12年に1度の東京都議選・参院選のダブル選挙が間近に迫っている、共産党は従来型の選挙活動で現有議席を維持できるだろうか
6月22日投開票の東京都議選まであと僅か2カ月足らずとなった。都議選に引き続く参院選は7月10日公示、7月27日投開票が予定されている。12年に1度のダブル選挙がここ2、3カ月のうちに始まろうとしている。各党は選挙戦に備えて準備に追われているが、共産党の状況はどうだろうか。情勢分析に入る前に過去4回(2013年、2016年、2019年、2022年)の参院選の結果を記そう。
〇2013年参院選、都議選
共産党は比例代表選挙5議席を確保し、3選挙区で勝利して改選前3議席から8議席に躍進した。非改選と合わせて11議席となり、議案提案権を得た。比例代表得票数は515万4千票(得票率9.68%)、前回参院選356万票を159万票上回った。選挙区選挙では、東京(改選数5)で12年ぶり、大阪(改選数4)と京都(改選数2)で15年ぶりの議席回復となった。選挙区での得票総数は564万5千(得票率10.64%)、前回425万6千票(得票率7.29%)を139万票上回った。東京都議選では8議席から17議席へ躍進し、得票数61万6千票(得票率13.6%)を獲得した。
〇2016年参院選
全国32の1人区全てで野党統一候補を実現し、11の選挙区で勝利した。共産党は比例代表選挙5議席を確保し、選挙区選挙では東京で勝利して改選3議席を6議席に倍増させ、非改選と合わせて14議席に躍進した。比例代表得票数は601万4千票(得票率10.74%)、前回515万4千票(9.68%)から86万2千票上回った。選挙区選挙得票数は、野党統一候補を支援したこともあって410万3千票(得票率7.26%)となり、前回564万5千票(得票率10.64%)から154万2千票下回った。
〇2019年参院選
全国32の1人区全てで野党統一候補を実現し、10選挙区で勝利した。共産党は比例代表選挙で改選5議席から1議席後退して4議席となり、選挙区選挙では東京、京都で議席を守り、埼玉では21年ぶりに議席を得たが、大阪では議席を失った。議席数は非改選6議席と合わせて13議席となり、1議席後退した。比例代表得票数は448万3千票(得票率8.95%)、前回601万4千票(得票率10.74%)から158万1千票下回った。選挙区得票数は371万票(得票率7.37%)、前回410万3千票(得票率7.26%)から39万3千票下回った。
〇2022年参院選
比例代表選挙で改選5議席から3議席に後退し、選挙区選挙では東京で議席を守った。議席数は非改選7議席と合わせて11議席となり、2議席後退した。比例代表得票数は361万8千票(得票率6.82%)、前回448万4千票(得票率8.95%)から86万6千票下回った。選挙区選挙得票数は363万6千票(得票率6.84%)前回371万票(得票率7.37%)から7万4千票下回った。
この間、4回の参院選を特集した『前衛』臨時増刊号をざっと通して読んでみたが、日本共産党の選挙結果は(当たり前のことだが)野党間の力関係に大きく影響されるということが強く印象に残った。野党間の競合が激しくとりわけ野党第一党が強力なときは、共産党のような小さな野党は弾き飛ばされて選挙結果も思わしくないこと。共産党が躍進するのは、野党第一党が有権者の失望を買って与党批判票が第二・第三野党にも流れてくる時のこと。野党共闘が成立するのは、野党第一党が弱体化して野党間の力関係が変化した時のことであり、次の局面に移行するまでの暫定的期間にすぎないこと、などである。
もう一つの印象は、選挙結果の成否にかかわらず、共産党の党勢が一貫して後退し続けていることである。この間、党員数や赤旗読者数が一度も上向くことなく減少し続けており、その原因は「自力不足」にあると再三再四指摘されている。躍進した2016年参院選後に開かれた第27回党大会では、2019年参院選に向けて「比例代表850万票、得票率15%以上」の目標が掲げられ「比例代表で第3党をめざす」方針が決議された。ところが比例代表得票数は448万3千票(得票率8.95%)にとどまり、850万票目標の半分(53%)だった。2022年参院選では目標が「650万票・得票率10%以上」に下げられたが、比例代表得票数は361万8千票(得票率6.82%)で650万票目標の半分余り(56%)にとどまった。
しかし、党勢後退は「自力不足」だけが原因かと言えば、必ずしもそうとうは言えないだろう。入党するのも赤旗読者になるのもいずれも「相手・対象」があってのことであり、共産党を取り巻く社会環境が変化すると、支部が幾ら働きかけても相手が応じてくれなくなる場合もあるからである。党勢後退の原因と責任をもっぱら党組織の内部問題に還元し、外部環境の変化に目を向けない党勢拡大活動は結局行き詰まるほかないが、それが必ずしも党幹部に自覚されていないところに大きな限界を感じる。
