再生可能エネルギーを押さえつけて、滅びゆく恐竜=原発にしがみつく地域独占の電力会社と経済産業省:再生可能エネルギー買取制度の改悪を許すな

今般、FOEジャパンの主催で、経済産業省による再生可能エネルギー買取制度見直し案のパブリックコメントに関するワークショップが開催されました。講師には環境エネルギー政策研究所(認定NPO法人)の松原弘道氏が招かれ、会場との質疑応答も交えて充実した内容の講演が行われました。また、ワークショップ後半では、竹村英明氏(「緑茶会」代表、市民電力連絡会会長)もネット電話を通じて再生可能エネルギー買取制度に関するコメントをされ、また、参加者各位も今回のパブコメへの提出意見書を実際に書いてみるなど、実践的な作業もセットになっておりました。以下,簡単にコメントいたします。

 

●パブリックコメント:意見募集中案件詳細|電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620114024&Mode=0

 

(改正の概要)

http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000121435

 

●FoE Japan | 気候変動・エネルギー

「【緊急開催】 再エネの未来が今ピンチ? 誰でもわかる 買取制度の見直しに関するパブコメ・セミナー」

http://www.foejapan.org/energy/evt/141227.html

 

(1)ワークショップ・レジメ(1) 「固定価格買取制度の運用見直しの課題」(松原弘道 2014.12.27)

(2)ワークショップ・レジメ(2) パブコメ出そう (2014.12.27)

(3)電力システム改革と自然エネルギー本格導入のための方策(松原弘道(環境エネ研)『原子力資料情報室通信 2015.1』)

(4)(イベントちらし)1.10 パワーシフト・シンポジウム「電力システム改革=小売り自由化に向けて」

(5)太陽光 九電、来月買い取り再開 発電抑制、日数の上限撤廃(東京 2014.12.23)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2014122302000125.html

 

<関連サイト>

(1)再生可能エネルギーへの系統「接続拒否」を読む – 竹村英明の「あきらめない!」

http://blog.goo.ne.jp/h-take888/e/04861efa49a82436ba6e671a667ee0a4

(9)再生可能エネルギーで日本再生 – 竹村英明の「あきらめない!」

http://blog.goo.ne.jp/h-take888/e/cab50d008b8983fca062b9bc7eecc54f

 

(田中一郎コメント)

今般の経済産業省が持ち出してきた再生可能エネルギー買取制度の見直し案は、そもそも原発にしがみついて再生可能エネルギー買取りをしたくない地域独占の既存電力会社9社の愚かで身勝手な言い分をふんだんに取り入れて「その場しのぎ」の対応を行っただけの、実にお粗末極まりないものです。まさに原子力ムラ代表者による、再生可能エネルギーの可能性つぶしと言っていいでしょう。かような人たちに日本のエネルギー政策をゆだねていては、日本は世界の大きな流れに取り残され、私たちの未来はどんどん暗くなっていきます。

 

福島第1原発事故を経験しても、旧態依然のまま、電力業界や原子力業界と癒着を続ける経済産業省は解体されるべきです。少なくとも原発やエネルギー政策とは切り離すべきです。また、電力供給のパイオニアとしての資質を喪失して、日本最大の「抵抗勢力」となっている既存の地域独占電力会社9社もまた、会社更生法その他の法的な措置を取り、解体・再編・質的転換が図られるべきです。このままでは、日本は滅びゆく恐竜=原発とともに運命を共にしなければなりません。それは、かつてのアジア太平洋戦争の時代に、かの大日本帝国が、戦艦大和に代表される巨砲巨大戦艦とともに滅び去ったこととよく似ていると言えるでしょう。愚かなことを再度繰り返してはならないと思います。

 

それから、今回の再生可能エネルギー買取を巡る騒動で私が根本的にわからないのは、電力の需要量に対して再生可能エネルギー電力を含む供給量が大きいとダメだという点です。その逆、つまり供給量に対して需要量が大きい場合がダメだ(供給量が足りないのはダメだ)というのならわかるのですが、今回のように需要量に対して供給量が大きいのはダメだ、というのはなかなか理解しがたいものがあります。ワークショップでも松原弘道さんに質問してみましたが、その回答はしっくりこないものでした。それで私なりに、この電力需要量>(買取再生可能エネルギー電力を含む)電力供給量、がダメな理由を考えてみると、次の2つではないかと思われます。

 

(1)再生可能エネルギーは時々の自然環境に左右されやすいものが多く、その変動が激しすぎる。電力需要量の変化が電力供給量の変化に対応できず、供給量が一気に減少してしまうと、大規模停電になる可能性がある(つまり、技術的な理由 ⇒ しかし、ヨーロッパなどの事例から見て技術的に克服可能ではないか)。

 

(2)再生可能エネルギーを需要がないのに買取り続ければ、既存の地域独占電力会社は販売収入がないのに仕入れコストだけがかかる形となり、電力事業が成り立たなくなる。一定範囲の供給過多ならば吸収可能だが、大規模な形での再生可能エネルギー供給過多は電力会社の経営上、対応できない(つまり、電力会社の経営上の問題 ⇒ やり方によって、いくらでも克服可能である。場合によっては、需要サイドをコントロールする方法もある)。

