「双方向・循環型」活動の手紙でも党勢後退が止まらないのはなぜか、「党勢拡大」から新たな「支持拡大」への戦略的転換が求められている
2026年3月13~15日、日本共産党第8回中央委員会総会が党本部で開催され、中央委員177人、準中央委員25人、計202人が出席した。3日間にわたる討議で、志位議長のあいさつ、「手紙」、第一報告、第二報告、志位議長の中間発言、田村委員長の結語を全員一致で採択された。志位議長は、8中総が「文字通り日本共産党の命運がかかった重要な総会になる」と指摘した上で、8中総の任務について、①世界も日本も歴史の大きな岐路に立つもとで党の任務を明らかにする、②総選挙から深い総括と教訓を引き出し、国政と地方政治での反転攻勢に転じる方針を決定する、③来年1月の第30回党大会までに「党づくりで後退から前進への歴史的転換を果たす」という目標をやり抜く意思統一を行う、ことを提起した(中央委員会書記局、赤旗3月17日)。
志位議長の一連の発言の中でもひときわ重視されているのが、全支部・グループあてに「手紙」をおくり、「返事」を求める活動方針である。志位議長はその意義を次のように説明している(中間発言、要旨)。
――幹部会は、第29回党大会決定にもとづいて、この大会期を「党づくりで後退から前進への歴史的転換を果たす」大会期にすることを決意しました。そのためには、すべての支部・グループがみんなで立ち上がることがどうしても必要になる。このため、「双方向・循環型」で活動の発展をはかるという党づくりの大原則に立ち返り、全支部・グループあてに新しい「手紙」をおくり、「返事」をお願いし、ともに前進をつくりだしていくことを提案しました。
「双方向・循環型」活動は、第24回大会3中総で次のように解説されている(赤旗、2007年1月18日)。
――双方向・循環型の活動とは、中央委員会から県・地区委員会にいたる党機関や支部の関係を一方通行でなく、血のかよいあった温かい心がかよいあう関係をつくることです。民主的気風を大いに発揮しようという規約の精神にそったもので、支部と機関がお互いに学び励まし合って「政策と計画」をもった「支部が主役」の自覚的な党活動をつくりだすことが目的です。
この文面だけを読めば、双方向・循環型の活動は、党中央と支部の自由な交流・協働に基づく自主的・自発的活動のように見える。しかし、志位議長が「中間発言」で代表例として示している「手紙」は、党勢拡大を求める党中央からの「手紙」に対して各支部の「返事」を要求するもので、毎回「返答率」が点検される仕組みになっている。「手紙」は「双方向・循環型」という名の「上意下達型」党勢拡大の指示であり、各支部はその度に「政策と計画」を提出しなければならない。2023年1月の「最初の手紙」から「今回の手紙」に至る一連の流れを見よう。
〇最初の手紙
2023年1月の第28回大会7中総で採択された「最初の手紙」は、その名もズバリ「130%の党をつくるための全党の支部・グループへの手紙」だった(要旨)。
――全党の支部・グループのみなさん。今年2023年は、日本の前途にとっても日本共産党にとっても、その命運がかかった文字通りの正念場の年になります。第7回中央委員会総会は、来年1月に開催予定の第29回党大会までに第28回党大会で決めた党建設の目標――党員拡大と「しんぶん赤旗」読者拡大で、第28回党大会比130%の党をつくる、青年・学生と労働者、30代~50代などの世代で党勢を倍加し、民青同盟を倍加するという目標を必ず達成することを決定し、この大事業を全党に呼びかけることにしました。
――「130%の党」という大目標をやりとげる道はただ一つです。すべての支部・グループのみなさんがこの運動に参加し、それぞれの条件をふまえ、それぞれがもつ可能性をくみつくして、この運動に主人公として参加することです。それができるならば「130%の党」は必ずつくることができる。私たちはそう確信し、7中総の総意としてこの手紙をみなさんにおくるものです。
――「130%の党」とは、全党的に36万人の党員、130万人の「しんぶん赤旗」読者をめざす大事業です。同時に、この仕事をすべての支部・グループで担うならば、来年1月の党大会までに平均して1支部あたり、現勢で2カ月に1人の党員、1人の日刊紙読者、3人の日曜版読者を増やせば実現できます。これが過大な目標でしょうか。「高い山」のように見えますが、すべての支部と党員のみなさんが立ち上がるなら決してできない目標ではないのではないでしょうか。まずはこの手紙をすべての支部・グループで読み合わせをし、率直な意見をどんどん出して議論していただき、「130%の党」にむけた自覚的目標をもち、足を踏み出すことを心から訴えます(以下略)。
