共産党はいま存亡の岐路に立っている(その55)

2025年参院選における京都選挙区の情勢、共産党は従来型の選挙活動で現有議席を維持できるだろうか(2)

複数の拙ブログ読者から、次期参院選京都選挙区(定員2)の情勢について二、三問い合わせがあった。といっても、私に特段の情報源があるわけでもなく、時折会う昔馴染みの連中との間でそこはかとない会話を交わす程度のことである。そんなことで目ぼしいニュースはないが、過去の選挙結果を紹介することで今回の京都選挙区の情勢を考える一助にしたいと思う。

〇2013年参院選
西田昌司(自民現)当選、39万577票(得票率36.9%)、倉林明子(共産新)当選、21万9273票(20.7%)、北神圭明(民主新)次点、20万1297票(19.0%)、他4人、計7人、共産党比例代表得票数515万4055票(得票率9.68%)。

〇2016年参院選
二之湯智(自民現)当選、42万2416票(得票率40.0%)、福山哲郎(民進現)当選、38万9707票(36.9%)、大河原寿貴(共産新)次点、21万1663票(20.0%)、他1人、計4人、共産党比例代表得票数601万6194票(得票率10.74%)。

〇2019年参院選
西田昌司(自民現)当選、42万1731票(得票率44.2%)、倉林明子(共産現)当選、24万6436票(25.8%)、増原裕子(立憲新)次点、23万2354票(24.4%)、他2人、計5人、共産党比例代表得票数448万3411票(得票率8.95%)。

〇2022年参院選
吉井章(自民新)当選、29万3071票(得票率28.2%)、福山哲郎(立憲現)当選、27万5140票(26.5%)、楠井祐子(維新新)次点、25万7852票(24.8%)、武山彩子(共産新)、13万260票(12.5%)他5人、計9人、共産党比例代表得票数361万8342票(得票率6.82%)。

この選挙結果を見てもわかるように、2013年参院選から2019年参院選までは京都選挙区の共産候補は常に21~24万票(得票率20~25%)を獲得し、民主系候補と接戦を演じていた。自民候補が公明の推薦を受けて40万票前後(得票率40%)の大量得票を獲得するので1議席目が事実上の指定席となり、2議席目を巡って激しい選挙戦が展開されてきたのである。京都で野党共闘が成立しないのは、連合京都が推す民主系候補と共産候補が参院選で対決することが原因の一つだと言われている。

ところが、2022年参院選では異変が発生した。維新候補の躍進で自民候補が(新人だということもあるが)13万票もの得票を失い、立憲民主幹部が維新候補に後一歩のところまで詰め寄られた。その煽りを食ったのか、共産候補の得票数は一挙に半分近い13万票(得票率12%)に落ち込み、得票順位も4位に後退した。「自共対決」を掲げて革新票を獲得してきた京都の共産の牙城が、全党的な党勢後退(比例代表得票数361万8千票、得票率6.8%)の影響もあって、維新の背後攻撃で一瞬にして崩れ去ったのである。

今回の参院選ではまだ全ての候補が出揃っていないが、自民、共産の両現職と立民、維新、れいわ、参政の4新人が改選2議席を争う大混戦となっている。だが、これまで圧勝を続けてきた自民の西田昌司(66)は「裏金疑惑」を払拭できず、自民への逆風の中で苦戦を強いられている。加えて、西田は北陸新幹線の京都ルート推進者であり、従来ならば西田の推薦母体となる業界団体の中にも二の足を踏むところが出てきている。とりわけ西田にとって痛手なのは、京都仏教会が北陸新幹線の延長を「千年の愚行」として厳しく批判し、反対の署名運動を展開していることであろう。京都で宗教界からの批判を受ければいったいどんなことになるか、西田自身が一番よく知っているだけに、今後の出方が注目されるというものである。

そんな逆境のなかで、西田にとっての〝生命線〟は公明の推薦だと言われている。どんな手を回したのか知らないが、最近になって分かったことは、公明党本部が「自民裏金議員」3人の推薦を決定し、その中に西田も含まれているというのである。公明は先の衆院選で自民の裏金議員を推薦した影響で次期代表を落選させるという大失策を犯したが、それにも懲りず今回も推薦するというのである。公明は京都選挙区で候補者は出していない。しかし、比例代表選挙では自民推薦と引き換えに公明への投票を呼びかけているのだから、無関係とは言えないだろう。西田に批判的な保守層の中には、「自民べったり」の公明に愛想を尽かしている人たちも少なくないからである。

一方、野党側候補の方は極め付きの乱戦模様となっている。初の議席を目指す維新は2024年10月、元アナウンサーの男性新人候補(36)の擁立を発表した。立憲は今年3月、遅ればせながら元衆院議員の女性候補(56)擁立を決定した。れいわは今年2月、これまで共産と行動をともにしてきた女性(37)を引き抜いて自党候補に擁立した。参政からは、新人の男性弁護士(42)が立候補する。注目されるのは、国民民主が候補者を擁立する準備を進めていることである。前回の参院選では、維新が「台風の目」になって選挙戦を攪乱した。今回は国民民主が次の「台風の目」になることはほぼ間違いない。それが選挙戦全体にどんな影響を及ぼすかは、今のところまったく予測できない。

それにしても、今回の参院選では現職の西田、倉林は必ずしも安定しているとは言えない。西田は66歳、倉林は64歳と候補者のなかでは比較的高齢であり、とりわけ倉林は新人女性候補(37)と競合する関係にある。国民民主候補の登場によって情勢が流動化し、その時の空気次第で選挙情勢が大きく傾くことになれば、これまでの各党の基礎票は問題にならないかもしれない。世論の動向を見据え、有権者の心情にヒットする鮮烈な政策を打ち出せるか否か、そこに各党の命運が掛かっている。(つづく)

初出:「リベラル21」2025.5.07より許可を得て転載
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