 

ということで、いずれも、今行われているような乱暴な再生可能エネルギー買取を拒否するようなやり方ではない対策があるにもかかわらず、まるで再生可能エネルギーの可能性を将来に向けてつぶすかの如く、法律で義務付けられた再生可能エネルギー買取りを(やむを得ない事情がないにもかかわらず=他に対応の方法があるにもかかわらず)中断してしまいました。まさに法律違反そのものです(「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」)。日本という国では、電力会社など原子力ムラのやることは全て治外法権になっていて、今回のことも法治国家の枠組みの外で平然と、白昼堂々と行われているのです。

 

●資源エネルギー庁 なっとく! 再生可能エネルギー

http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/index.html

 

<私のパブコメ提出意見書>

1.再生可能エネルギーの中長期的な導入目標や、その実現のための具体的な施策やスケジュール(行程表)などが何も決められていない中で、さまざまな適切な代替策や対応策があるにもかかわらず、まるであわてて再生可能エネルギー電力の増大を阻止せんが為のごとく、再生可能エネルギー規制を導入しようとしている。また、その根底には、依存度を引き下げていくとされている原発・核分裂エネルギーへの過度のもたれかかり・しがみつきが見られるなど、我が国の大きなエネルギー政策の方向性とも齟齬をきたしている。今回の対策=再生可能エネルギー買取り制度の見直しは、既存の地域独占電力会社の身勝手で視野狭窄・思考停止の言い分だけを取り入れた、まるで場当たり的に策定された対処療法的な愚策にすぎず、我が国のエネルギー政策の根幹を歪めるものに他ならない。全面的に撤回し、他の方法を検討し直せ。

 

2.原発をベースロード電源とし、火力についてはエネルギー効率を上げるためや温暖化ガス排出の削減を念頭に置かずに、再生可能エネルギー買取りの制度を考えていることが根本的に誤りである。原発はちょっとした地震や天災ですぐに運転停止となり、また、ずさんな管理や様々なトラブルで運転ができなくなることの多い「不安定電源」であり、かようなものをベースロードになどできないことは明らかである。また、巨大地震・津波・火山噴火や、原発それ自身のトラブルによる過酷事故の再発への懸念も大きく、しかも、使用済み核燃料の処分方法さえ決まっていない。そもそも原発をベースロード電源とすることについて国民的な合意がないのである(原子力ムラの勝手な独断専行・暴走だ)。また、火力については、石炭火力をやめて天然ガスを活用する「コンバインド・ガス・タービン」と「コ・ジェネ」(熱電併給)によるオンサイト型電源を普及させ、電力の供給構造を変えながら再生可能エネルギーの活用と拡大を考えるべきところ、今般の(案)には、そうした考えや発想が全く見られない。

 

3.電力の需要構造の転換が考慮・検討されていない=簡単に言えば、電気を青天井で湯水のように使うことを前提に、従来型の、遠隔地大量生産=消費地への電力託送と、電力依存型のビジネススタイル、ライフスタイルの継続が、エネルギー政策の大前提になっている。これでは再生可能エネルギーの活用といっても限界があり、早晩、大きな壁にぶち当たってしまう。電力の消費構造を転換し、大量生産大量消費、経済成長至上主義、東京一極集中、都市の農村に対する優位、といった20世紀型経済社会構造を変えていく議論を踏まえつつ、再生可能エネルギーの活用を考えるべきである。再生可能エネルギーを既存電源に代わる単純な代替電源としてだけ見ることは、中長期的な観点から言って、誤った考え方・近視眼的な発想である。

 

4.再生可能エネルギーの接続可能量の算定が決定的におかしいし、そもそも、かような再生可能エネルギー接続可能量の算定=買取り量のキャップ(上限)設定自体の必要性が乏しい。仮に、設定するにしても、まだほとんど再生可能エネルギー電源が実際に建設・稼働する状態にない(認可されただけの)段階での設定は時期尚早だ。

 

(1)原発電源のカウントが異常に(作為的に)過大である。こんなものは、誰が見てもおかしいということは一目瞭然で、これを平気で審議会でOKを出してパブコメにかける経済産業省(及び資源エネルギー庁、以下同じ)は、エネルギー政策を扱う資格がないのではないか(審議会もまた同様)。それでも電力業界の監督官庁と言えるのか。審議会委員も含め、原子力ムラ代理店人間達はエネルギー政策から立ち去れ。(過大な点=高すぎる稼働率、まだ出来てもいない原発をカウント、再稼働の見込みが立たない原発もカウント、原発を減らそうという気配が全くないなど)

 

(2)揚水発電の利用が全く不十分である。

 

(3)系統広域利用のことが真剣に十分に考慮されていない。既存の電力会社間の連携線の活用についてもいい加減、ないしは理由もなく使わないまま、再生可能エネルギー買取りを拒否している観がある。また、電力の地域独占を払いのけるためにも、既存の地域独占電力会社間の系統連携線の拡充のための方策が必要不可欠だが、それについて費用負担や進め方などに関し熟慮が足りない。