最近の赤旗紙上では、都議選・参院選に向けての大キャンペーンが繰り広げられているが、いずれも厳しい情勢が報告されているにもかかわらず、随所でチグハグな方針が目に付く。「『大運動』最終版にあたって」(赤旗4月22日)と題する参院選勝利・「大運動」成功推進本部の檄文には、ダブル選挙を目前にしながらも「要求対話・要求アンケート」運動が全支部の45%で取り組まれていないこと、「大運動」期間中に1人の入党者も迎えられなかった地区委員会が64地区(311支部の21%)に達することなど、深刻かつ困難な状況が報告されている。
東京都委員会は4月22日に地区委員長会議を開き、東京都議選告示7週間前の「大運動」ラストスパートの大飛躍をつくる意思統一を行ったが、情勢は「自民党は候補を絞り、現有確保に必死」「都民ファースト、国民民主、『再生の道(石丸新党)』は大量候補を擁立」「維新、れいわは定数の多い選挙区に有力候補を擁立」などが進んでおり、現状の延長線上の活動では厳しい結果となる危険性があると指摘している。都議選の前回同時期比で言えば、「対話で6割」「支持拡大で4割台」が到達点だからである(赤旗4月24日)。
その一方、4月24日の赤旗党活動欄には「5.10〈いま資本論がおもしろい〉を全党で位置づけ、大成功させよう」との青年・学生委員会責任者の呼びかけが特大紙面で掲載されている。5月10日(土)に志位議長が講師になった民青同盟主催のオンラインゼミが開催され、「いま資本論がおもしろい―マルクスとともに現代と未來を科学する」との講義がユーチューブで全国配信されるので、「青年・学生分野はもちろん、全党が位置づけ、大いに学び、語り合うことをよびかけます」というのである(以下、抜粋)。
――いま、資本論を学び、資本主義の矛盾と社会主義・共産主義の魅力をつかむことは、この社会は変わるし、変えられるという世界観的確信をつちかう最大の力になるでしょう。また、長年にわたって青年・学生はもとより、広範な国民が社会変革の事業に参加するうえで大きな障害になってきた旧ソ連や中国などを利用した反共攻撃とそれによる誤解・偏見を払拭する取り組みが必要ですが、その本格的な前進をはかるうえで決定的な力になることでしょう。さらに、直面する都議選・参院選に勝利するうえでも、大きな勇気と確信が広がることは間違いありません。
まるで資本論を読めばすべてが解決する――と言わんばかりの呼びかけ文だが、これが平時の学習会であればともかく、共産党の運命が懸かったダブル選挙を直前にしての開催だから、著しいチグハグ感が否めない。全党で取り組めばかえって選挙活動の足が止まる、といった意見が出てこないのであろうか。
こんな折しも折、ある研究者から「これからの革新運動のあり方を考える」という論考が送られてきた。結論を要約すれば、以下のようになる。
(1) 高度成長期の「成長社会」では個人よりも集団が重視され、個人は集団の拡大の手段として軽視されてきた。成長社会においては企業をはじめあらゆる組織が規模の拡大を至上命題とし、政党では党員や機関紙の拡大が最重視されてきた。
(2) 「ポスト成長社会」においては個人の価値観が変化し、このような活動目標の実現が困難になる。自らの個性的な生き方を重視する人々は組織に縛られることを嫌い、組織とは距離を置く傾向が強くなる。そのことを表すのが政党の党員の減少(1990年代の半分)であり、有権者の4割を占める無党派層の存在である。
(3) 教育水準が高まり政策への関心が高まるほど政党に対する愛着は薄まることになり、選挙民の脱政党化が進行する。こんな傾向が高まる社会において組織拡大を選挙活動の中心に据える従来型のやり方は、時代遅れのそしりを免れない。
(4) しかし、一旦成立した組織は独自のスタイルや考え方に支配され、それを変えるのは容易でない。組織は一定の目的の実現を目指して結成されるが、一旦成立した組織は目的の追求よりも、組織の維持を自己目的化する傾向がある。さらに組織には、少数の幹部による組織支配が常態化するという寡頭制(組織の私物化)の傾向がある。
(5) 組織の縛りを嫌うという現代人の傾向を考慮するならば、政党の開放性を高めることが必要である。党費を払い一定の支部に所属し、党活動を義務付けられる従来型の党員像は見直され、より柔軟化される必要がある。また、機関紙やビラ配りに頼る宣伝には限界がある。情報化の時代においては、党の主張や政策を発信する際にはSNSを活用することが求められる。SNSを活用するとなると、長文の主張や政策は改めざるを得なくなる。
志位議長がことある度に前面に出て何回も同じ主張や説教を繰り返す――こんな従来型の党活動はもはや限界に来ている。なのに、赤旗では百年一日の如く同じスタイルを踏襲して党活動や選挙活動を展開している。今回の都議選・参院選でも同様の方法が繰り返されているが、その結果は劇的な形で表れること間違いなしである。(つづく)
初出:「リベラル21」2025.4.26より許可を得て転載
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〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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