共産党はいま存亡の岐路に立っている(その78)

アクセルを踏んでもスピードが出ない、「世代的継承を中軸に、質量ともに強大な党をつくる集中期間」が不発

第6回中央委員会総会(2025年9月)は、2025年9月~12月末までを「世代的継承を中軸に、質量ともに強大な党をつくる集中期間」とし、全党の力を集めて必ず成功させることを呼びかけた。集中期間の目標は、①党員拡大では、全党の力で世代的継承にとりくみ、毎月現勢で前進し、5千人の新しい党員を迎える。②赤旗読者拡大では、「紙」と電子版の合計で日刊紙、日曜版とも第29回党大会現勢を回復・突破する。日刊紙は1万人、日曜版は「紙」で2.7万人、電子版で3万人を増やす。③党大会決定の具体化・実践としてとりくんできた二つの『Q&A』――『いま「資本論」がおもしろい』(赤本)、『共産主義と自由』(青本)をすべての党機関と支部で学習するとともに、青年・学生、労働者はじめ国民のなかに広げる、というものである。

第29回党大会(2024年1月)は、党勢を今後3年間で第28回党大会現勢(党員27万人、赤旗読者100万人)に回復・突破することを決議した。しかしそれ以降、拡大が遅々として進まず、党勢が後退する一方となり、赤旗「電子版」発行を機に今回の「集中期間」が設定されたのだろう。これは過去の経験を踏襲するもので、これまでは期限を切って拡大運動に取り組むことで、それ相応の成果を挙げてきたからである。

だが、「集中期間」の4分の3がすでに経過した現在、赤旗電子版の発行という画期にもかかわらず、党勢はいっこうに回復しない。いくら「アクセル」を踏んでもスピードが出ない、むしろ「スローダウン」するというのが現実の姿なのである。「老骨に鞭うつ」という言葉があるように、超高齢化した党組織に対してはいくら発破をかけても昔のような勢いで拡大することができない。「集中期間」前後の拡大目標がどのような経緯を辿っているかを見よう。

第29回党大会から「集中期間」が始まるまでの1年8カ月(2024年1月~2025年8月)の拡大実績は、入党6667人(月平均333人)、日刊紙1万1313人減(同565人減)、日曜版5万7338人減(同2866人減)だった。これが「集中期間」3カ月でどう変わったかと言うと、入党948人(同316人)、日刊紙「紙」1585人減(同528人減)、日曜版「紙」6136人減(同2045人減)、日刊紙「電子版」484人増(10月以降、同242人増)、日曜版「電子版」8359人増(10月以降、同4179人増)となった。

集中期間前と集中期間の拡大実績を「月平均」で比較すると、入党は333人と316人、日刊紙「紙」は565人減と528人減、日曜版「紙」は2866人減と2045人減とそれほど大きく変っていない。新しく発行された「電子版」は、日刊紙242人(10月288人、11月196人)、日曜版4179人(10月7280人、11月1079人)と増えたが、入党は316人にとどまり、日刊紙「紙」は528人減、日曜版「紙」2045人減と依然として減紙が続いている。

しかし、小池書記局長が12月2日、オンラインで訴えた「始まった前進の流れを広げに広げ、集中期間の目標達成を」(赤旗12月3日)と題する以下の内容は、事態を正確に伝えていない(要旨)。

――11月は453人の新しい党員を迎えることができました。止まっていた党員拡大が動き始め、昨年7月以降では最高の到達点を築いたことは、11月の全国都道府県委員長会議を受けたみなさんの奮闘の結果です。読者拡大は、紙の日刊紙読者が133人減、日曜版が60人減、電子版は日刊紙が196人増、日曜版が1079人増となり、全体として参院選後からの連続後退を脱し、5カ月ぶりに日刊紙、日曜版とも前進に転じることができました。日曜版電子版の発行で8300人を超える読者が生まれたことは、今後の「しんぶん赤旗」中心の党活動と世代的継承の事業にとって重要な一歩です。

小池報告は、2024年1月以降の党勢拡大の推移を総括したものでもなければ、集中期間3カ月の推移を把握したものでもない。11月の「瞬間風速」的な数字を根拠もなく今後も継続するものと見なし、主観的な願望を述べているにすぎない。第29回党大会以降の1年11カ月の入党者は、2024年4852人、2025年2473人、計7325人、年間平均4千人を割ることがほぼ確実となっている。また機関紙「紙」読者は、日刊紙2024年6279人減、2025年7034人減、計1万3313人減、日曜版2024年3万1446人減、2025年2万9795人減、計6万1241人減、合計7万4554人減となり、10月以降の「電子版」読者1万数千人増を加えても2年間で6万人、年間平均3万人程度の減紙が見込まれる。

今回の集中期間が「日本とわが党の前途にとって文字通り命運がかかったものとなる」と位置づけられているように、日本の運命と共産党を一体に捉える〝運命共同体論〟が依然として展開され、「共産党が後退すれば日本の前途は危うい」といった時代認識が強調されている。だが、使命感だけでは党勢拡大はできない。拡大目標を具体的にどう実現するのか、その「実現可能性」について説得力のあるデータと方針が示されなければ党勢拡大は前進しない。「集中期間」を提起した6中総決議は以下の3点を強調したが、実現可能性についてはほとんど説明らしい説明がない。

(1)日本の政治の歴史的岐路を打開するためには、自民党政治を根本から変える改革を推進し、極右・排外主義とのたたかいをすすめる日本共産党が、強大な党へと前進することがどうしても必要である。

(2)自力の後退と選挙での後退の悪循環をここで断ち切り、世代的継承を中軸にすえて強く大きな党をつくり、その力で選挙に勝つという好循環に転ずることがどうしても必要である。

(3)第29回党大会(2024年1月)で決めた党建設の目標、第30回党大会までに、党勢を前進の軌道にのせ、第28回党大会現勢(27万人の党員・100万人の赤旗読者)の回復・突破をやり遂げるには、いまここで確かな前進に転ずることが不可欠である。

高市内閣の支持率が(なぜか)高水準を維持している状況の下で、いつ解散があってもおかしくないとの風評が飛び交っている。「集中期間」が不発に終わりつつある現在、共産党は早期の解散に備えて今度はいったいどんな方針を打ち出すのであろうか。(つづく)

「リベラル21」2025.12.11より許可を得て転載
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〔opinion14563:251211〕