共産党はいま存亡の岐路に立っている(その62)

東京都議選、共産党の「善戦・健闘」の〝まやかし総括〟、2025年東京都議選の結果を見て(3)

前々回の拙ブログでも書いたが都議選の過去4回の共産得票数の推移は、2013年61万6721票(13.6%、17議席)、2017年77万3722票(13.8%、19議席)、2021年63万156票(13.5%、19議席)、2025年48万9084票(9.2%、14議席)と、2017年をピークにそれ以降は減少し続けている。2013~17年を「上昇期」(15万7千票増、+25.5%)とすれば、2017~21年は「第1下降期」(14万3千票減、-18.5%)、2021~25年は「第2下降期」(14万1千票減、-22.3%)と位置付けることができる。2017年以降の8年間で4割近い得票を失った結果、今回の都議選では19議席から14議席へ大幅な議席減となったのである。

次に、都議選と国政選挙の関係について見よう。都議選は国政選挙の「先行指標」と言われるが、都議選後に行われた衆院選・参院選の共産比例代表得票数の推移は以下の通りである。
(1)2013~17年の「上昇期」は、2013年参院選515万4055票(9.6%)、2014年衆院選606万2962票(11.3%)、2016年参院選601万6194票(10.7%)と、600万票(11%前後)に届く得票数を確保していた。
(2)ところが、2017~21年の「第1下降期」に入ると、2017年衆院選440万4081票(7.9%)、2019年参院選448万3411票(8.9%)と、得票数が一挙に400万票半ばに落ち込み、それ以降回復しなくなった。
(3)さらに、2021~25年の「第2下降期」では、2021年衆院選416万6076票(7.2%)、2022年参院選361万8343票(6.8%)、2024年衆院選336万2966票(6.1%)と300万票台に低迷するようになった。このまま推移すると、2025年参院選は「300万票割れ」になるかもしれない。

こんな危機的状況にあるにもかかわらず、田村委員長は、都議選の結果を「総選挙比例票から押し戻す政治的流れをつくりだした」(第5回中央委員会総会、赤旗6月26日、抜粋)などと総括している。
――都議選の結果を昨年の総選挙の比例代表の結果との関係で、すなわち政治の流れの生きたダイナミズムのなかでとらえ、参院選の勝利への展望をつかむことが大切です。日本共産党が候補者を擁立した24の選挙区での得票は48.9万票(12.18%)となり、昨年の総選挙で同じ地域で得た比例の得票37.5万票(7.95%)を大きく上回りました。選挙の性格や条件の違いはありますが、わが党は、昨年の衆院選の到達点から大きく押し戻しており、全体として善戦・健闘し、与党とその補完勢力との関係でも政治的力関係の前向きの結果をかちとったのです。

