〝共産党幹部は気楽な稼業と来たもんだ〟...植木等の「サラリーマンどんと節」が聞こえる、2025年参院選の結果から(2)
7月20日の参院選から10日余り、8月1日に臨時国会が開かれ、当選した議員たちが初登院した。野党で唯一議席を減らした共産党議員3人も登院したが、新興政党の面々が脚光を浴びる中でカメラの対象にもならず、ニュースにも登場しない寂しいスタートだった。共産党は党幹部(副委員長2人と参院国対委員長の計3人)が相次いで落選したのだから、残った党幹部はさぞ大変だろうと思っていたが、さにあらず、最高幹部の志位議長などは連日、自著出版のPRに明け暮れていて得票数や議席の大幅減など「どこ吹く風」だ。
選挙後の「しんぶん赤旗」も然り、7月22日に中央委員会常任幹部会の選挙総括「参議院選挙の結果について」が出ただけで、それ以外の「総括らしい総括」は皆無という有様。7月24日に全国都道府県委員長会議が開かれたが、小池書記局長が常幹声明に基づき「赤旗拡大から反転攻勢に転じよう」と例によって発破をかけただけで、議論らしい議論はほとんど行われていない。その証拠に、11都道府県委員長の決意(赤旗7月29日)は、いずれも判を押したように「常任幹部会声明を確信に頑張ります!」というもので、驚くべきことに民主集中制に基づく「上意下達システム」はいささかも揺らいでいない。
どうやら共産党は、今回の参院選総括を「常幹声明」程度のお粗末な内容でお茶を濁すつもりらしい。7月27日のNHK日曜討論では、9与野党の選挙対策責任者が出席して選挙結果や今後の政策協議などについて議論したが、小池書記局長は「自公両党が過半数を割った」「共産党は1人区の野党候補一本化に貢献した」などと一般論を述べただけで、これだけの惨敗を喫しながら、共産党自身の敗因については何一つ語らなかった(赤旗7月28日)。田村委員長もまた、参院選の敗因については何一つ言及していない。8月1日の臨時国会の党議員団総会あいさつでは、「参議院選挙の総括は、党内外からの意見を丁寧にお聞きして、次の中央委員会総会で行います」と言っただけで、あとは一般的な政治情勢についての説明に終始している(赤旗8月2日)。
ところがどうだろう。志位議長だけはこの間、赤旗の紙面を独り占めするような大活躍ぶりなのである。だが、それは参院選総括についてではない。2カ月余り前の講演を収録した自著の出版についてのことなのだ。7月27日は赤旗全紙を使って、志位議長が5月10日の民青同盟主催の「学生オンラインゼミ・第4弾」で行った講演を収録した新著『Q&A、いま「資本論がおもしろい―マルクスとともに現代と未來を科学する』(新日本出版社)の「はじめに」が全文転載された。続く7月31日は、1面トップで志位議長の出版発表会見記事が掲載され、さらに翌8月1日には、志位議長の発言と記者団との一問一答がこれも全紙を使って詳報されている。
周知の如く、参院選投開票日から8月上旬にかけては与野党が選挙総括について激しい論争を繰り広げた時期であり、現在もまだ進行中だ。自民党では石破首相の進退を懸けた抗争が続いており、7月31日には参院選の大敗を分析する総括委員会の初会合が党本部で開かれた。森山裕幹事長ら党主要幹部で構成する総括委員会は、地方組織や有識者らのヒアリングを踏まえ、敗因分析や課題への対応策を検討し、8月中に報告書をまとめる予定だという。森山氏は、とりまとめた段階で辞任する意向を示唆している(各紙8月1日)。
自民党と連立政権を組んできた公明党も8月1日、都道府県本部の幹部を集めた全国県代表協議会を開き、大敗した参院選の総括を始めた。8月中に党幹部が全国を回って総括をまとめ、9月には党再生に向けた新しい方針を打ち出す考えだという。斎藤代表は協議会の冒頭、「極めて厳しい結果だ。党の力量不足であり、責任は全て党代表である私にある」と謝罪した(毎日8月2日)。
野党第一党の立憲民主党の動きについても、「立憲 参院選巡り責任論、小沢氏ら野田執行部へ圧力」との見出しで、毎日新聞(8月2日)が大きく報じている、立憲民主党は改選22議席を確保したものの、比例代表得票は国民民主党や参政党を下回り、8月1日の両院議員総会では「立憲はオワコンだ」「解党的出直しを」など、若手や中堅から執行部の刷新を求める声が次々と上がった。野田代表は、7月31日の全国幹事長会議で「結果を重く受け止めなければならない」と反省の弁を述べ、8月中には参院選の総括をまとめる見通しだという。
共産党は、2022年参院選の4議席・比例代表得票361万8342票(6.8%)から、今回参院選では3議席・286万4738票(4.8%)に大きく後退した。比例代表得票数では11与野党中最下位に近い第9位に落ち込み、NHK日曜討論でも司会席から遠く離れた末席しか与えられていない。これだけの大敗を喫しながら、不思議なことに党の最高幹部である志位議長は謝罪もしなければ責任も取らない。党の敗北など「どこ吹く風」とばかり「資本論はおもしろい!」と自著の宣伝に大活躍なのである。
もし、自民党の石破総裁や公明党の斎藤代表が志位議長のように敗北声明も出さず、謝罪もしなければ、彼らの首は1日も持たないだろう。議員総会で吊し上げが始まり、地方組織からは即刻辞任の声が上がるだろう。これが通常の政党の姿というものである。ところが、共産党では批判の声も責任追及の声も上がらない。「民主集中制」の組織原則によって党中央への批判が抑えられ、志位氏はその上に胡坐をかいているからである。
全国都道府県委員長会議で小池書記局長は「常幹声明を討議し、この7月から党勢拡大で前進を」と発破をかけ、各都道府県委員長も「常幹声明を確信し頑張る」と呼応した。しかし、8月2日に公表された7月の拡大成果は、入党148人、日刊紙3350減、日曜版1万4163人減、電子版214人増となり、依然として党勢後退が続いている。第29回党大会(2024年1月、党員25万人・赤旗読者85万人)は、2年後の第30回党大会(2026年1月)までに党員27万人・赤旗読者100万人を回復し、2028年末までに党員35万人・赤旗読者130万人を達成する――との目標を決議した。それから1年7カ月後の現在、党勢拡大の結果は、入党6499人(月平均342人)、日刊紙1万915人減(月平均574人減)、日曜版4万3550人減(月平均2292人減)電子版1526人増(月平均31人増)であり、後退一途となっている。これでは第30回党大会での党勢は、党員22万人(3万人減)、赤旗読者75万人(10万人減)程度に落ち込んでもおかしくない。しかも党員の高齢化はますます加速しているのだから、活動量がこれからも減退していくことは間違いない。
冒頭に〝共産党幹部は気楽な稼業と来たもんだ〟と、植木等の「サラリーマンどんと節」をもじってタイトルを付けた。植木等は真面目な歌手だっただけに、「サラリーマンどんと節」の意味するところは面白い。志位議長が〝気楽な稼業〟をこのまま続ければ、共産党が「はい、それまでよ!」となる日が近づいてくる。志位議長が次期党大会で辞任しなければ、共産党の未来は開けない。(つづく)
初出:「リベラル21」2025.08.06より許可を得て転載
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