〇次の手紙
2024年4月の第29回大会2中総で採択された「次の手紙」も「党づくりの後退から前進への歴史的転換を」とあるように、党勢拡大指示の手紙だった(要旨)。
――第29回党大会は大きな成功をおさめました。そのなかで今大会期の私たちの最大の任務として確認したのは、「新たな大会期を党づくりの後退から前進への歴史的転換を果たす大会期にしよう」ということでした。この仕事をやりぬく最大の保障は、すべての支部・グループがそれぞれの条件を生かして、党づくりの主人公として足を踏み出すことにあります。それをやりぬこうとすれば、中央と党機関、支部・グループが互いに学びあい、互いに知恵をしぼって前途をひらく「双方向・循環型」の活動をさらに大きく発展させる必要があります。
――この2年間は、わが党にとって歴史的な分かれ道となる2年間です。党大会決定は、次期党大会までに、①第28回党大会時現勢――27万人の党員、100万人の「しんぶん赤旗」読者を必ず回復・突破すること、②第28回党大会で掲げた青年・学生、労働者、30代~50代での「党勢倍加」、1万人の青年・学生党員と数万の民青の建設をはかる「5カ年計画」の実現にむけ、2年後までの目標をもちやりとげることを決めました。2年間でこの目標を実現できるかどうか、ここに文字通りわが党の命運がかかっています。
――党大会で掲げた2年間の目標は決して無理な目標ではありません。すべての支部が毎月毎月、党員と読者の拡大に足を踏み出し、一つの支部に平均すれば、第29回党大会現勢から2年間で2人の党員、2人の日刊紙読者、8人の日曜版読者を増やすという目標です。全国のすべての支部と党員がたちあがるならば、必ずやりとげることができます(以下略)。
〇今回の手紙
2026年3月の第29回大会8中総で採択された「今回の手紙」も、「党勢の後退から前進への歴史的転換をやりとげ、第30回党大会を迎えよう」という党勢拡大の指示だった(要旨、山下第二報告を含む)。
――第8回中央委員会総会は、党勢拡大の到達点と党の現状を踏まえて、「これだけは必ずやり切る」目標として、第30回党大会までに党員数でも赤旗読者数でも、少なくとも必ず第29回党大会現勢(25万人の党員、85万人の赤旗読者)を回復・突破することを新しい目標として確認しました。
――新たな目標もやり切るのは容易なことではありません。やりとげる道は一つ。すべての支部・グループが参加する運動にすることです。すべての支部・グループが立ち上がるなら、第30回党大会を目指す党勢拡大の目標は、1支部あたり平均で党員1人、「しんぶん赤旗」読者日刊紙読者1人、日曜版読者5人の前進で達成することができます。
――そのためには、中央と支部・グループが互いに学び合い、一緒に党づくりの打開への答えを見つけていく「双方向・循環型」の取り組みを発展させることが重要になります。いま一度、「双方向・循環型」という党づくりの大原則に立ち返って前進への道を切り開きたい。そういう思いを定めて全党の支部・グループのみなさんに「手紙」を送ることにしました(以下略)。
これら3通の「手紙」を通して読んでみると、その筋書きが驚くほど似ていることに気付く。というよりは、ほとんどが同じ筋書きで書かれていると言っても過言ではない。「手紙」は基本的に3つの段落(内容)から構成されている。第1段落は「手紙」を提起した年が、いつも例外なく「党の命運を決する時期」であることが強調されていることである。
・今年2023年は、日本の前途にとっても日本共産党にとっても、その命運がかかった文字通りの正念場の年になります(最初の手紙)。
・この2年間は、わが党にとって歴史的な分かれ道となる2年間です。2年間でこの目標を実現できるかどうか、ここに文字通りわが党の命運がかかっています(次の手紙)。
・この中央委員会総会は、内外情勢の重大な展開とのかかわりでも、この間の総選挙の結果とのかかわりでも、そして、党建設の現状の抜本的打開とのかかわりでも、文字通り日本共産党の命運がかかった重大な総会になります(今回の手紙)。
第2段落は、党勢拡大目標を達成するためには「支部が主人公」として参加する「双方向・循環型」の活動が不可欠だと、繰り返し強調されていることである。
・「130%の党」という大目標をやりとげる道はただ一つです。すべての支部・グループのみなさんがこの運動に参加し、それぞれの条件をふまえ、それぞれがもつ可能性をくみつくして、この運動に主人公として参加することです(最初の手紙)。
