(2022年11月9日)
内閣支持率は低ければ低いほど良い。なまじ高支持率の内閣は傲慢となって、その奇っ怪な本性を現す。少しでもマシな政策を実行させるためには、支持率を低くしておくに限る。
世論調査における岸田内閣の支持率低下に歯止めがかからない。結構なことだ。何とか手を打たなくてはならないとの思いからであろう。岸田は昨日突然に、統一教会の被害者救済新法の成立に本腰を入れることを表明した。今国会での法案提出に最大限努力するという。内閣支持率低迷も、被害者救済新法成立見通しも結構なことではないか。
具体的な岸田の言は、「政府として、今国会を視野にできる限り早く提出すべく最大限の努力を行う」というもの。これに先立つて、公明党の山口那津男代表と官邸で会談。新法の主な内容について合意したという。これで、統一教会被害者救済新法は、議員立法でなく政府案として国会提出される見通しとなった。
自民党議員とりわけ安倍派と教団との癒着を背景に、及び腰に見える取り組みが世論の離反を招いたため、岸田が態度を変えて厳しく対処する姿勢を押し出した、と報じられている。
昨日首相は記者団に対し、新法の内容として、
(1) 社会的に許容しがたい悪質な寄付の勧誘行為を禁止、
(2) 悪質な勧誘行為に基づく寄付の取消しや損害賠償請求を可能とする、
(3) 子や配偶者に生じた被害の救済を可能とする
―の3点を挙げた。
異存はない。早期の法案化を期待したい。
もっとも、この急進展歓迎の一色ではない。先月24日に、迅速で適切な対応を求める声明を出した宗教研究者有志の代表で、北海道大大学院の桜井義秀教授(宗教社会学)は、被害者救済を急ぐ必要性を指摘しながらも、「旧統一教会の統制目的で、他の宗教団体に影響が及んでは意味がない」「宗教団体の組織存続の要は寄付や献金、布施であり、さまざまな団体が納得する形にするべきだ」と発言している。このような貴重な意見も踏まえて、法案はバランスの取れたものになるだろう。
なお、首相は「私自身、旧統一教会の被害者の方々と内々にお会いし、凄惨(せいさん)な経験を直接お伺いした」と教団被害者に既に直接面会したと明らかにし、「政治家として胸が引き裂かれる思いがした」と言及。「政府として被害者救済と再発防止のために、更にペースを速め、範囲を広げて新たな法制度の実現に取り組む決意をした」と語った。政府関係者によると、首相は被害者3人と面会し、約1時間半にわたり話を聞いたという。揶揄することなく、「首相の言や良し」というべきである。これも、低支持率の賜物。
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2022.11.9より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=20264
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〔opinion12529:221110〕