家やその仲間の霞が関幹部官僚たちが支配・統治・誘導・

差配する対象であるとしか考えていない、ことをいみじくも特定秘密保護法制定過程

の中で露呈してしまったのです。

 

(また、公文書管理法も情報公開法も、主として行政を対象としており、日本国憲法

が定める三権分立のあと2つ=国会(議会)と司法(裁判所)については、ほとんど

手が付けられておりません。特に、日本の司法はひどく、裁判そのものが、法廷にT

Vカメラの入ることを禁止するなど、日本国憲法に違反して半ば非公開のような形で

行われており、その前近代性・非民主性は、現代においては、反有権者・国民・市民

的な裁判官たちによって下されるロクでもない悪性・悪質な判決群とともに、グロテ

スクなまでに目立つものとなってしまっています。

 

さて、前置きが長くなりましたが、今回ご紹介する図書は、上記の「政治・行政情

報」公開関連の3点セットの法律(①情報公開法、②公文書管理法,③特定秘密保護

法)のうちの「公文書管理法」についてのものです。著者の瀬畑源氏は、若手の歴史

研究家(現代政治史)であり、情報公開法等の法律の専門家ではありませんが、職業

柄、ひっきりなしに歴史的公文書をよく探索・調査する関係で、日本の公文書管理法

や情報公開制度について、実務的に詳しい方です。

 

この瀬畑源氏がお書きになったこの本は、新書であるので一般の人も非常に読みやす

く、かつ制度のエッセンスや、その制度のどこに問題があるのかをはじめ、さまざま

なことが、平易に、かつコンパクトに、骨太に書かれた絶好の参考書です。是非、ご

一読をお勧めいたします。なお、下記(及び別添PDFファイル)の日経記事にもあ

るように、この公文書管理法は、まもなく施行5年目の見直し作業に入るところであ

り、国会では既に公文書管理法見直しの論点整理のようなものが始まっています。一

読されるにはいいタイミングだと言えるでしょう。

 

申し上げるまでもなく、政治や行政の文書の適正管理・保管とその公開は、民主主義

に基づく政治や行政の基礎の中の基礎です(私は「公文書」といったときの「文書」

の中にデジタル化された画像や映像も含めて考えています。そして、たとえば審議会

などの会議記録などは、今日では、私は活字化された文字情報(議事録)とともに、

デジタル化された画像・映像としても保存され公開されるべきではないかと考えてい

ます)。これが揺らいでいるようでは、民主主義も政治も行政も、まともなことはで

きません。権力の犯罪は常に陰に隠れて、隠されながら続けられるのです。「合衆国

第4代大統領ジェームズ・マディソンが、「監視する権力は、市民が政府に対して有

するもので、政府が市民に対して有するものではない。」と述べてから200年以上

が過ぎましたが、今でも彼のビジョンを実現するための闘いが続いています。政府が

何をしているのか本当のことを知る手段がない限り、市民は政府を監視する権力を行

使することができません」とは、下記サイトで見つけた文章ですが、まさにその通り

でしょう。

 

●情報公開にまつわる日々の出来事-情報公開クリアリングハウス理事長日誌

http://johokokai.exblog.jp/

 

<今回の推薦図書>

●国家と秘密 隠される公文書-久保亨/著 瀬畑源/著 本・コミック : オンライ

ン書店e-hon

http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000033163203&Acti

on_id=121&Sza_id=B0

 

(日々、お忙しい方々のために、上記の図書から、ほんの一部を抜粋したもの(下

記)を別添PDFファイルとしてこのメールに添付しておきます。みなさまには、ぜ

ひ原本を入手の上、そのすべてをご一読されることをお勧めいたします。新書ですの

で、すぐに読み終えられます。内容は平易で読みやすいです)

 

<『国家と秘密 隠される公文書』抜粋>

(1)序章 もともと秘密だらけの公文書(久保亨、瀬畑源 『国家と秘密 隠される

公文書 』集英社新書)

(2)公文書管理法の制定(前半)(久保亨、瀬畑源 『国家と秘密 隠される公文書

』集英社新書)

(3)公文書管理法の制定(後半)(久保亨、瀬畑源 『国家と秘密 隠される公文書

』集英社新書)

(4)公文書管理、立ち遅れた日本(瀬畑源 『国家と秘密:隠される公文書』(集

英社新書))

(5)特定秘密保護法と「公文書管理法」(瀬畑源 『国家と秘密:隠される公文

書』(集英社新書))

 