・この仕事をやりぬく最大の保障は、すべての支部・グループがそれぞれの条件を生かして、党づくりの主人公として足を踏み出すことにあります。それをやりぬこうとすれば、中央と党機関、支部・グループが互いに学びあい、互いに知恵をしぼって前途をひらく「双方向・循環型」の活動をさらに大きく発展させる必要があります(次の手紙)。
・新たな目標もやりきるのは容易なことではありません。やりとげる道は一つ。すべての支部・グループが参加する運動にすることです(今回の手紙)。
第3段落は、党勢拡大目標を達成するための1支部あたりの平均数字が、客観的裏付けもなく全てが「たられば」の仮定で示され、党員や支持者の負担感を和らげる操作が行われていることである。
・この仕事をすべての支部・グループで担うならば、来年1月の党大会までに平均して1支部あたり、現勢で2カ月に1人の党員、1人の日刊紙読者、3人の日曜版読者を増やせば実現できます(最初の手紙)。
・すべての支部が毎月毎月、党員と読者の拡大に足を踏み出し、一つの支部に平均すれば、第29回党大会現勢から2年間で2人の党員、2人の日刊紙読者、8人の日曜版読者を増やすという目標です。全国のすべての支部と党員がたちあがるならば、必ずやりとげることができます(次の手紙)。
・すべての支部・グループが立ち上がるなら、第30回党大会を目指す党勢拡大の目標は、1支部あたり平均で党員1人、「しんぶん赤旗」読者日刊紙読者1人、日曜版読者5人の前進で達成することができます(今回の手紙)。
つまり、「双方向・循環型」の党活動の大原則に基づく「手紙」は、①党が危機的状況にあることを強調して党員や支持者の危機感を喚起し、②党中央からの指示を「支部が主人公」と言い換えて支部の自発的行動を引き出し、③拡大目標を支部平均に小分けして負担感を和らげる――という筋書きで出来ている。前後の文章は少し変えられているが、言わんとするところはとにもかくも「党勢拡大」一本槍なのである。
その反面、拡大目標と実績の格差に関する分析はほとんど行われていない。第28回党大会(党員現勢27万人、赤旗読者100万人)から第29回党大会への4年間は、党員目標36万人に対して実績25万人(69%)、赤旗読者目標130万人に対して実績85万人(65%)に終わった。第29回党大会(党員現勢25万人、赤旗読者85万人)から第30回党大会への2年間は、党員目標27万人に対して実績23万6千人(87%)、赤旗読者目標100万人に対して実績76万9千人(77%)に落ち込み、第30回党大会は1年延期された。延期された第30回党大会の目標は、党員25万人・赤旗読者85万人、3年前の現勢に戻すのが精一杯となっている。
なぜかくも党中央は「党勢拡大」に固執するのか。それは「党勢拡大」→「得票数増」→「議席数増」という基本路線が敷かれているためであり、国政や地方政治で党の影響力を発揮するには議席数の増加が不可欠と見なされているためである。と同時に、もう一つの側面(理由)もある。碓井敏正氏が指摘する如く、「政党組織は固有の問題を抱えている。それは組織が一旦成立すると、本来の目的よりも組織の維持を自己目的化する。そのため社会変革より勢力の拡大(党員や機関紙増)を重視するようになる」という傾向である。この両方の力学が相まって「党勢拡大」が至上目的化し、8中総での「今が党のがんばりどき」「必ずやり切る」「もう一歩もひかない」といった大合唱になるのであろう(赤旗3月18日)。
だが、「全員一致」で党大会や中央委員会総会決定が承認されても、40年来の党勢後退を止めることができなかった。とりわけここ数年間は、党勢後退と得票減・議席減が加速しており、「党勢拡大」一本槍では党の未来を展望出来なくなっている。「党勢拡大」の他に新たな「支持拡大」の道はないのか、党活動の戦略的転換が強く求められている。延期された第30回党大会は、第29回大会時の党勢回復に終始することなく、党活動の戦略的転換を議論する大会にしなければならない。まずは民主集中制を廃止して支部間の自由な討論を保障し、次に党首公選制を実施して党指導部を刷新する。こうして生まれた新たな指導部の下で党への「支持拡大」の波を広げ、「党勢拡大」に頼らなくても得票増・議席増を実現するための新たな方策の樹立を目指す。40年来の「党勢の後退から前進への歴史的転換を果たす」ためには、「党勢拡大」一本槍の活動方針を根本から改めるしかないからである(つづく)。
初出:「リベラル21」2026.03.24より許可を得て転送
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〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion14745:260324〕











