「加計3悪人」(萩生田・菅・下村)や、「『THIS』(豊田・萩生田・稲田・下村)IS敗因」だけではない。自民の都議選惨敗や、安倍内閣支持率凋落には、数々の立役者が活躍した。安倍昭恵、金田法相、二階幹事長、河村健夫…。そしてなによりも安倍晋三本人である。
オウンゴールとは、めったにあるものではない。にもかかわらずそれを繰り返すプレーヤーは、オウンゴールの名手と褒め称えなければならない。その筆頭は、もちろん稲田朋美を措いてない。単なる無能の域を超えて、意図的に獅子身中の虫たらんと精進を重ねているに違いないのだ。
またまた、やらかした。昨日(7月19日)各紙朝刊が一面トップで報じた「南スーダンPKO日報隠蔽了承」疑惑だ。同日の夕刊では、新たな関連記事で追い打ち。この人らしいのは、それでも否認し続けていること。蛙の面になんとやらなのだ。
事実を確認しておこう。19日新たな報道がなされる以前に知られていた経過は以下のとおりである。
昨年(16年)12月2日、防衛省は陸上自衛隊の南スーダンPKO現地部隊が作成した日報の情報公開請求に対し、「陸自が廃棄済みで不存在」として不開示とした。だが、後にこの資料が統合幕僚監部に電子資料として保管されていた事実が判明した。「紙」は廃棄されたが、「パソコンの中のデータ」は残されていたということだ。本当は最初から探す気さえあれば、存在した資料のはず。これが12月26日のこと。ところが、どういうわけか、そのデータ発見の事実が大臣まで報告されたのは、1か月を経た翌17年1月26日となった。これを受けて防衛省が、データの保管を認めるとともに、一部は黒塗りで情報公開したのが2月6日。
さらに3月15日、報道によって、統幕だけではなく陸自にもデータが保管されていたことが判明して、問題となった。翌3月16日には、衆院安全保障委員会で、野党が稲田を追及。稲田は「(陸自からの)報告はなかった」と明言している。そのうえで「私の責任で徹底した調査を行わせる」と述べ、防衛監察を命じたことを明らかにしている。
ところが、7月19日朝刊の新たな報道では、3月16日衆院安全保障委員会での「(陸自からの)報告はなかった」という稲田答弁は真っ赤な嘘なのだという。稲田は、「陸自の日報隠蔽を了承していた」というのだ。新たな報道の経過は以下のとおりである。
問題の日報の電子データは、今年1月17日陸自でも見つかっていた。これを受けて、防衛省の背広組と制服組の最高幹部による緊急会議が2月15日に開かれたという。廃棄してないはずなのに出てきた日報の取り扱いをめぐる会議。今さら「あった」とはいえないから、「陸上自衛隊にあった日報は隊員個人が収集していたもので、公文書にはあたらない」という理屈を付け、「保管の事実を公表する必要はない」との結論に達して会議は終了したという。
報道では、稲田防衛相、黒江哲郎事務次官、豊田硬官房長、岡部俊哉陸上幕僚長らが出席していた。当然に稲田も、「会議での隠蔽の結論を了承した」と各紙が報道した。さらに、追い打ちをかけるように、会議の2日前2月13日にも陸自の担当者は稲田大臣に報告していた、と報道されている。
このような経過がありながら、稲田は3月16日に、国会で「(陸自からの)報告はなかった」と答弁した。しかも、「私の責任で徹底した調査を行わせる」「徹底的に調査の上、防衛省、自衛隊に改めるべき隠ぺい体質があれば、私の責任で、改善していきたいと考えております」とまで述べているのだ。
なお、注意すべきは、一部ではあるが、「2月6日に統幕にあった情報の公開は(黒塗りであるにせよ)なされているのだから、重ねての陸自資料の有無や公開にこだわる実益に乏しい」と、問題を矮小化する議論が行われている。このような論点ずらしの妄論に惑わされてはならない。
最大の問題は、稲田の3月16日国会答弁が虚偽であったことである。そして、防衛省内の隠蔽体質と、これをコントロールできない大臣の無力無能である。まずは12月2日に「日報不存在」と言った虚偽。統幕がデータの存在を確認して公開まで1か月余の不申告。さらに、3月19日報道の口火を切った共同通信記事はこう伝えている。
「日報を巡っては、情報公開請求を不開示とした後、昨年12月に統合幕僚監部で発見。その後、陸自でも見つかったが、1月27日に統幕の背広組の防衛官僚が、報告に来た陸上幕僚監部(陸幕)の担当者に『今更陸自にあったとは言えない』と伝達。2月にデータは消去された。」
1月27日とは、2月6日情報公開以前のこと。統幕なら「データがあった」と言ってもよいが、「今更陸自にあったとは言えない」というのが隠蔽体質。
またまた稲田が嘘をついている公算が高い。いうまでもなく、嘘つきは泥棒のハジマリ、政治家のオシマイである。嘘つき防衛大臣の存在を許してはならない。これこそ、危険極まりない。
8月3日に内閣改造の予定だという。これだけ問題を起こし続けている稲田朋美をそれまで防衛大臣の椅子に居座らせ続けてはならない。
安倍晋三は、7月19日夜麻生太郎らとの会食の席で、「小泉政権は田中真紀子外相を更迭したときに、内閣支持率が下がった」と言及したと報じられている。これを「田中切るバカ、稲田切らぬバカ」という。
稲田は直ちに辞めろ。稲田を直ちに辞めさせろ。無傷で、任期を全うしたなどと言わせてはならない。
(2017年7月20日)
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2017.07.20より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=8899
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
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