(6)規制委、文書リストなし、発足以来 公文書管理法違反(毎日 2015.10.11)

http://mainichi.jp/select/news/20151011k0000m040044000c.html

(7)公文書管理の報告 原子力規制委偽る(朝日 2015.10.15)

http://www.asahi.com/articles/ASHBH3HP0HBHULBJ002.html

(8)公文書管理法見直し:政策過程 未記録検証を(日経 2015.10.26)

http://www.nikkei.com/search/site/?searchKeyword=%E6%9D%B1%E5%A4%A7%E3%80%

80%E7%90%86%E4%BA%8B

 

(田中一郎コメント)

(6)(7)については唖然とするばかりです。明らかな公文書管理法違反行為で

すが、しかし同法に罰則がないので、いわばそれに便乗して出鱈目なことをやってい

るのです。原子力ムラのために仕事はするが、有権者・国民・市民や地域住民のため

には仕事をすることはない原子力規制委員会・規制庁らしさが現れていると言えま

す。それにしても、原子力規制委員会・規制庁がこんなことでどうするのでしょう

か? こんなことをしていて、高速増殖炉「もんじゅ」をいい加減な形で管理し続け

ている旧動燃=現(独)日本原子力研究開発機構に対して偉そうなことを言えます

か?

それから、(8)の日経記事は比較的よくまとまっていますので、若干の抜粋を下

記にしておきます。

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中央省庁や独立行政法人に行政文書など公文書の作成から廃棄・移管までを統一

ルールで扱うよう定めた公文書管理法が来春で施行5年を迎える。国会付帯決議に基

づき、内閣府の公文書管理委員会(委員長・宇賀克也東京大教授)は見直しの検討を始

めた。この4年半で、重要な政策決定に至る過程の文書が作成・保存されていない事

例がたびたび明らかになった。その検証が議論の出発点となる。

 

(中略)今後の検討項目は、作成すべき行政文書の範囲や人材育成を合めた体制強化

に加え、裁判所や国会、自治体など国の行政機関以外での適正管理、データの集中管

理とバックアップなど多岐に及ぶ。いずれも立法時から残された宿題で、施行後に判

明した問題は予想された事態ともいえる。「公文書は健全な民主主義の根幹を支える

国民共有の知的資源」という法の趣旨を、政権がどう受けとめるかが間われる。

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<政府サイト:情報関連3法>

(1)総務省|情報公開制度

http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/gyoukan/kanri/jyohokokai/index.html

(2-1)公文書管理制度 ‐ 内閣府

http://www8.cao.go.jp/chosei/koubun/

(2-2)公文書管理法の概要 – 内閣府

http://www8.cao.go.jp/chosei/koubun/about/gaiyou/gaiyou.html

(3)特定秘密保護法について  首相官邸ホームページ

http://www.kantei.go.jp/jp/pages/tokuteihimitu.html

 

1.序章 もともと秘密だらけの公文書(久保亨、瀬畑源 『国家と秘密 隠される公

文書 』集英社新書)

 

(一部抜粋)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(中略)繰り返しますが、内閣をトップとする行政が、「秘密保護」を名目に政策の

決定過程やそれに関わる個々の責任を明らかにせず、国民にとって重要な情報を秘匿

していくならば、政治権力は際限なく暴走します。それが歴史の事実なのです。近現

代日本の歴史でいえば、その結果もたらされたのが、無謀かつ悲惨な戦争であり、薬

害エイズや水俣病の惨禍、さらには福島第一原発事故などで露呈された国民の安全と

健康を顧みない行政であり、多くの人々の生命と財産の喪失でありました。それをこ

れ以上繰り返してはなりません。

 

本書は、情報の非公開が招いた過去の悲劇を改めて見つめ直すと共に、公文書の保

存・公開に関する現行法制の内容、問題点、特定秘密保護法との関係を明らかにし、

特定秘密保護法そのものの廃止も展望しながら今後の方向性を探るものです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

2.公文書管理法の制定(前半)(久保亨、瀬畑源 『国家と秘密 隠される公文書

』集英社新書)

 

(一部抜粋)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(中略)もう一つの「不存在」の理由は、行政文書が「作成されない」ために「不存

在」となったということです。行政文書として作成された文書は、すべて開示請求の

対象となるため、公開されると都合の悪い行政文書は意図的に「作らない」という事

態が起こりました。例えば、それまでは審議会の議事録を作っていたものも、発言者

が分からないような議事要旨しか作らなくなるケースが出てくるということです。

 

当時の新聞記事によれば、「文書を作らず、残さず、手渡さず」という「不開示三原

則」が官僚にはあって、情報公開制度の骨抜きを図ろうとしていたとされています。

また、情報公開法における行政文書の定義が、先述したように「組織的に用いるも

の」であることを利用して、作成した文書を行政文書としてではなく「個人メモ」と

して扱うということも行われていたようです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

3.公文書管理法の制定(後半)(久保亨、瀬畑源 『国家と秘密 隠される公文書

』集英社新書)