この都議選総括は、「キリトリ」「スリカエ」の典型ともいうべき〝まやかし総活〟であって、今まで見たことも聞いたこともない奇妙キテレツな論法で粉飾されている。これに対する私の反論は、以下の通りである。
(1)性格の異なる選挙結果を評価する場合、大勢の動向(議席数、得票数、得票率の増減傾向など)を比較することはあっても、得票数や得票率に関する具体的な数字の比較に踏み込むことは慎重でなければならない。
(2)衆院選・参院選は全国で戦われる「国政選挙」であり、各党は全国一斉に選挙運動を展開する。両選挙の比例代表得票数は各地方の「比例ブロック」ごとに集計され、「ドント方式」によって議席が配分される。総選挙の比例代表得票数が各党の消長を示すものとして重視されるのは、比例代表得票数が議席数にストレートに反映されるためである(選挙区選挙では定員が定められ、高得票でも定員内に入らなければ当選できない)。東京都は、1自治体だけで「東京比例ブロック」(定員19)を形成している。
(3)これに対して都議選は規模が大きいものの「地方選挙」であり、都下42選挙区ごとの定員を巡って各党が議席を争う。各党は選挙戦を有利に戦うために、当選可能性の高い選挙区に集中して候補者を擁立し、全ての選挙区で選挙運動を展開するわけではない。2024年総選挙の東京比例ブロック総得票数が634万1千票であるのに対して、2025年都議選総得票数が537万票と約100万票も少ないのは、各党が候補者を擁立しない選挙区があるためである。
(4)東京比例ブロックの共産得票数は、2021年67万340票(10.4%、2議席)から2024年49万8565票(7.8%、1議席)へ17万1千票減、得票率は2.5ポイント下落した。都議選も同じく2021年63万156票(13.5%、19議席)から2025年48万9084票(9.2%、14議席)へ14万1千票減、得票率は4.3ポイント下落している。同時期に行われた総選挙と都議選は同じ結果を示しており、共産得票数・得票率の一貫した下落傾向が見て取れる。したがって、都議選の総活は総選挙と同じく前回結果との比較、すなわちこの間の著しい得票数・得票率の下落を巡って行われなければならなかった。また、2025年都議選と直前の2024年総選挙との比較を(参考までに)行うとしても、都議選総得票数48万9084票(9.2%)と総選挙東京比例ブロック得票総数49万8565票(7.8%)が比較の基準であって、その一部である都議選24選挙区を「切り取って」比較するのはおかしい。
(5)ところが、5中総の都議選総括は前回都議選との比較ではなく、2024年総選挙との比較であり、しかも共産が候補者を擁立した都議選24選挙区と同地域の総選挙との比較になっている。共産が候補者を集中して擁立した24選挙区の得票数・得票率が、全国一斉に実施される同地域の比例代表得票数・得票率よりも高くなるのは当然であって、そもそも比較の対象にはならない(してはいけない)ものなのである。
(6)しかも、都議選42選挙区の投票総数537万票を母数にした得票率9.1%を基準にするのではなく、共産が候補者を擁立した24選挙区投票総数407万6千票を母数にして得票率12.1%を割り出し、それをあたかも都議選全体の結果であるかのように印象づけている。つまり、2024年総選挙の東京比例ブロック得票数の一部である選挙区の得票率7.9%と、共産が候補者を集中して擁立した都議選24区得票率12.1%を同じ土俵に並べ、総選挙の到達点から大きく押し戻して「善戦・健闘」したと「スリカエ」、これが「新しい政治プロセス」の流れだと強調しているのである。
(7)こんな「キリトリ」「スリカエ」の小細工を弄した〝まやかし〟の選挙総括は、賢明な党員や支持者であればすぐ気付くだろうし、時間が経てば多くの人たちにも広がっていく。総選挙や都議選の敗北を率直に認めず、党勢後退の原因にはメスを入れないで「押し戻している」「善戦・健闘している」などと言うのは、〝科学的社会主義〟を標榜する政党にとっては墓穴を掘る行為以外の何物でもない。自公が総選挙や都議選で後退したのは、自公の補完勢力である保守系新興政党が台頭したためであって、共産が追い詰めたからではない。そのことは、世論調査の政党支持率の推移をみればすぐに分かることだ。
(8)5中総決定で東京都委員会や党幹部会の権威は地に墜ち、そのうち上から降りてくる総括や方針は誰も信用しなくなるだろう。2025年参院選はまさにその試金石となり、選挙結果が全てを明らかにするだろう。

一方、そんなことにはお構いなく、志位議長は例によって「総括なしの方針(目標)」を〝進軍ラッパ〟のように吹き続けている。志位議長は、この間の総選挙や都議選の敗北に触れることもなければ、総括することもない。ただただ「参院選の政治的な『目標』は自公を参院でも少数に追い込む」ことにある――と力説するだけなのである(赤旗6月27日)。そのキャッチコピーは「日本を変える大志をもって参院選をたたかいぬこう」というもの、「大志」さえあれば新しい政治プロセスは開けると信じ込んでいるらしい。