 

(4)再生可能エネルギーの接続可能量を地域独占の既存電力会社10社に算定させているのは、いわゆる「利益相反」そのものであり、まことにおかしな話である。経済産業省はまじめにこの問題を考えるつもりがあるのかという印象を強く受ける(癒着している電力会社とのなれ合いで、今回の再生可能エネルギー買取り制度の改定=電力会社の身勝手な要請を実現させるために、もっともらしい猿芝居をしているのではないか)。但し、原子力ムラの支配する世界では利益相反行為は日常茶飯だ。

 

特に、今回の再生可能エネルギー電力の接続可能量計算の結果が、これまで各地域独占の電力各社が接続を承諾していた電力量とほぼ同じというのは笑止千万で、今回のことは、ここから逆算をして、最初から決めていた数字に結論を導くべくなされた、一連の「猿芝居」ではなかったか。もっともらしく、御用人間達を集めて審議会などを開いて審議させ、結局は、電力会社の言うがままに再生可能エネルギーの買取りを絞り込んでしまったということにすぎないではないか。こんなものはやり直しである。

 

(5)ヨーロッパなど、諸外国の事例を参考・教訓とせよ。たとえば、再生可能エネルギーの需要や供給を予測しながら買取りをきめ細かくしていく方法や、卸売電力市場の活性化など。

 

5.新規参入の電力会社と、既存の地域独占に胡坐をかく大手電力会社とは、商売上の競争相手である。その一方が他方の再生可能エネルギーの買取り量を決めるというのは、全くおかしな話である。買取りに関する基本的な決めごと=条件のようなものもなく、既存電力会社の恣意に委ねよと言うに等しい。やはり買取りは、電力事業から完全に独立の第三者機関が決めなければ、地域独占の電力会社の電力市場支配は解消せず、何のための電力自由化なのか、分からなくなってしまう。こうした問題を解決するには、電力の送配電網を「法的分離」ではなく「所有分離」により、既存の地域独占電力会社から完全に切り離す必要がある。そうしないと、電力の自由化の目的や主旨が達成困難となる(このままだと、電力供給の様々なシステムを通じて、既存の地域独占電力会社の支配が強化されてしまう可能性が高く。それでは自由で公正な電力市場での企業間競争が歪んでしまう)

 

6.新規参入の再生可能エネルギー発電事業者の接続費用負担の巨額化や、新規参入後の事業の採算見通しが不透明となるようなやり方での再生可能エネルギー電力の接続ルールはまことによろしくない(買取価格の決定、事業計画の変更認可の厳格化、無制限の無償出力抑制など)。せっかくボトムアップで盛り上がりつつある再生可能エネルギービジネスを、上から潰してしまうことになりかねない。

 

7.再生可能エネルギー買取価格にきめ細かさがない。新規参入者の実態をよく見ること、あるいは、エネルギーの地産地消=オンサイト型電源を優先するなどの価格決定の仕組み、などが検討されてしかるべきである。「筋の良い」再生可能エネルギーが繁栄し、タチの悪いエネルギー源は広まらないような工夫が必要だ(有害化学物質を排出するプラごみを混焼するすゴミ発電はバイオマスとは見なさないなど)。

 

8.再生可能エネルギーのうち、天候・気候に左右されない、小型水力、バイオマス、地熱などの電力は、ベースロードにふさわしい電源であり、優先買取りされるべきだが、実際には、原発などに劣後させられている。また、太陽光と風力など、相互補完的な側面もあるので、もっときめ細かな発電予測が必要だ。改めよ。

 

9.電力ユーザー・消費者が選択できる仕組みを断固として担保せよ。新聞等が伝えるところでは、審議会などでは、再生可能エネルギー電源の電気については、販売時において、再生可能エネルギーが電源である旨の表示ができないようにする、などという、とんでもない検討がなされていると聞く。まったくふざけた話であり、誰のための何のための電力事業なのかを問いたい。そのような発言をする審議会委員には、おやめいただきたい。

 

10.原子力ムラ・放射線ムラ、その代表格の電力業界や原子力業界と癒着をし、日本を誤ったエネルギー政策へと導いていく経済産業省をただちに解体すべきである。そもそも福島第1原発事故の責任は、ひとえに監督官庁の経済産業省にあるにもかかわらず、その責任が全く問われていないのは理解できない。経済産業省から、原発やエネルギー政策の所管を切り離せ。そんな役所がつくるエネルギー政策など、多くの有権者・国民は信用できない。

 

また、これまでの事業のあり方に固執し、地域独占や総括原価主義によりコスト負担の消費者転嫁で経営刷新努力を怠り、また、これからの新たな時代を切り開いていくだけの活力や開発力・経営力を喪失してしまっている既存大手電力会社各社も、ともに解体せよ。かような電力会社は、これからの日本にとっては、じゃまになるばかりである。日本の未来を暗いものにしてしまいかねない、この経済産業省・既存電力会社群=原子力ムラ連合を、法的に解体処分・再編せよ。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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