 

(一部抜粋)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(中略)皮肉にも公文書管理法が大きな注目を浴びたのは、東日本大震災によって設

置された原子力災害対策本部における議事録未作成問題でした。間違いなく後世でも

歴史的に重要な事件とされるであろう福島第一原子力発電所の被災問題において、そ

の検証に必要となる議事録が作成されていなかったのです。

 

公文書管理法の第四条には、政策決定過程が検証できるように文書を作成する義務が

あり、「閣議、関係行政機関の長で構成される会議又は省議(これらに準ずるものを

含む)の決定又は了解及びその経緯」がそれに含まれていましたから、この条文に違

反しているのではないかということが問題となったのです。

 

これは公文書管理法が存在しなければ、そこまで問題にはならなかったでしょう。議

事録を作らずに要旨で済まそうとする姿勢は、2011年になって突然とられたわけ

ではありません。そして、これまで議事録を作らないことがそれほど大きな問題とは

扱われてこなかったのです。ですから、公文書管理法の力を見せたのが、この未作成

問題の追及であったと言えましょう。

 

公文書管理法の施行は、これまでの官僚の文書管理のあり方を大きく変えるものにな

るはずです。ですが、日常的に行っている文書管理のあり方が一朝一夕で変わるもの

ではないでしょう。筆者はこの法が根づくには最低10年はかかると考えています

が、国民の側が、官僚たちがきちんと文書管理を行っているかどうかを絶えず監視す

る必要があると考えています。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

4.公文書管理、立ち遅れた日本(瀬畑源 『国家と秘密:隠される公文書』(集英

社新書))

ここでは「表3 諸外国の国立公文書館の比較」(P150~151)で、2014年5

月現在での欧米諸国(米・英・仏・独)、及び韓国の公文書館の状態が日本のものと

比較されています。日本のお粗末ぶりにはあきれるばかりです。まさに発展途上国並

みどころか、発展拒否王国です。

 

(一部抜粋)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

欧米、中園、アジア諸国の公文書館と比較し、日本の公文書館行政と施設整備の立ち

遅れは一目瞭然です(150~151ページの表3参照)。公文書館が設立された時期も遅

く、規模も著しく小さい。そして本章で試みたように子細に検討していくと、そうし

た立ち遅れが生まれた歴史的背景にも思いを致さざるを得ないのです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

(5)特定秘密保護法と「公文書管理法」(瀬畑源 『国家と秘密:隠される公文

書』(集英社新書))

天下の悪法=特定秘密保護法は、憲法違反の戦争法制とともに廃止・破棄する以外

にありえません。政党や政治家を有権者・国民・市民が取捨選択するときの「試金

石」とすべきです。ニセモノ政党・政治家が、屁理屈をつけて、この特定秘密保護法

や戦争法制を何とか残そうとするでしょう。それに対して私たち有権者・国民・市民

は、そうした政党・政治家どもを一人たりとも「残さない」=一人残らずあらゆる選

挙で落選させる(投票せずに対立候補に投票する)ことが民主主義と立憲主義を守る

必要不可欠の道なのです。

 

(一部抜粋)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(中略)そして、特定秘密保護法施行令案には、「特定秘密文書等の奪取その他特定

秘密の漏えいのおそれがある緊急の事態に際し、その漏えいを防止するため他に適当

な手段がないと認められる場合」は廃棄することができるという条文が入りました

(第12条第1項第10号)。もちろん、集団的自衛権が限定的だとしても、容認された以

上、海外でこういった緊急の事態が起きる可能性は高まるでしょう。しかし、この

「緊急の事態」がどのようなものであるのかは、内閣官房が作成した運用基準案には

記載が一切ありません。「緊急の事態」の限定をきちんとしなければ、「スパイに狙

われるおそれがある」といって勝手に特定秘密を廃棄する行政機関が出ないとも限り

ません。ここはきちんと限定がなされるべきだと思います。

 

なお、先述したように防衛省は、今までこっそり廃棄していた防衛秘密に当たる文書

を、国立公文書館に移管せざるを得なくなっています。また、これまで国立公文書館

にまともに文書を移管してこなかった公安関係の文書も、同様に移管措置がとられる

でしょう。例えば、公安調査庁が作成した文書は、三九件しか移管されていません。

おそらく法務省あたりの文書に混ざっていただけだと思われるので、実質はゼロで

す。よって、彼らは「これまで通り闇に葬れるなら葬りたい」と思っている可能性は

高いです。そのため、特定秘密の期間中に廃棄を可能とするような条文を、各行政機

関で作成される運用規程に紛れ込ませてくる可能性は十分にありうるのです。この点

は注視する必要があるでしょう。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion5746:151029〕