赤旗6月28日の「5中総の感想と決意」欄には、オンライン総会の視聴者から寄せられた感想が掲載されている。だが、そこでは都議選総括への疑問もなければ問題提起もなく、「納得一色」の紙面となっている。党組織の自由な議論が横断的に行われることを禁止する「民主集中制」が、党中央から降ろされてくる一方的な総括や方針を鵜呑みする(せざるを得ない)党組織の体質を形づくり、それが赤旗の編集方針と相まって翼賛的な紙面がつくられているからである。以下は、その「感想と決意」の一端である。
――都議選の議席後退をこの間の政治の流れの中でとらえ、教訓をつかむことが重要だと思った。押し戻してきた流れをさらに前に進めるために頑張りたい(京都)。
――5中総報告を聞き、都議選の結果にがっかりしていましたが、大きな政治的流れをつくっていることが分かり、霧が晴れたように視界が広がりました(長野)。
――都議選の全体の結果、しんどいなあという気持ちでしたが、田村さんの報告で、昨年の総選挙との対比では、他党派が大きな後退をしている中で、わが党はしっかり押し返していて、参議院選挙での躍進の展望を切り開いているという分析にたいへん救われる思いがした(神奈川)。

赤旗の紙面はこれから参院選一色となり、この種の「決意」で連日紙面が埋まることになるのだろう。だが、それでも党組織の高齢化にともなう党勢後退の動きは押し止めることはできない。参院選告示の直前、7月2日に公表された6月の党勢拡大の結果は、入党者211人、赤旗読者は日刊紙55人増、日曜版386人増、電子版52人増というもので、赤旗はこれを「赤旗読者3カ月連続前進」との見出しをつけて報道している。だが、実態はどうか。毎月初めに赤旗に掲載される数字を累計すると、第29回党大会(2024年1月)以降の1年6カ月分の実績は、入党者6351人(月平均353人)、日刊紙7565人減(月平均420人減)、日曜版4万200人減(月平均2233人減)、電子版1312人増(月平均73人増)、赤旗読者計4万6453人減(月平均2580人減)と後退一途となっている。

志位氏が委員長を退いて議長に就任した第29回党大会(2024年1月)当時の党勢は、党員25万人、赤旗読者80万人だった。第29回党大会決定は、第30回党大会(2026年1月)までに第28回党大会現勢(2020年1月、党員27万人、赤旗読者100万人)を必ず回復・突破し、2028年末までに(5年間で)党員と赤旗読者を第28回党大会時比3割増(党員35万人、赤旗読者130万人)にするというものだった。この方針を達成するため、(1)毎月2万人以上に働きかけ、2千人以上の党員を迎える、(2)毎月1200人の日刊紙読者、6000人の日曜版読者の増勢をはかる、(3)党員拡大の6割、7割を青年・学生、労働者、真ん中世代で迎える――との方針も決定された。

だが、実績は方針(目標)に反して、入党者は「毎月2千人以上」に対して2割弱の350人余でしかなく、日刊紙読者は「毎月1200人増勢」に対して420人減、日曜版読者は「毎月6000人増勢」に対して2200人余減となっている。また、党員数は毎月入党者数だけが公表されるが、死亡者数は大会ごとにしか公表されず、離党者数は不明のままなので、正確な党勢は分からない。

第29回党大会(2024年1月)で公表された現勢は、第28回党大会(2020年1月)時党員数27万人、赤旗読者100万人、4年間の入党者数1万6千人(年平均4千人)、死亡者数1万9814人(年平均5千人)、2024年時党員数25万人、赤旗読者80万人というものだった。ここから「27万人+入党者数1万6千人-死亡者数2万人-離党者数1万6千人=25万人」との計算式が導ける。入党者数に匹敵する離党者数(未公表)が恒常的に発生しており、これに死亡者数が加わって党員数が4年間で2万人減少し、それとともに赤旗読者20万人が減少したのである。

第30回党大会(2026年1月予定)では、2年間の入党者数、死亡者数が公表されるだろうから、同様の計算式で離党者数を推計できる。現状から推測すれば、第29回党大会当時の現勢「党員25万人、赤旗読者80万人」は減ることがあっても増えることはないと思われる。2025年参院選の真摯な総括に基づき、この2年間の党勢後退の現実を客観的に分析し、抜本的な党再生の道が真剣に討議されることを期待したい。(つづく)

初出:「リベラル21」2025.7.07より許可を得て転載
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